
カーリング 準決勝【速報】日本 初の決勝進出 銀以上確定
カーリング 準決勝【速報】日本 初の決勝進出 銀以上確定 | カーリング | NHKニュース
配信より
北京オリンピック、カーリング女子の準決勝で、日本がスイスに8対6で勝ち、決勝に進出しました。
これで、男女を通じて日本のカーリングでは初めてとなる銀メダル以上が確定しました。
序盤は互いに後攻で1点を取り合う緊迫した展開でしたが、第5エンド、日本のスキップ藤澤五月選手が相手のストーン2つを一気にはじき出すダブルテイクアウトを決めて4点を奪い、一気に3点をリードして流れを引き寄せました。
日本は、第7エンドで3点を取られて1点差に詰め寄られましたが、第9エンドには藤澤選手が相手の複数得点のチャンスを消す、すばらしいショットを見せて相手の得点を1点に抑えるなど主導権を渡しませんでした。
日本は最終第10エンドにも1点を加えて8対6で勝ち、決勝に進出しました。これで日本は男女を通じて初めてとなる銀メダル以上が確定しました。

決勝は20日に行われ、スウェーデンとの一戦を延長の末に制したイギリスと対戦します。
計
○日本 |00104|10101|8(予選4位)
●スイス|01010|03010|6(予選1位)
※延長=エキストラエンド 計
●スウェーデン|40100|20103|0|11(予選2位)
○イギリス |03011|02040|1|12(予選3位)
夢見た“世界最高のチーム”まであと1勝
オリンピックのカーリングで日本勢初の決勝進出。
チーム結成から12年。
北海道の小さな町から巣立った選手たちが“世界最高のチーム”になるという夢にあと1勝で届きます。
カーリング女子日本代表の「ロコ・ソラーレ」、メンバーは司令塔のスキップを務める藤澤五月選手と吉田知那美選手、鈴木夕湖選手、吉田夕梨花選手、それに、石崎琴美選手の5人です。
チームは2010年に本橋麻里選手が「ふるさとの北海道北見市からオリンピックを目指したい」と創設し、「いつでも楽しくカーリングをするチーム」を目標に活動を続けてきました。
4人が一丸となって正確なショットを試合を通して行うためにリンクの内外でこまめに年齢が近いチームメートが積極的にコミュニケーションをとって技術の向上を図り、国際大会で結果を残すために力を養ってきました。
スキップの藤澤選手が豊富なカーリングの経験と知識から国内トップクラスの攻撃的な作戦を立て、吉田夕梨花選手と鈴木選手が世界でも屈指のスイープでショットをコントロール。
スイープもショットもこなす吉田知那美選手がムードメーカーとしてチームを盛り上げてどんな苦しい場面でも前向きにカーリングを楽しむスタイルを築き上げてきました。
そして、2016年の世界選手権で日本勢として初めて銀メダルを獲得すると、2018年のピョンチャンオリンピックで日本初の銅メダルを獲得しました。
北京オリンピックに向けてはカナダやヨーロッパで強化合宿や世界トップクラスのチームが参加する大会に出場して国際舞台での経験も積み重ねていきました。
新型コロナの影響で海外合宿ができない期間もあったものの、去年は十分な練習を重ね、2大会連続のオリンピック代表を決めると、藤澤選手が、「感謝の気持ちをもって思いっきりカーリングをしたい」と話すように4年間、待ち望んだ舞台に乗り込んで来ました。
北京オリンピックの予選リーグは5勝4敗と苦しんだものの、準決勝は予選リーグで敗れたスイスに一矢を報いて念願の金メダルまであと1勝としました。
【日本×スイス 試合経過】
第10エンド 日本(後攻)8-6 スイス
日本が有利な後攻で1点をリードして迎えた最終の第10エンド。日本はスイスのストーンを出して、円の中のストーンを減らします。
そして最後は円の中に相手のストーンが1つある状況で、藤澤選手がより中心の近くにストーンを置く確実なショットを決めて1点を獲得。
日本は8対6で勝利し、20日に行われる決勝進出を決め、銀メダル以上が確定しました。
日本の決勝進出は男女を通じて初めてです。
第9エンド 日本 7-6 スイス(後攻)

