本日日曜日、ネパール最大発行部数の「カンティプール紙」の風刺漫画が過激であった(UWBサイト参照)。
 
ゴミ捨て場のコンテナから、コングレス党首コイララ氏が「死んだ馬」を担いで、伏し目がちに歩み去っている。その馬には「立憲君主制」と書かれている。
 
説明しよう。最近都市部の知識人や、学生運動活動家は、「王制の廃止と共和制の実現」を主張しはじめている。しかし、ネパール最大の政党であるコングレス党コイララ党首は、「共和制に反対し、立憲君主制を固持」する態度を表明している。
 
コイララ氏は「王室嫌い」で有名な老政治家であるが、それでは何故、立憲君主制の必要性に拘っているのであろうか?
 
これは推測であるが、コイララ氏はインドや中国という超大国との国際政治の観点。社会基盤やシステム整備が脆弱な国内事情。などを鑑み、王室を排除した共和制という革命的な政治体制が、ネパールに大惨劇をもたらす可能性を深刻に捉えている可能性がある。
 
もしくは、共和制を主張する党内の次世代リーダーや学生活動家が主流派となり、自己の派閥が求心力を失うことを恐れている可能性もある。
 
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それにしても、立憲君主制度を、ゴミ捨て場にうち捨てられた死んだ馬に例えるとは!過激すぎる風刺漫画である。掲載紙の編集長は、その日のうちに政府から、事情説明のための呼び出しを食らったそうである。
 
また、新聞に掲載された漫画ではゴミのコンテナ、風雅な飾りの中に「ゴミ捨て場」との文字が書かれていた。しかし、UWBサイト版では「王立ゴミ捨て場」と、更に過激な文字が書かれていた。両方とも、漫画家バッサヤーン氏の手書き文字の筆跡である。この漫画は新聞社のサイトに掲載されていないため、UWBがわざと、掲載版と異なるものをアップしたのだろうか?
 
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それにしても、2.1直後は国軍将校や内務官僚により厳しい検閲を受け、反体制的報道が規制されていた。その後は、メディア自身による報道の自己規制も見られた。
 
ところが昨今、新聞、雑誌、テレビを擁する民間「カンティプール・グループ」を中心に、反体制報道が過激の度合いを増している。今日の風刺漫画は、ひとつのピークを象徴するものであると云える。
 
一方、政府系報道機関も象徴的動きを見せている。政府御用新聞「ゴルカ・パットラ」名称のネパール語スペルが、旧態依然とした大昔の綴り方に突如変更された。
 
また、ネパールの隅々まで電波の届くメディアである、「国営ラジオ・ネパール」のニュース開始前の音楽(ジングル)。王孫殿下の誕生日から、民主化以前パンチャヤト国王親政時代の、古式騒然としたジングルが突如復活した。その後しばらく経って、メロディーはパンチャヤト・ジングルのまま、電子楽器で新たに録音したものに取って代わった。
 
私は密かに、このメロディーを「パンチャヤト音頭」と呼んでいる。私のような外国人でさえ、「ぴゃっぴゃらぴゃーらら」としたパンチャヤト・ジングルを聞くたびに、気持ちが逆撫でされてイライラする。
 
国民を馬鹿にした、体制に反感を抱かせるような国営メディアの姑息な挑発。そして、民間メディアの過激度を増す報道。これは何を表しているのだろうか。現体制は、体制批判報道を引きだそうとしている、とさえ見える。
 
中国の紅い皇帝・毛沢東のやり方では、ヘビを穴から追い出しておいて(対立派の批判を放任しておいて)、そして、一挙に叩くわけである。陛下のスタイルは、如何なものであろうか。ドカン!とメディアが、痛い目を見る日が来るのではないかと考えるのは、私の心臓が「ぴよぴよ」ひよこなんだろうか。
 
このブログだって、自粛しておくに越したことはない。
 
しかし、書けなくなったら強制的に書けなくなる訳である。ええい、ままよ。と、書けるうちは書き殴れ!書き垂れるべし!!今の「気持ち」は、今しか書き残せないから。