50K部門優勝者、Damodar Dudha Magar さんゴール直前、そしてゴール。立ち尽くす姿が、渋い...


50kmのゴール直後、倒れ込むランナーたち。



精根尽き果てているのに、何故か笑っている。


3月のレースでは後半、いつ自分に落雷するか分からない激しい雷雨と、トレイルを真っ白に埋め尽くすヒョウが降り積もった。天候の急変で体温を奪われ、落雷の恐怖に震えた。今回は雨期の終盤であったが終日天候に恵まれ、また、気温も適切に涼しくかつ温暖であった。

今回は行方不明者が出ず(過去のレースでとんでもない場所に迷い込んだ人も、最後には無事が確認されているが)、実に良かった。

マーキングが(これでも)3月のレースより改善されてきたと云うことだろう。いや、3月のコースより今回は尾根筋が明確で、3月より狭いエリア内をぐるっと回る、地理的に分かりやすい設定であったとも考えられる。地元ネパール人ランナーにとってゴダワリは、より土地感を発揮しやすいエリアであったとも思う。

50K部門のゴールタイムを見ると、特に外国人はいくつかのグループで走ったのでは?と感じられた。女性参加者2名のうちひとり(外国人)は、外国人男性ランナーと同一でゴールしている。共に励まし合って、互いをエスコートしたように見える。

カトマンズ近郊のような不確定要素が高い、主催者の安全管理が充分に及ばない中では、特に50Kまたはそれ以上の距離においては、走力が似通ったランナーでグループを組むことはひとつの解決策であろう。安全対策のひとつとなる。

個人のランニングスタイルや人生観に関わる問題だ...けれど。

50Kのコースでは、21km地点で車道と交差しており、リタイア者収容のための車が確保出来たそうだ。このあたりまで走ってくると、残りを安全に完了する自信ないランナーは自分で分かる。事実2名、この地点でリタイアして、車で帰宅した。これまた、コース設定がよく考えられていた。よ、ね。事前に想定してた?ねぇ、鳥人ナラン...偶然?

途中のチェックポイントでゼッケン確認が為されていなかったが、31kmの(コース最高地点)プルチョウキ山頂では、国軍による通過ランナーの数がカウントされ、大会本部に携帯電話で連絡が入っていた。プルチョウキ山頂はカトマンズ盆地の外輪山の最高地点でもある。そのため、国家的に重要な通信やテレビ放送送信タワーが設置され、常に国軍が管理・警備を行っている。大会運営者は事前に国軍の許可を受けていないと、レース自体出来ない場所である。国軍はランナーの安全管理以前の問題として、警備の観点からランナーをカウントしていたのだと思う。

ただし、数だけでゼッケンは控えていないため、誰が通過して誰がまだか?という点は、把握出来ていなかった(本部にこの点確認済み)。諸外国でのレースのように、チェックポイントでの安全管理やエイドは今後も、ネパールでは期待出来ない。ネパールでのレースに参加される方々には、「そういうものだ」と割り切って、何も期待せず、やって来てほしい。

期待して、裏切られて、「こんなのおかしい、不条理だ!」と叫んでも、助けは来ないからね!恐怖のズンドコよ!!ないものと覚悟していて、もし現場で何らかサポートがあったとしたら。それは神の恩寵。小さな奇跡だから。ね。

今回のレースでは17K/50K共に、スィーパーが1名ずついてくれた。17Kでは最後尾にいた参加者のひとり(ネパール語は出来ない外国人女性)が途中で脚を痛め、歩くことも出来なくなった。ネパール人ベテランランナーであるスィーパーさんが携帯で麓からバイクを呼んでくれ、事なきを得た。もし彼女ひとりであったら...と思うと、恐ろしい。トレッキング街道のようなロッジや茶店はないし、村人もたまにしか通りかからない道であるから。

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次回は来年1月3日に、カトマンズ盆地北側の外輪山で50kmと80kmのレースが開催される。お正月でもあり、日本から参加を計画されている方もいるかもしれない。

距離の短い27km、11kmレースも開催されるようである。普段から走り込んでいる、地図も読める自立したランナーであなら、それほど深刻な問題は起きないとは思う。ただし、普段から、神さまに嫌われないようにしておくことは必要だろう。

50kmと80kmに参加するとしたら、しっかりと準備してきてほしい。コースは分かりづらいし、エイドでのサポートも期待してはいけないし、基本的安全管理も為されない。と、覚悟しておくに越したことはない。普段日本では何も問題なく走れる距離や高度差であったとしても、精神的に非常にタフなレースになるだろう。1月のカトマンズは、夕方5時半には暗くなる。野生動物も棲む森林のトレイルでは、蛍光塗料の標識も多分、つけてはくれないと思う。

数年に一度の割合で、雨季と乾季がはっきりと分かれるネパールで普段降るはずのない「真冬の大雨、山の上の大雪」に見舞われる年末年始もあること。忘れてはいけない。レースがこれにぶつかれば、本当に悲惨だ。命の危険に直面する可能性もある。


私自身、国際基準のトレイルレースはたった一度、The North Face 100 アジアシリーズで、タイのカオヤイ国立公園の25kmに参加したことがあるだけだけれど。この時は適切過ぎるマーキングにたまげた!「これじゃあ、迷いようがないわ」「トレイルなのに、ロード以上にコース明確」で、標識やテープも分かりやすい。エイド、チップによるタイム計測、そしてお祭り騒ぎのゴール。100Kの最終ランナーが帰ってくるまで、ハイテンションで盛り上げっぱなし。すごいものだ...

ネパールでのトレイルレースは、今のところこの対極にあると云わざるを得ない。

しかし、リチャードや、鳥人ナランや、リジーの熱意とランナーに対する敬意は本物だ。ただ単に、ネパールの国情では手が回らないのだ。出来る限り、で、しかも毎回、少しずつ進歩している。我々参加者が自分の力量をシビアに考えて、参加する部門距離を選ぶ。事前の準備を怠らない。精神的に強いランナーに目覚める、貴重な機会でもある。

た・だ・し、1月3日のレース詳細も、直前にならないと分かりませんよ。多分、いつものように、レース前夜のメイルで届くのでは?

レース報告、おしまい。

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おまけ

ゴダワリでは、5kmのイェティ・ラン(雪男レース)も開催された。ごらんのように、泥んこの障害物競走。暖かな時期限定のお楽しみ。欧米の人たちって、こーゆーの、お好きですね。

みなさまは?