事前の連絡では、スタート地点たるカトマンズ盆地北西部までのシャトルバスは、始発のパタン午前6時発。だが6時半になっても全然来ない。コースセッターのナランが電話で確認したところ、13.5km参加者の直接ハッティバン(ウルトラコースではゴール)に行くバスしか手配されていないという。あ゛、こんなにいっぱい人がいたのは、殆どみんな13.5の方だったのか!ウルトラ組は6人。すぐに路線運転の乗り合いマイクロバスを止め、みんなで代金シェアでチャーターしてスタート地点に向かった。出だしからこれかよ。参るなぁ。

バラジューの北側にあるナガルジュン国立公園ゲートには、合計16人のランナーが集結。そのうち女性は私と、もう一人の(ネパール人)女の子。薄いコットンの半袖Tシャツとジャージのスラックス。手に1リットルの飲料水ボトルという超軽装の彼女はスリムで、いかにも走れそう。一方彼女の母親世代のオバハンたる私は、日本から買ってきた折りたたみ超軽量ストックを久しぶりに使うぞ!な、フル装備。

スタート前のコースブリーフィングが始まった。

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説明するのはコースセッターのナラン(写真中央横向きの男性)。前夜届いたメイルとほぼ同様の内容に引き続き、注意事項。

「ヒョウに注意して下さい」

「は?」

「コース上には野生のヒョウが出る可能性あります。事実ボクたち、マーキングで走ってた時、ゴール手前の樹林帯で大型犬ぐらいの大きさのヒョウに、結構至近距離で遭遇しちゃってもう。恐かったぁ~」

ええい、ままよ!と、午前7時45分スタート。最初は石段の上りが4km弱続く。最初はゆっくりと、今回はスィーパーをつとめてくれる世界的にも有名な女性プロトレイルランナー、リジー・ホーカーさんといっしょに最後尾につける。リジーは何度もネパールで走っているが、今回は結構深刻な故障中で走れず、歩いてスィーパーをしてくれていた。

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仏塔のあるジャマチョはポカポカと暖かく、この天候がこのまま夕方まで続いてくれることを祈った。2km程ジープ道を下り西に折れる。分岐点には国立公園内を警備する国軍兵士が立っていてくれて、誘導があった。結構ちゃんと、レースマネジメントしてるじゃない......

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ここからは、絵に描いたように美しく、走れて身体にも優しい五つ星のトレイルだ。ここを快適に飛ばさないなら、トレランをする意味がない。「やっほ~」と、歓声上げて走る。きっとリジーも走るだろうと思ったら歩き続けたようで、後ろから彼女の気配が消えた。

樹林帯を抜けたところで、軽装の国軍兵士から「こんにちは、ニホンジンですか?」と、日本語で声をかけられた。ビームドゥンガ上の駐屯地にいる太尉殿で、カトマンズの日本語学校で身につけたらしい。 更に下って、カトマンズ郡とダディン郡の境界線上にある村、ビームドゥンガ。ここで最初のチェックポイント。何度も行きつけの村の茶屋に設置されていたが、ここにはレース係員ゼロ。茶屋のオバちゃんがコーラと水をくれる。ゼッケン確認なし。しばし休憩し、再スタート。バトバンジャンの峠までひと登り。そして、トリブバン国道上のタンコットまで下る。のだが、人の気配濃い村落部に下るに従い道はいくつも分岐していて、マーキングは見つからない。村の人たちに道を尋ねながら下って、国道が見えて、どんどん走って、あれ?

タンコットより更に西のナーグドゥンガ方面に出る道に迷い込んだみたいだ。引き返し、方向転換して、地形に当たりをつけながらタンコットに着いた。しかし、あるべきチェックポイントの場所には何もない。あれ~?ここで主催者から携帯に場所確認の電話があった。チェックは無視して良いとのことなので、そのまま次のポイント、チトランバンジャン峠へ向かった。この登りが今回、最大の急傾斜である。

タンコット警察脇の、人家が点在するジープ道をどんどん先に進む。とにかく進む。このどこかで、尾根筋まで一気に登る樹林帯トレイルに入る筈なんだが......

「おーいオバちゃん、そっちはヤバいぜ」

突然背後から、呼び止める子供の声が。

つづく