好調の藤澤選手が日本の窮地を救いました。スイスのストーンだけが円の中に4つという状況を作られ、複数得点を奪われるおそれがある場面。藤澤選手が1投目でしっかりとダブルテイクアウトを決め、スイスのストーンを減らします。スイスももう一度日本のストーンをはじき、またも円の中にスイスのストーン3つという形。
しかし藤澤選手は2投目、またしてもダブルテイクアウトを決め、スイスのストーン2つをはじき出しました。
スイスは日本のストーンをはじいて2点を取りに行きましたが投げたストーンも外に出してしまったため、1点止まり。
日本は大ピンチから失点を最小限に抑え、リードして最終エンドを迎えます。
第8エンド 日本(後攻) 7-5 スイス

スイスは第1投、第2投とガードストーンを置いてきました。
最初の5投目まではガードストーンを外に出すと元の位置に戻されてしまいますが、リードの吉田夕梨花選手はガードストーンに軽く当ててずらすショットを連続して決めて相手に形を作らせません。吉田夕梨花選手が得意とするこのショットは「ゆりかタイム」とも呼ばれています。

しかし、スイスも最後のショットでガードストーンの裏にナンバーワンを作り、日本の複数得点を阻止しようとします。このストーンを出すのが難しいと判断した日本は最後の1投でさらに中心に近いところにきっちりドローショットを決めて手堅く1点を獲得しました。残り2エンド、日本が2点リードです。
第7エンド 日本 6-5 スイス(後攻)

先攻の日本は相手の複数得点を防ぐためハウスの中心付近にストーンを置いていきました。
狙いどおりに日本のストーンとスイスのストーンが2つずつという状況を作りましたが、スイスのフォースに1投目で日本のストーンだけをはじき出す「ダブルテイクアウト」を決められました。
これで円の中にスイスのストーンが3つと変わり、スキップの藤澤選手は最後の1投で1つでも多くはじき出そうとしますが、結局、2つは残ってしまいます。
スイスは最後の1投で日本のストーンもはじき出し、3点を獲得。
スイスが底力を見せ、ビッグエンドを作りました。
第6エンド 日本 6-2 スイス(後攻)

日本は後半も相手に流れを渡しません。円の中に日本のストーンが3つ、スイスのストーンが2つという状況で、先攻の日本は藤澤選手がラストショットで相手のストーンをはじきにいきました。
このショットはわずかにラインがずれましたが、日本はストーンが滑っているさなかに作戦を切り替え、スイープで滑りを調節して自分のストーンに当てつつナンバーワンを取る「ヒットアンドロール」にしました。
これで日本のナンバーワンとツーを円の中心付近に作ることができ、相手にプレッシャーをかけます。
スイスは最後の1投でナンバーワンを取りに来ましたが、このショットがミスとなり、中心付近に寄せきれません。日本は不利な先攻から1点をスチール。点差をさらに広げています。
ハーフタイム「コミュニケーションが取れている」

第5エンド終了後のハーフタイム、日本の選手たちはお菓子を食べながら、落ち着いた表情で残りの持ち時間を確認したり、後半に向けての作戦を話し合ったりしていました。
日本の選手からは「コミュニケーションが取れている」との声もあがっていて、順調な試合運びができていることがうかがえます。
ここまでのショット成功率は日本は92%、スイスが77%と、日本が上回っています。特に第5エンドはスイスのテイクアウトショットのミスから広がったチャンスを日本が着実にものにしました。後半、第6エンドは先攻からスタートです。
第5エンド 日本(後攻) 5-2 スイス

我慢を続けてきた日本がついにビッグエンドを作りました。まずはスキップ藤澤選手の1投目、ナンバーワンとスリーが日本、ツー、フォー、ファイブがスイスという状況でスイスのフォーとファイブの両方をはじき出すダブルテイクアウトを決めます。
これに対してスイスは最後の1投で日本のストーンをはじき出せず、円の中のストーンは日本が3つ、スイスが2つという形に変わりました。ここで藤澤選手のラストショット、相手のストーン2つを一気にはじき出すダブルテイクアウトを再び決め、4点を奪いました。
大逆転勝利を収めたデンマーク戦を思い出させる藤澤選手のスーパーショットで、日本は3点をリード。
一気に流れを引き寄せ、前半を終えました。
第4エンド 日本 1-2 スイス(後攻)

日本は先攻。相手の複数得点を防ぐため、円の中にストーン2つを置いていく作戦です。
スイスはダブルテイクアウトを狙ってきますが、なかなか成功せず、最後まで日本のストーン2つが残りました。
スイスは最後のショット、日本のストーンを打ち出して自分のストーンをとどめる「ヒットアンドステイ」で1点を獲得するしかありませんでした。ここまで両チーム、後攻で1点を取り合う展開。
緊迫した試合になっています。
第3エンド 日本(後攻)1-1 スイス

