住民税非課税世帯5万円給付の経済効果と課題

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住民税非課税世帯5万円給付の経済効果と課題(NRI研究員の時事解説) - Yahoo!ニュース

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NRI研究員の時事解説

住民税非課税世帯への5万円給付は個人消費を2,250億円押し上げ

NRI研究員の時事解説

政府は9日の「物価・賃金・生活総合対策本部」で、追加の物価高対策を決定する。既存のガソリン補助金制度を10月以降も継続する、政府が輸入小麦を製粉会社などに売り渡す価格を10月以降も現在の水準に据え置く、地方自治体が独自に物価対策を進める際の原資となる「地方創生臨時交付金」を現在の1兆円から増額するなど、さらなる物価高を避け、現状の物価高対策を継続するやや消極的な対応にとどまる。

 

 ただし、それらに加えて、住民税非課税世帯に対して1世帯当たり5万円を給付する措置が新たに講じられる可能性が高まっている。全5,976万世帯のうち約27%に相当する約1,600万世帯が対象になるとみられる。9千億円程度の財源が必要になると考えられ、今年度予算の予備費が充てられる見通しだ。

 

 一時的な所得増加は、貯蓄に回る割合が高くなる傾向があるが、かつての定額給付金の効果についての内閣府の試算によると、給付金の25%が消費に回った。

 

この数値に従うと、今回の9千億円程度の住民税非課税世帯への給付は、個人消費を2,250億円程度押し上げると試算される。

 

これは年間名目GDPの約0.04%であり大きな経済効果を発揮するとは言えない。

給付金は物価高の痛みを一時的に和らげる施策に過ぎない

足元で進む物価高は、エネルギー、食料品の価格上昇が中心であり、それらは低所得層ほど消費全体に占める比率が高い(コラム「低所得者に厳しい物価高が続く:6月消費者物価統計」、2022年7月22日)。

 

つまり、足元の物価高は低所得層により大きな打撃を与えることから、低所得層にターゲットを絞った対策を講じることは重要となる。 

 

ただし、住民税非課税世帯は世帯全体の約27%にも相当することから、支援対象を十分に絞り込めていないと言えるのではないか。

 

もっとピンポイントで、物価高の影響を大きく受ける低所得層を集中的に支援する施策が望ましい。

 

しかし、そうした世帯を短期間で特定する手段がないことから、児童手当給付世帯や住民税非課税世帯が給付の対象とされるのである。

 

所得水準などに応じて、必要な世帯に必要な給付を迅速に届けることができるよう制度の構築を進める必要がある。

 

 ただし、低所得層にとっても給付金は一時的に痛みを和らげる施策に過ぎない。

 

より抜本的な対策として、政府には、成長戦略の強化を通じて労働生産性、潜在成長率を引き上げる取り組みを積極化することが望まれるところだ。

 

その結果、賃金が先行き増加するとの期待が個人の間に高まれば、物価高が個人消費に与える打撃は軽減されるだろう。

 

それは、物価高に対する経済の耐性を構造的に強めることになる。

 

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私のコメント :  令和4年9月7日、足元で進む物価高は、エネルギー、食料品の価格上昇が中心であり、それらは低所得層ほど消費全体に占める比率が高い。現在の政権による、その低所得層にターゲットを絞った対策は、国民全体への支援対象を十分に絞り込めていないと言えるのではないか。日本と交易関係を持たれている国にも、その国内の内政、及び、その外交問題に関しても、その内容が、波及していくことになる。
 

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貸し付けでなく10万円再支給を 署名8万超集まる

朝日新聞社 2021/03/09 19:00 配信より

 

© 朝日新聞社 厚生労働省が入るビル

 

新型コロナウイルスの経済対策として昨年春に支給された全国民一律10万円の「特別定額給付金」の再支給を求める署名約8万3千件超が集まったとして、生活困窮者を支援する団体が9日、記者会見を開いた。

 

署名を集めたのはNPO法人「ほっとプラス」(さいたま市)。1月中旬からの約2カ月、インターネットを通じて集めた。今後、自民党に提出するという。

 

会見したほっとプラスの藤田孝典理事によると、新型コロナの影響が長引くにつれ、低所得層だけでなく中間層からの相談が増え、今では相談全体の3割以上が中間層からの相談だという。残業代やボーナスが減って預貯金の切り崩しを迫られ、「住宅ローンの支払いに困る」「子どもの塾などの習い事が続けられない」といった声が子育て世代などから上がっている。

 

政府は新型コロナの影響で暮らしに困る人たちへの対応として、無利子・保証人不要の特例貸し付けの「緊急小口資金」と「総合支援資金」を、合わせて最大200万円借りられるようにしている。ただ、新たな借金をすることに抵抗感がある人は多いといい、藤田さんは「このままでは中間層が持ちこたえられなくなる」と話し、返済の必要がない給付金の支給を訴えた。(石川春菜)