南海トラフ地震臨時情報「対策した」4分の1にとどまる 近畿

 

南海トラフ地震臨時情報「対策した」4分の1にとどまる 近畿|NHK 関西のニュース 配信より

 

ことし8月に発表された「南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)」の受け止めについて、

 

NHK放送文化研究所がアンケートしたところ、

 

情報を受けて新たに防災対策をした人は、近畿地方では4分の1程度にとどまっていたことがわかりました。


対策の内容も「備蓄」が多く、「避難経路の確認」などには、

 

あまりつながらなかった実情が浮き彫りになりました。

ことし8月、宮崎県沖の日向灘を震源とするマグニチュード7.1の地震が発生し、

 

南海トラフ巨大地震の想定震源域では、大規模な地震が発生する可能性がふだんより高まったとして

 

「南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)」が初めて発表されました。


この情報の受け止めについて、NHK放送文化研究所は、先月(10月)、

 

インターネットで調査し、近畿地方では呼びかけの対象となった地域を含む1262人から回答を得ました。


【7割以上は、違いを知らず】
このうち、「臨時情報を見聞きした」と回答したのは1069人で、84.7%でした。


臨時情報には「巨大地震注意」と「巨大地震警戒」の2種類がありますが、

 

情報を見聞きした人に、今回の情報発表前から2つの違いを知っていたか尋ねたところ、

 

▽「知っていた」が5.8%、

 

▽「ある程度知っていた」が17.4%、

 

▽「聞いたことはあるが、内容までは知らなかった」が25.2%、

 

▽「知らなかった」が51.6%で、

 

7割以上の人が情報の違いを知りませんでした。


【“新たに対策した”約27%にとどまる】
今回、国は、1週間は地震への備えを改めて確認してほしいと呼びかけましたが、臨時情報の発表を受けて、「新たに防災対策をとった」と回答した人は288人で、26.9%にとどまりました。


具体的な対策について複数回答で尋ねたところ、

 

▽「飲料水や食料などの備蓄」が59%と最も多く、次いで、

 

▽「飲料水をふだんより多めに購入」が54.9%、

 

▽「食料をふだんより多めに購入」が33%など「備蓄」が上位を占めました。


一方で、

 

▽「災害時の家族との待ち合わせ場所の確認」は17%、

 

▽「災害時の家族との連絡方法の確認」は18.8%、

 

▽「避難生活を送るための避難所の確認」は21.2%、

 

▽「津波からの避難に備えた、避難場所や避難経路の確認」は24.3%と、

 

家族とどう連絡を取るかや、避難先や経路の確認にはあまりつながらなかった実情が浮き彫りになりました。


【自治体や企業の対応 「適切」過半数、過剰と感じる人も】
臨時情報の発表を受けた自治体や企業がとった対応について、受け止めを尋ねたところ、

 

「適切な対応だった」と回答した人の割合は、

 

▽「高齢者などへの避難の呼びかけ」が62.2%、

 

▽「避難所の開設」が59.1%、

 

▽「東海道新幹線の減速運転」が58.8%、

 

▽「旅行や帰省の自粛の呼びかけ」が53.9%、

 

▽「イベントや祭りの中止」が51.2%となり、

 

いずれも過半数を占めました。


一方、「大げさな対応だった」、「やや大げさな対応だった」と回答した人を合わせた割合は、

 

▽「イベントや祭りの中止」で28.7%、

 

▽「旅行や帰省の自粛の呼びかけ」で27.9%、

 

▽「東海道新幹線の減速運転」で22.7%、

 

▽「避難所の開設」で15.8%、

 

▽「高齢者などへの避難の呼びかけ」で13.8%と、過

 

剰な対応だったと感じた人もいました。


【リスクの高まり度合「知りたかった」が半数近くに】
臨時情報について、どんな情報が知りたかったか複数回答で尋ねたところ、

 

▽「ふだんに比べてどの程度、地震のリスクが高まっているのか、具体的に伝えてほしかった」が48.5%で最も多く、次いで、

 

▽「命に関わる情報なので、どんな情報でも伝えてほしかった」が35.5%、

 

▽「ふだんに比べてどの程度、日常生活を制限する必要があるのか、具体的に伝えてほしかった」が30.4%、

 

▽「地殻変動や地震活動にどんな変化がみられるのか、わかりやすく伝えてほしかった」が29.6%、

 

▽「どのような防災対策をとればよいのか、具体的に伝えてほしかった」が29.2%などでした。


【専門家“対策の優先順位を確認して”】
今回の結果について、災害情報に詳しい

 

東京大学大学院の関谷直也教授は

 

「対策をとった人の割合は非常に低い。対策の内容も、まずは避難場所や避難ルート、家族との連絡手段の確認など命を守るための対策をすべきで、生き延びたあとの生活のための備蓄の優先順位は低いはずだ。対策の優先順位も再確認してほしい」

 

と話しています。


そのうえで、

 

「『地震への備えの再確認』という呼びかけが一般的すぎるため、備蓄などの『ふだんの対策』を意識してしまったのではないか。とるべき行動についてより具体的に情報発信をすることが政府やメディアには求められる」

 

と指摘しました。