高田馬場にある英語の学校に最近通っていることもあり、懐かしくなって久しぶりにビックボックスのビルのに入ってみた。だいぶビルが綺麗になり、ユニクロや100円ショップが入っていたりと私の学生時代と様変わりしている。コーヒーが飲みたくなり、エクセシオールカフェに入ると後輩らしき学生がちらほら・・・。勉強をしていても話が聞こえてくるので意識して聞いてみると、「やっぱり俺は電通に向いているんだと思うんだよね。まあ、それかテレビ局だね」という男子学生の声が聞こえてきた。どうも3年生で就職活動中らしい。向かいに座っている女の子に真剣に自分の志望(検討?)企業について話をしている。

それしても、面白い。私が学生だったころ、またそのちょっと前の世代と変わらないような発想で話をしているのを聞き心の中で大笑いと同時にマスコミへの学生のイメージの強さ(良さ?)が意外だった。正直私は、彼の選択は不正解だと思う。私が今、彼の立場だったら違う業界を選ぶだろう。テレビ局の収益は軒並み悪化し、新聞社は青息吐息、竹橋あたりは来年にはとうとう米国のトリビューンのようになるかもしれない。また、雑誌社も広告、部数ともに激減し、一方で規模が小さく今後への投資もできずネット対応も全然できていないところも多い。電通なんて部長はボーナス5割カット、平社員は3割カットと噂を聞く。一度業界の人に話を聞いてみたら?とアドバイスしてあげたくなった。

米国の広告会社で働いてよくわかったことは広告はとてもローカルな仕事だということである。アメリカで広告の仕事をするのであればまずアメリカ人の文化、生活スタイルをよく知り、コミュニケーションのやり方を考えていく必要がある。急に日本の優秀な広告マンが米国に飛んでいいプランニングができるかと言えば正直難しい。言葉のニュアンスや微妙な心の動きを掴んでクリエイティブといった形にしていくことが重要になるが、正直外国人が知らない国の人にひびくコミュニケーションをするには無理がある。そうした点で考えると日本の広告会社が将来海外進出をして収益をあげていけるかと考えると非常に難しい。

私の研修先のクライアントもグローバル企業で、制作費を浮かすためになるべくグローバルで同じ広告を使い回しをしようとしていたが、対策としては単純で大きく二つ、一つはアニメーションを使うこと。ディズニーが多くの国で愛されているように親しみのあるキャラクターで人々の心をつかみ、簡単なナレーションで商品の説明をするやり方。もう一つは、言葉を極端に減らして動きで魅せるというものである。言葉をとにかく少なくして、映像を見せてなんとなくメッセージを訴求していく。ただ、グローバルのクライアントを持つ同僚にどちらかの方法でうまくいっているのかと聞いてみると、うーんという感じであった。そもそも共通語が日本語というデメリットがあり、それほど国際経験が豊富な人材がいるわけではないということを考えると日本の広告会社が海外でうまくやることはほぼ不可能であろう。そう考えるとメディアだけでなく縮小する国内だけしか商売ができない広告会社も選び先としてはいいとは思えない。規模縮小の中で効率よくほどほどの規模で経営していくというが広告会社の未来の姿なのだろう。

今後マスコミ業界全体としてはネットといかに融合させて金を儲けていくということが大きな課題となっていくだろうが現在のところ解はない。そもそも解はなく間違えなのかもしれない。メディアの広告が減って行くことは費用対効果がなければしょうがないと思うが、その結果良質なニュースもなかなか出せなくなっていくと問題だろう。メディアの評価も下がり広告もよけい減り余計悪い循環に入って行く。ニューヨーク大学の社会人向けの授業では、つぶれそうなメディアの社員がジョブチェンジのためたくさん受講していた
が日本でも同じことが近い将来起こるのだろう。10年前では考えられないくらい状況は変化しているのに、10年前と全く変わらないイメージを持つ学生を見て色々と考えさせられてしまった。

←ランキングに参加中です。ワンクリックお願いしますチップとデール チップ