云うまでもなく現在のネパール、国内に毛沢東主義反政府武装組織(以下、通称マオ派)を抱え、この9年間に政府・反政府・一般市民併せて11,231人もの、ネパールの命が失われている(INSEC発行: 2004年ネパール人権白書による)。
 
この惨劇を、マオ派は「人民戦争」と呼び、階級の敵を武力で制圧することにより、ネパールに真の民主主義国家を打ち立てるための正統なる政治闘争と位置づけている。一方王国政府現体制は、マオ派をテロリストと位置づけ、徹底的な武力による討伐を推し進めている。
 
双方の武力の間で、恐怖の生活を続けているのは、カトマンズなど都市部を除く村々に暮らす、ネパール国民の大多数である。どの勢力も、言葉では「人権保護を遵守する」と謳っているが、生きるか死ぬか、殺すか殺されるかの戦いの中では、武器を持たない市民の人権が踏みにじられること。世界中の戦場で、内紛地域で報告されてきたことである。ネパールも、その例外ではない。
 
マオ派による強制連行や政治教育は、時に聖域であるべき学校にまで土足で上がり込んでくる。政府治安部隊の治安維持活動において、反政府側の疑いをかけられた人間が拘束され、その行方が途切れる事態もある。国際的人権監視団体によれば、ネパールは世界的に見ても、「失踪大国」なのだそうだ。
 
カトマンズ首都圏に暮らす私たちのように、「明日を夢見て今日の床につける」人間は、この国では非常に恵まれた存在であると云える。
 
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その一方で、マオ派は【外国人はその攻撃対象としない】と、明言している。また、カトマンズやポカラ、主要トレッキングルートなどの治安は現在まで、旅行するに支障ない安全が確保されてきた。アンナプルナ山群の一部など、トレッカーがマオ派からの寄付を要求される事例が報告もされている。しかし、寄付をすれば領収証まで発行され、手荒な事は起こらないのが普通。
 
ネパール観光評議会(NTB)をはじめとする、ネパールの観光振興を目指す団体。そして観光業界の団体各種は、【ネパールは外国人にとって安全な旅行地である】と、繰り返し表明している。
 
確かに、マオ派による交通遮断を無視して、マオ派活動地域の道路を走行していた車両に爆発物が投げ込まれ、外国人登山者が重軽傷を負った事件など(これはネパール人と間違われたと思われる)ごく少ない例外を除けば、外国人が殺されたり、攻撃の対象になった事例は「ない」と云っても差し支えない。
 
外国人が普通に旅する旅行先に限って行動し、自分たちは外国人だと外から見て分かる行動をする限りにおいて、ネパールほど、自国民の生命が脅かされる事態の中、外国人が安全に旅行できる国は、世界でも他にない!と云える。
 
不思議な国だと思う。何故なんだろう?
 
NTBなど、「ネパールは安全です」とヒステリックに触れ回る前に。ヨーロッパなどの大使や、ネパールを訪れる世界の著名人に「ネパールは安全です」と、記者会見で云わせる前に。
 
 何故ネパールでは、ネパール人と外国人の安全性に、エベレストと日本海溝ほどの落差があるのか?
 
 マオ派が外国人に手出しをしない根拠は何なのか?
 
 外国人の安全は、何が元になっていて、何のバランスが崩れたとき安全神話が崩壊するのか?
 
真剣に、科学的・社会学的リサーチと分析をすべきだと思う。
 
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私が思うに、マオ派は諸外国からの政治的、または武力での「介入」を避けたいと考えているのではないだろうか。外国人への無差別攻撃は、国際社会からの非難を浴びやすい。
 
ヒマラヤの麓、外国の目が届きにくい場所で、政府・反政府共に、こそこそ自国民だけで殺し合っているのが現在の姿である。このように、殺戮の度合いが拡大しようとも「ネパール国内問題」である限り、マオ派は「ガイジンには手を出しません」路線を貫くと思う。
 
反面、この問題に諸外国が介入してきたとき。または国連が、正式に仲裁をはじめたとき。特に、平和維持のために外国部隊が投入されるような事態になれば......マオ派は容赦なく、外国人をも攻撃対象に加える可能性がある。そしてネパールは、仁義なき報復合戦という国際テロの泥沼に、首まで浸かることになりはしないだろうか?
 
そうならないために、今、何故マオ派は外国人を攻撃しないのか?多方面からの真剣な分析が必要なのだ。そして次のステップとして、ネパール人も攻撃対象から外すためには何をすべきなのか?シビアな情報分析と共に、全ての政治・武装勢力による「勇気ある妥協」が無ければ、数年のうちにネパールは、崖から転げ落ちるような暗転を避けられないであろう。
 
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現状においては、日本人が「普通の旅行やトレッキング」をする限り、ネパールは安全が確保できる旅行先だと思う。少なくとも、今年の秋など、まだまだ大丈夫だと思う。
 
でも、ずーっと先のことは予測できない。ネパールへの旅は、お早めに!
 
そして、ネパールでも日本でもインドでも、アメリカでもイギリスでも、どこの大学・研究所・シンクタンクでもいいから、何故ネパールでは自国民は命の危険があるのに、外国人の安全は確保されているのか?研究してくれないだろうか。もしくは不肖私に、手ほどき願いたい。
 
学問の世界が相手にしてくれないなら、各国、インテリジェンスのみなさま。CIA、MI6、日本国内閣何とかセクションでも結構です。印・パはちょっと.....強烈すぎますが。
 
真剣に、対応お待ちしています。