日本は複数得点を狙うため、円の中にストーンをためたいところ。
しかしスイスは日本のストーンを打ち出しながらより中心の近くにストーンを集め、日本にいい形を作らせません。
結局、ナンバーワンからスリーがスイスという状況で藤澤選手のラストショットを迎えます。藤澤選手は9時方向にある相手のストーンをはじいてナンバーワンを取りにいきましたがこのショットが若干ずれ、投げたストーンも出てしまいそうになりました。
しかし6時方向にあった相手のナンバーツーに当たって、なんとかナンバーワンを確保。日本、ヒヤリとする場面でしたがなんとか1点をあげました。
第2エンド 日本 0-1 スイス(後攻)

第2エンドは見応えのある攻防でした。
スイスがナンバーワンとスリー、日本がナンバーツーという状況。
相手に複数得点の可能性があり、日本は最後の1投を残して4人で2分以上かけて慎重に作戦を話し合いました。

そしてスキップ藤澤選手はわずかな隙間をぬって相手のナンバースリーを少し押し下げる、ほぼ狙いどおりのショットを決めました。
これに対し、相手は最後の1投で2点を取るため、日本の手前のストーンを使って日本のナンバーツーをはじき出しに来ました。
このショットもほぼ狙いどおりでしたが、手前にあった日本のストーンがわずかにナンバーツーになり、得点は1点にとどまりました。
次のエンドは日本がこの試合初めての後攻です。
第1エンド 日本 0-0 スイス(後攻)

まずは両チーム、アイスの状態を確認するかのような第1エンド。
互いにストーンをはじき合う「テイクアウトゲーム」となりました。
相手のスキップは最後のショットで日本のストーンをはじき出したうえで自分たちのストーンも外に出し、両チーム無得点の「ブランクエンド」となりました。
選手たちはこの会場について「アイスの読みが難しい」と口をそろえていますが、立ち上がりはショットが狙いどおりに決まっています。
第2エンドも日本は先攻です。
日本時間21:05 試合開始 日本は先攻

