≪ねじを買いに来た人に、タンスを売る。≫
どういうこと? と思いますよね。
私もいきなり言われた時は「それって、あやしくない?」と思いました。
でも、これはコンサル営業をしていた頃に上司から教えてもらった忘れられない話です。
(強引に高額商品を売りつけろ! という話ではありません。念の為。)
* * * *
A氏が、ホームセンターB店の日曜大工コーナーでねじを探していました。
店員B 「いらっしゃいませー。何をお探しですか?」
A氏 「これと同じねじを探しているのですが……」
店員B 「申し訳ございません。その商品はただいま切らしております。」
そこでA氏は次に、ホームセンターC店へ行きました。
同じように日曜大工コーナーでねじを探していると、
店員C 「お客様、何をお探しですか?」
A氏 「これと同じねじを探しているのですが……」
店員C 「申し訳ございません。当店ではこのタイプのねじはお取り扱いしておりません。ところで、このねじは何にお使いになるのですか?」
A氏 「実は、タンスが壊れちゃっててね。うちの奥さんに早く直してくれってせっつかれててさ。でも、ねじがないなら直せないよな。困ったなぁ。」
店員C 「それはお困りですね。もしよかったら、組み立て式でお買い得なものもございますので、御覧になられませんか?」
A氏 「そう? せっかくだから、見るだけ見てみようかな。」
店員C 「どうぞ、こちらになります。」
A氏 「へぇ、組み立て式なら結構安くてあるんだね。」
店員C 「大きさはどの程度のものが?」
A氏 「実はね、子ども部屋に新しいタンスが欲しいから物置にしまってたやつを出そうと思ったんだけど、それが壊れててね。ボロいから磨いてペンキも塗りなおさなきゃと思ってたんだけど。うーん、これくらいの価格なら新品を買った方が手間もかからなくて綺麗だし、子どもと一緒に組み立てられそうでいいなぁ。よし、これをください。」
店員C 「ありがとうございます。」
A氏 「いや、こっちこそ助かったよ。タンスの修理で休日一日つぶれるなぁと実は憂鬱だったんだけど、これなら簡単にできそうだからね。」
かくして、店員Cはねじより高い商品を売り上げ、なおかつお客様に感謝されたのでした。
めでたしめでたし。
* * * *
まぁ、こんなふうな例え話で、
コミュニケーションをしっかりとること、聞き上手になることの大切さを教えられたのでした。
販売営業に限らず何かを売り込もうとするとつい説明することに走りがちなのですが、
まずは、顧客の関心がどこにあるか、何故その商品への関心や必要があるのか、
悩みは何なのか、ニーズはどこにあるのか、
顧客自身が気付いていないところまで掘り下げる観察眼と質問力が重要なのですね。
「顧客が買おうとしているものを見るのではなく、
何故それを必要としているのか、本当に欲しているものが何かを探れ。」
「顧客は、自分が本当に欲しいと思っているものが何かを、
意外に解っていないことが多い。」
●余談●
ねじといえば......お受験コースの理科の先生が頭を抱えていたことがありました。
「難読漢字」にはまっている子がいて、理科のテスト解答に『螺子』と漢字で書いていたのです。
「間違っているわけじゃないけど、ここで○(マル)をやったら受験本番の時にも『螺子』と答案に書きそうで心配なんだよー」
「○(マル)をあげて、注意だけしたらどうですか?」
「いや、実は前のテストでも『蟋蟀』とか『濾過』とか漢字で書いてきてさ、うっかり褒めたらこれだよー」
「うーん……。素直に褒めてあげたいところですけどね」
「しかし、受験を考えるとなぁ」
「ですねぇ」