『彼方の光』(シェリー・ピアソン 作 偕成社)
去年読んだ本で1番一気に読んだ本が『地下鉄道』という南部に奴隷制度がある時代のアメリカで、自分の所有者の農園を脱走して、地下を走る脱走用の鉄道で北部を目指す少女の物語で。
この時の地下鉄道は、実際にそう呼ばれた南部の脱走した黒人奴隷を北へ逃がす活動を、本当に鉄道として登場させてたんだけど、こちらの児童書版『地下鉄道』は本当の地下鉄道の活動によりカナダを目指し逃亡を続ける少年と老人の物語。
少年は11歳の黒人奴隷で物心つく前に母親は売られ、父はなく、奴隷仲間?の年取ったおじさんとおばさんに育てられ一緒に農園で働いてきたんだけど、そこに突然おじさんが脱走してカナダ(カナデイ)に行く、お前もだと戸惑うまま脱走させられてしまう。
わけもわからない主人公はうるさいし、飛び出して道に迷ったりするし、おじさんは計画と準備はしてたけど、勝手する主人公に怒るし頑固だし、歳をとって働かされ続けた体はいうことを聞かないし、時々ボケて昔と今が区別がつかなくなるし。どうなるのこの2人とドキドキするところへ、ふと現れては匿ってくれたり、道を示してくれるのが、地下鉄道という名もあるのかわからないけど逃亡奴隷を助ける活動をしている人たち。
名乗る人もあれば名乗らぬ人もいて、お金をくれる人もいれば代金を取る人もいて、その方法も色々だけど、そのおかげで彼らは北へと進み続ける。
どうしておじさんはカナダを目指すのか、少年を連れてきたのか、それは少しずつ垣間見えるおじさんの過去からわかってきて、そしておじさんとの道中で少年は少しずつ成長し、最後には大活躍し。
その少年の成長のきっかけは、母親の行く末を知ったことと、農園の奴隷以外の生き方を知りはじめて、自分のことは自分で決められる、決めなければならないということを知ったことで。
自分は誰かの子供であった、自分がいるべき場所、いたい場所を知るということは、人の気持ちを強く安定させるんだなあとつくづく思い。
そういう意味で、当時の奴隷制度の過酷さや状況だけでなく、少年の成長物語として胸を熱くさせられる物語。
とは言え、物語はフィクションでもそのエピソードはどれも本当にあったことだそう。自由を得るために、自由を求める人を助けるために色んな知恵がこらされてきたことに、それだけの思いがこめられたことに圧倒されもする作品。(アメリカの歴史や奴隷制度について、浅い知識しかない私は、なぜ奴隷制度を保持するため国が2つに分かれて戦争できるのか、ここまで肌の色の違いに嫌悪感を感じるのか理解できない部分もあるんだけど)
ちなみに前半は状況把握できず騒ぐ主人公にイラっ。思い出せばハリーポッターも11歳の頃までの1、2作目くらいはイラッと読んでた。11歳男子のわからんちん具合も良く書けてるのかも。
『地下鉄道』(コルソン・ホワイトヘッド 早川書房)
こちらは映画化もされるそうでさっそく文庫化。色々な人の思いと人生が錯綜し、これまたびっくりなエピソードに、フィクションとファンタジーを行き来するような感覚になります。