有料記事衆参補欠選挙2023
世襲の県になった山口、戦後も続く長州閥 「明治維新」の精神どこへ [衆参補欠選挙2023]:朝日新聞デジタル (asahi.com)
太田原奈都乃 大室一也 松下秀雄
「山口県はほんとうに世襲になっちゃったな」
衆院山口2・4区補選告示前の3月下旬、河村建夫元官房長官は取材に対し、こう漏らした。
4区で故・安倍晋三元首相の後継をめざす吉田真次氏は世襲ではないものの、2区に自民党から立候補する岸信千世氏、1区と3区の現職である高村正大・前財務大臣政務官、林芳正外相と、政治家一族の出身者がずらりと並ぶのが山口の現状だからだ。
河村氏は県議会副議長を務めた父の定一氏の跡を継いで県議になったが、衆院に立候補したときは世襲ではなかった。河村氏によれば、定一氏は、知事や文相を務めた田中龍夫氏の「城代」のような存在だった。そして田中氏は衆院議員を退く際、親族ではなく河村氏を後継に指名した。
そのときの経緯を、河村氏はこう説明する。
「田中家の人たちが集まって後継者をどうするか相談し、後援会の方もふくめて私に決めてくれたようです。田中先生のそばでずっとお仕えしていたし、県議だったから(後援会にも)認知はされていました」
そんな支持者との縁もなく、「落下傘」のようにやってきて立候補する人もいる。けれど自民党選挙対策委員長も務めた河村氏は、英国ではそうしたかたちの立候補が一般的であることに触れながら、落下傘候補の当選は「日本の風土ではそうとう難しい」と話す。「後援会をつくるところから始めなくてはならず、大変」だからだ。
衆院比例北関東ブロックで立候補し、落選した河村建一氏(右)と父の建夫氏=2021年11月1日午前10時23分、山口県宇部市昭和町、太田原奈都乃撮影
参院議員だった林芳正氏が衆院山口3区にくら替えしたあおりで、引退を余儀なくされた河村氏。長男の建一氏も国会をめざすが、一昨年の衆院選では足場のない北関東ブロックの自民党比例名簿に登載され、昨年の参院選では自民党から全国比例で出て落選した。
「どこかで候補者の公募があれば、ダメもとでもいいから応募して経験を積めばいい。一からやるのは大変だけれど、自分で切り開かないと、いつか淘汰(とうた)される。良い試練だと思っています」
最初は「親の七光り」で当選できても、そのうち支持を失い、落選する人もいる。公募に応じてほかの人と争い、勝ち抜くことが建一氏を成長させると、河村氏は考える。
河村氏を後継指名した田中龍夫氏の父は、陸軍大将や陸相も務めた田中義一元首相。歴史上の人物だから敬称をつけず義一と呼ぶ。
下級武士が華族に~秩序を変えた明治維新
龍夫氏は、1929年に死去した義一の没後50年を記念する「田中義一追憶集」に、父の思い出をつづった文章を寄せている。
「郷土入りは、いつも小郡駅…