北京オリンピック、カーリング女子は準決勝が始まりました。
相手は前日、日本が4対8で敗れている世界ランキング2位のスイス。
選手たちはカメラを向けられると笑顔で「日本のみなさんこんばんは!」「がんばります!」などと話し、手を振っていました。
第1エンドは不利な先攻となります。
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ロコ・ソラーレ「ナイスー」だけでない圧倒的魅力 日本人が五輪カーリングにこんなにもハマる理由
木村 隆志
ロコ・ソラーレ「ナイスー」だけでない圧倒的魅力 日本人が五輪カーリングにこんなにもハマる理由 (msn.com)
配信より
2月17日午後、北京オリンピック・カーリング女子の1次リーグ最終戦が行われ、日本代表のロコ・ソラーレは、昨年の世界選手権女王でリーグ首位のスイスに敗戦。通算5勝4敗で3チームが並んだものの、ギリギリ4位で準決勝進出を決めました。
これまで夜の時間帯に放送された12日のROC戦(NHK)が個人9.0%・世帯14.7%、16日のアメリカ戦(NHK)が個人11.1%・世帯19.0%の高視聴率を記録。さらに、平日午後に放送された17日のスイス戦(テレビ東京系)も、時間帯トップの個人3.3%・世帯6.3%を記録しました。「いかに注目度が高まっているか」がわかるでしょう。
この結果によってロコ・ソラーレは、18日21時5分からの準決勝と、19日21時5分からの3位決定戦か、20日10時5分からの決勝戦の2試合を戦う権利を獲得しました。
残り3日間のみとなった北京オリンピックで、最後まで彼女たちを応援する意味も込めて、なぜ日本人はロコ・ソラーレ、ひいては、カーリングというスポーツに惹かれるのか。単に「笑顔でかわいいから」ではない、その理由を掘り下げていきます。
「ナイスー」とハイタッチの持つ意味
平昌オリンピックのときから、「ロコ・ソラーレの選手たちに魅力を感じてカーリングを見始めた」という人は多いでしょう。彼女たちは4年の時を経て、チームの強みを保ちながらも、より成熟した姿を見せています。
まず彼女たちの代名詞とも言える笑顔と、ポジティブなスタンスは健在。カーリングは戦略性の高さが魅力の1つであり、中継ではそれを話すプレー中の声が視聴者にも聞こえるようになっていますが、彼女たちのコミュニケーションは常にポジティブです。
前大会は「そだねー」がフィーチャーされましたが、今大会で目立っているのは「ナイスー」。狙い通りのプレーをすれば当然「ナイスー」なのですが、彼女たちは「微妙かも」というときも何かしらのメリットを見つけて「ナイスー」と声をかけて、すぐ次のプレーに切り替えています。結果的に多少のミスをリカバリーできるケースのほうが多いのは、「ナイスー」などの声で、思うようなショットができなかった人の気持ちを軽くしているうえに、チーム全体が次のプレーへ切り替えているからでしょう。
さらにそんなポジティブで優しい「ナイスー」は、テレビで見ている人々も明るい気持ちにさせてくれます。テレビ観戦している人の中には、彼女たちがスローするたびに「ナイスー」と声をかけている人が多いのではないでしょうか。ちなみにこの「ナイスー」は、スポーツだけでなく、ビジネスシーンでもチームのムードをポジティブに保てるコミュニケーション術の1つです。
「ナイスー」と並ぶロコ・ソラーレのポジティブな姿勢を表しているのがハイタッチ。彼女たちは手痛いミスで失点したときもハイタッチを必ずしています。たとえば、イギリス戦の第6エンドで「2点を狙った難易度の低いラストショットが氷上のゴミで失速してしまう」という不運に見舞われたときも、顔を下げずハイタッチを交わしていました。ハイタッチも、「ナイスー」も、ネガティブになりそうな気持ちをリセットしてポジティブに戻すためのスイッチになっているのかもしれません。
極め付きはアメリカ戦の10エンド。吉田夕梨花選手の2投目が狙ったところにいかず、微妙な空気が流れたとき、すかさず吉田知那美選手が「これはこれで新しい技!」と声をかけ、全員が笑顔に包まれました。準決勝進出のためには絶対負けられない試合のクライマックスで飛び出したポジティブな声に、ロコ・ソラーレの魅力が凝縮されていたのです。
「心のアドバンテージ」で4失点もOK
そのアメリカ戦は序盤から得点を重ねて楽勝ムードでしたが、第7エンドでまさかの4失点を喫し、同点になってしまいました。見ている誰もが「このエンドで流れが変わる」「選手たちは動揺するのではないか」と心配しましたが、ここで見せたのが4年間で成長した姿。続く第8エンドで2点を獲り、第9エンドも相手有利の先攻で1点を重ねて勝利をほぼ決定づけたのです。
試合後、吉田知那美選手は、「しっかりスコアボードを見て、別に4点取られても私たちにとっては(まだ有利な後攻の機会が相手より多いなど)いいシチュエーションだったので、そこはしっかりと“心のアドバンテージ”を使って、落ち着いて次のエンドをプレーできたのは、『このチームで8年間くらいしっかりと積み上げてきたものなんじゃないかな』と思っています」と笑顔で語っていました。
