岸惠子自伝 卵を割らなければ、オムレツは食べられない 岸惠子著 岩波書店 2200円
岸惠子自伝 卵を割らなければ、オムレツは食べられない 岸惠子著 岩波書店 2200円 : 読売新聞オンライン (yomiuri.co.jp)
配信より
自由求め運命切り開く
評・橋本五郎(本社特別編集委員)

人生の円環を閉じようとする時、自分は生き切ったと思える人は 稀 に違いない。この自伝には、時に荒野を行くが 如 く「自由」を求め、自覚的に生きてきた人の姿がある。12歳で横浜空襲に遭い、大人の言うことを聴かず横穴防空 壕 から飛び出して生き残った。「もう大人の言うことは聴かない。十二歳、今日で子供をやめよう」と決めたというのである。
「卵を割らなければ、オムレツは食べられない」。やがて夫となる人の言葉は「啓示」だった。決断と自己犠牲のないところに運命は開けない。彼女はそれを実践した。卵を割った最初は24歳の時。「君の名は」で一世を 風靡 したスターの座をかなぐり捨て、「雪国」を最後に祖国を出奔、身一つでパリに降り立った。
卵を割った第二は夫との離婚であり、三番目は娘と孫を残して祖国日本へ帰ることだった。パリに着いてから43年の歳月が流れていた。自伝のどこを切っても、新鮮な血が 迸 る「岸惠子」という存在がある。女優としてよりも人間として生きようとした。手練手管の限りを尽くして夫を離婚に追い込み、手に入れた女にも「あっぱれ」を感じる 醒 めた目もある。
アフリカやイスラエル、アラブ、旧ソ連に向かう国際ジャーナリストとしての旅立ちには、生きることの「覚悟」さえ感じる。自分には国際ジャーナリストとしての知識も教養もないかもしれない。しかし、視線を遠くに 這 わせ、問題の底辺の 在処 を探ることに執念を持ち、「既成の概念や論調には惑わされず、自分の感じたことを自分の言葉で語った」。そこには冷徹なリアリストの目がある。
「惠子さんは、わたくしより二つ上のお姉さまなのよ」。その言葉でひどくリラックスしたという美智子さまとのお食事会。美智子さまの深い教養と知性は「さりげない 佇 まいの中にあっさりとひそまれていた」という描写によって私たちにはえも言われぬ情景が浮かんでくる。
私のコメント : 令和4年5月29日、一般社団法人 製粉振興会 「小麦粉の魅力-豊かで健康な食生活を演出-(再改定版)」と「岸惠子自伝 卵を割らなければ、オムレツは食べられない 岸惠子著 」岩波書店 を読み始める。
小麦粉 製粉業界と日本農家との間に、関係されている方々にとって、「小麦粉の魅力-豊かで健康な食生活を演出-(再改定版)」と「岸惠子自伝 卵を割らなければ、オムレツは食べられない 岸惠子著 」は、必読の書籍です。
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