ネパール国軍では、インド製の銃火器が大量に使われている。ネパールに地理的にも近く、価格的にも手頃で、インド政府からの軍事援助で無償供与されたものもある。
 
この中に、INSASライフルと呼ばれる銃がある。カトマンズ市内でも、国軍兵士が肩にかけている姿をよく見かける。このインド製のライフル銃についてネパール国軍は、インドに対し「ケンカを売る」としか思えない姿勢を見せ始めている。
 
金曜日、定例の国軍記者会見の席上、スポークスマンであるグルン准将は、先日のカリコットでの国軍とマオ派武装組織の戦闘において、INSASライフルの性能に問題があったと指摘した。この戦闘では、マオ派の死者を上回る、43人の国軍側死者が出ているだけでなく、70人以上の国軍兵士が捕虜になっている。
 
この惨敗の原因のひとつとして、長時間続く戦闘の中、インド製INSASライフルを休みなしに使用した結果銃が熱を帯びると使用不可能となり、熱を冷まさないと再使用できなかったと、ネパール軍は指摘した。
 
これに対し本日、在ネパールインド大使館は抗議の声を上げた。曰く、INSASライフルはカシミールの最前線でインド国軍により多数使用されており、この手の障害は報告されていないとのこと。パキスタンという長年の敵対国と対峙しつつ、武器生産においても南アジアの超大国としての高いプライドを持つインドである。亜大陸で広く使用されているインド製ライフル銃の性能に対して、記者会見で不満を述べること。
 
これはネパールが、インドという「国家に対してケンカを売る」行為である。
 
国王を大元帥に仰ぐネパール国軍の、インドに対する強烈なメッセージとなる。そして現在の国際情勢を考えるに、インドとケンカすること=アメリカを敵に回すことである。インド・シン首相のワシントン訪問時、ブッシュ大統領との記者会見では、インド米国協調体制が高らかに謳われたばかりである。
 
そうなるとネパール。南アジアの中で、孤立の道を進むのであろうか?
 
いや。ネパールには、もうひとつの巨大なる隣国がある。北のお隣さん。そう、中華人民共和国。ネパール王室は伝統的に、共産中国との信頼関係も培ってきたのである。