さらにその言葉を裏付けていたのは、4―0のリードで迎えた第3エンドのピンチ。けっきょくアメリカが2点を取ったのですが、そこに至る前にロコ・ソラーレは1分半以上にわたる時間をかけた話し合いを「最悪4点取られてもいいよね」という言葉で締めくくっていました。
つまり、「第7エンドに4点取られて同点になる」というシチュエーションを第3エンドの時点で想定できていたのです。「最悪4点取られてもいいよね」はネガティブな言葉ではなく、「もし取られたとしても大丈夫だから落ち着いていこう」というポジティブなものだったのでしょう。ビジネスシーンのピンチでも、彼女たちのような“心のアドバンテージ”を持つことで動揺を抑え、ポジティブに振る舞えるのではないでしょうか。
多くの人々がロコ・ソラーレに惹かれるきっかけになったのは、「チームメートというより、友だちグループに近い」と思わせる楽しげなムードでしょう。実際、平昌オリンピックのときは多くの人々から、「女子会みたいで癒やされる」などの声があがっていました。彼女たちは試合中、常に目と目を合わせるようにして言葉を交わし、笑顔で互いのプレーを称え合い、休憩時間の“もぐもぐタイム”も楽しそうに見えます。
ただ実際は「楽しい」というより、終始プレーのことを考えていて、ウエイト(ストーンのスピード)や曲がり幅などの情報共有を行い続け、そのうえで複数の選択肢を持ちながら、戦略を選択。他国の試合を見ても、ロコ・ソラーレほど活発にコミュニケーションを取っているチームはいませんし、ある選手が「チームメートにプレーの選択肢や賛同を呼びかけても、すぐに返事が返ってこない」というケースをよく見かけるくらいです。
涙を流す仲間を優しく包み込む愛情
ここまでロコ・ソラーレを見続けてきて、今大会の中でも印象的だったのはROC戦でした。極度の不調に悩まされた鈴木夕湖選手は試合終了後に涙を流し、それを見た吉田知那美選手はもらい泣き。吉田夕梨花選手は鈴木選手を優しく抱き締め、藤澤五月選手も背中をさするシーンが視聴者の感動を誘いました。
さらに直後のインタビューで鈴木選手が、「ショットが決まらなくて……本当につらかったですけど、みんなが助けてくれて感謝したいです」と語った一方、吉田夕梨花選手は「試合に勝ったというよりは、アイスに勝ったというか、今までで一番難しかった」、吉田知那美選手も「つかみどころのないアイスでしたね。気合で押し切りました」と鈴木選手をフォロー。
最後に藤澤選手が、「夕湖のショット率がそんなに良くなかったんですけど。でもそれがあったからこそ、知那(美)だったり、私だったりのショットがつながって決め切れました。私以外の3人がたくさんスイープしてくれて、ショットを決めてくれた。チーム全員で勝ち取った勝利だなと思います」と愛情あふれる言葉で締めくくりました。このようなチームメートへの愛情に嘘を感じさせない言動も、私たちを惹きつけているのではないでしょうか。
司令塔のスキップを務める選手が絶対的な存在となっているチームが多い中、ロコ・ソラーレに関しては必ずしもそうとは言えません。「チーム藤澤」という形ではあるものの、実際はチーム全員で戦略を考え、話し合いを重ねるような一体感が見られます。
勝っても負けても言動がシンクロ
その一体感がうかがえる、もう1つのポイントは、ショットだけでなく、スイープやコールなどの役割を重視していること。ロコ・ソラーレはショット以上にスイープやコールに「ナイスー」の声がかかることが多く、特に他国から「クレイジースイーパーズ」と称えられる小刻みで高速なスイープをチームの強みとして前面に押し出しています。
そのためかロコ・ソラーレは、「まるで1つのストーンを4人で投げているみたい」という声が少なくありません。それは彼女たちの言動とメンタルに一体感があるからであり、1試合「4人で各20投」というより「全員で80投」という印象を受けるのです。
「単にスキップが中心のチームではない」ことは、準決勝進出が懸かった最後のアメリカ戦とスイス戦の試合終了直後からも感じられました。
アメリカから勝利を収めたあとのインタビューで藤澤選手は、「途中(4点リードの状態から)追いつかれてしまったんですけど、特に知那(美)が、よく私にポジティブな言葉をかけてくれて。落ち込みそうになったときもチーム全員で乗り越えて、最後まで勝ちを信じてやって勝てたのがよかったと思います」とコメントしました。
一方、スイス戦の敗戦が決まった直後、カメラがとらえていたのは、責任を感じて泣いている藤澤選手を3人が順番に優しく抱きしめていく姿。また、その後のインタビューでは、1次リーグ敗退を覚悟した全員が同じように悔しげな表情で涙を流していました。彼女たちは笑顔だけでなく、「ねぎらう」「励ます」「涙を流す」などのタイミングもシンクロしていて、見る側はそんな一体感に癒やされるのです。
