銃撃現場にいた市長、慌てて演台に駆け寄った…聴衆に「看護師さんは」「AEDないか」
配信より
銃撃現場にいた市長、慌てて演台に駆け寄った…聴衆に「看護師さんは」「AEDないか」(読売新聞オンライン) - Yahoo!ニュース
奈良市の近鉄大和西大寺駅前で街頭演説中の安倍晋三・元首相が銃撃されて死亡した事件で、現場に居合わせた並河健・天理市長が13日、読売新聞の取材に応じた。並河市長は事件の瞬間を振り返り、「国際社会でも存在感のあった指導者を失ったことは大きな損失だ」と語った。(倉岡明菜、平野和彦)
並河市長は、安倍元首相が応援に駆けつけた佐藤啓参院議員の後援会副会長を務め、事件のあった8日は、元首相の立つ演台東側の歩道で、聴衆に交じり演説を聞いていた。
マイクを握り、聴衆に協力を呼びかける並河市長(8日、奈良市で)
内容に集中しており、異変には、1回目の「小さな大砲を撃った」ような音で気がついた。音のした方向に目を移した時には、男が警察官に取り押さえられている最中だった。
状況を察して慌てて演台に駆け寄ると、元首相が倒れており、「すぐに救命措置が必要だと思った」。周囲が救急車の手配は済ませていたため、陣営スタッフからマイクを借りた。すぐさま聴衆に向け、「看護師さんはいませんか」「AED(自動体外式除細動器)はないか」などと呼びかけ、救急車の接近が分かると、道を空けてもらうように求めた。
並河市長は「元首相だからという理由ではなく、あの場にいた皆が助けたいと思った。特別なことはしていない。結果的に救えず役に立てたとも思えない」と、悔しさをにじませた。
元首相との出会いは市長就任前の外務省職員時代に遡る。市長室には数年前、官邸での晩さん会に招かれた際に元首相と納まる写真が飾られている。「偉ぶらず、こちらをしっかり見て話をしてくださる人。気さくな方で、8日も聴衆に手を振っていた」
演説で候補者に向けて述べた「出来ない理由を考えるのではなく」が、安倍元首相の最期の言葉になったことを事件後、思い出したという。並河市長は「過度な意味づけをするのは僭越(せんえつ)だが」と前置きしつつ、「(信念を持って取り組めと)候補者だけでなく、私たちに残したメッセージに思えてならない」と語る。
警備面で課題はなかったか、容疑者の動機は何だったのか。並河市長は「私ごときがコメントすべきではない。解明は捜査機関や専門家に委ねたい」とした上で、「他者の尊い命を奪うということは決して正当化されない」と強調。「今後、こうした事件を二度と起こさないためには、社会全体で対策しなければ、本当の意味での再発防止はできない。基礎自治体を運営する者として、社会の孤立、孤独対策にはしっかりと取り組まなければならない」と述べた。
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