村の子供たちが云うに
「この先の森では、時々追いはぎが出るゼ。危ないから行くのは止めな」
「ところで、お菓子もってるんだろ 。オレたちにちょうだいよ」
って、お菓子強盗かよ、オマエら。

しばらく行くと村のおばちゃんが云う。
「ここから先は女がひとりで歩く場所じゃないわよ。誰かと一緒に行きなさい」
って、その誰かがいないんじゃない......

手書きの概念図見ながら考えた。この先、樹林帯の強烈な上り坂だ。その横に、傾斜はそれ程じゃないけどものすごく遠回りのジープ道がある。よし、地元のバイクが行き来するだろうジープ道を行こう。遠回りでも安全だ。

IMGP1302

GPSウォッチの表示を標高に切り替えて、2,500mの高さの峠を目指して歩く。予想通り時々バイクが通りかかるが、みんな二人乗り。ネパール人は山道を行く時歩きじゃなくて、バイクや車であっても出来る限り誰かと一緒に行く。それが安全対策なのだ。1台だけひとりのバイクがやってきて、ヒッチハイクしたくなる気持をランナーの理性で押さえた。 

標高表示はまだ2,300m だ、まだ登りだな。と、前を見ると、チトランバンジャン峠のチェックポストがある。あれ?

コース説明ではやっと半分過ぎの距離(遠回りルートをした私のGPSでは、既に32km)。ここからウルトラコースはチトラン村に下り、山脈の麓を回り込み再度稜線まで登り切り、その後はゴールまで稜線を行く。 時間は午後2時。このままでは明るいうちのゴールは無理だ。チトランに下らず真っ直ぐ南下すれば、33kmのショートカットコースが設定されている。

残念だけど、ショートカットしよう。

そう決めて行こうとするが、チェックポイントの係員からチトランに行け!としつこく云われる。ショートカットコースのことを効いていないようで、33kmコースならこの下のチトランが30kmだからその先まで行けばいいじゃないか。と云う。そこから先にエスケープルートは全くないのに。お話にならない。

村の人に尾根筋ルートを確認するが、ここでもまた「女ひとりでは行くな」で辟易。地元の人の言うことは正しい。実に正しい。しかし今日の自分は、トレイルランナーな訳で。元々無理なことをやりに来た訳よ。って、説明しても理解してもらえないのは当然だ。 

本日最後の無謀な頑張り!と足を先に進めた。あれ、ゴロゴロとかいう音が聞こえるのは気のせいかな?あれ、心なしか空が暗い。あれ、あれ、え゛ーーーっ

つづく