さらにその19分後、韓国がスウェーデンに敗れて準決勝進出が決まったことを知らされると、藤澤選手と吉田知那美選手は腰を抜かすように座り込んでしまうなど4人全員が明らかに戸惑い、まともなコメントができませんでした。ロコ・ソラーレは、どんな試合も全員で一丸となって戦い、同じように喜び、同じように悔しがる。どんな勝ち方をしても、どんな負け方をしても、そのスタンスは変わらないのでしょう。
そして、もう1つ私たちがロコ・ソラーレに魅了される理由として欠かせないのが、彼女たちの戦いぶり。彼女たちの試合は、そのキャラクターに負けず愛嬌たっぷりなのです。
初戦のスウェーデン戦は平昌オリンピック金メダルチーム相手に、序盤は3-1とリードして人々の期待感をふくらませたあと、中盤に大量失点して完敗。第2戦は強豪・カナダ相手に、中盤連続スチール(不利な先攻のチームが得点すること)して接戦を制しました。
第3戦はデンマーク相手に最終10エンドまで2点リードを許す絶体絶命の状態から、藤澤選手のラストショットで3点を取るドラマティックな大逆転勝利。世界ランク下位で絶対に勝っておきたい相手だったこともあり、視聴者をハラハラドキドキさせました。
「応援せずにはいられない」という気持ちにさせられる
続く第4戦も、ここまで3連敗と絶不調のROCが相手でしたが、難解なアイスに悩まされ、残り4エンドまで3点リードされる敗色濃厚の展開。しかし、そこから4エンド連続得点で、再び劇的な逆転勝利を収めました。
第5戦の中国戦と第6戦の韓国戦は、アジア隣国相手のダブルヘッダー。中国には相手のミスもあって今大会唯一の大勝を収めたものの、韓国には序盤から大きくリードを許す展開で大敗を喫してしまいました。さらに第7戦もイギリス相手に序盤からミスを重ねて韓国戦を上回る大敗。
崖っぷちに立たされた第8戦はアメリカ相手に楽勝ムード一転、4点差を追いつかれる苦しい展開ながら、何とか振り切って勝利。最後の第9戦は世界王者でリーグ首位のスイス相手に序盤からミスを続けて完敗でした。
勝敗は9戦5勝4敗と勝ち越しているものの、「勝った試合は終盤まで同点かビハインドのハラハラドキドキで、負ける試合はあっさり大敗する」という傾向がはっきりと表れているのです。そんなギリギリの戦いぶりは彼女たちの強さともろさ、笑顔と涙を際立たせていて、「応援せずにはいられない」という気持ちにさせられてしまうのではないでしょうか。
さらに、準決勝進出への勝ち上がり方も、実にロコ・ソラーレらしい愛すべきものでした。前述したように、ロコ・ソラーレの選手たちはスイスに負けて「準決勝進出の可能性がなくなった」と思い込み、涙を流していたところ、スウェーデンが韓国に勝ったことで状況が一変。ちなみに平昌オリンピックのときも、日本は第9戦でスイスに大敗を喫したものの、スウェーデンがアメリカに勝ったことで準決勝進出が決まりました。
「すでに進出が決まっているスウェーデンが本気で戦ってライバル国を倒してくれる」というミラクルが2大会連続で起きたことも、彼女たちの持つ魅力であり、実力のようにも見えるのです。
ロコ・ソラーレの魅力を語るうえで、最後にふれておきたいのは、カーリングというスポーツが持つエンタメ性の高さ。
なぜカーリングは盛り上がるのか
カーリングは他の団体競技とは異なり、日本代表チームは選手ではなくチームそのものが選抜されています。この事実から、「いかにチームワークやコミュニケーションが重要なスポーツであるか」がわかるでしょう。しかも中継では、マイクを通して選手たちが交わす声を聞けるため、他の団体競技よりもチームワークやコミュニケーションの素晴らしさを感じることができるのです。
たとえば、フィギュアスケート、ショートトラック、ノルディック複合、スキージャンプなどの団体戦は、個人のパフォーマンスを足し算して競うような形が多いのですが、カーリングは真逆のスタンス。「一投一投に4人全員が関わり、力を合わせて行う」という類いまれな団体競技なのです。プレーやボールに関わらない待機状態の人がいる野球やサッカーなどと比べても、全員が常に関与し、全員の力を結集しなければ勝てないスポーツであることがわかるのではないでしょうか。
もちろん最後の一投まで勝負がわからないスリリングな展開や、「氷上のチェス」と言われる多彩な戦略は魅力の1つですが、“オリンピック中継”という観点で見たときに特筆すべきは、連日にわたる試合数の多さ。夏季オリンピックを合わせても、これだけ毎日試合を楽しめる競技はなく、試合数を重ねるほど応援の熱が高くなっていきやすいところがあります。
また、「冬季オリンピックは競技ごとに『この地域が強い』という傾向がはっきり出やすい」と言われていますが、カーリングは欧州、北米、アジアと各大陸に強豪がそろっていることも盛り上がりにつながっている理由の1つ。特に日本人の私たちから見たら、「平均身長約153cmの小柄なロコ・ソラーレが、大柄な欧米の選手に勝つ痛快なシーンが見られる」という意味でも魅力を感じやすいスポーツなのです。
残り2試合、ロコ・ソラーレの奮闘を見た日本中の人々は、メダルの有無や種類にかかわらず、カーリングというスポーツをもっと好きになっているのではないでしょうか。