永遠の0(百田尚樹)
ゼロ戦の搭乗員で26歳の若さで戦死した祖父の戦場での生き様、死に様、そして当時戦場にあっては異常とも思われるほどの生へのこだわりとその背景にある妻子への愛を、現代に生きる26歳の孫が辿る。
同時代を共に過ごした同僚、部下たちが、宮部という戦闘機乗りの生き方を語る。違う人物から聞かされる同じ話。しかし、多くの人物から話を聞くことにより、宮部という戦闘機乗りの人間像が全方位的に浮かび上がってくる。
本書は小説(フィクション)ではあるが、直接言葉で聞かされる証言は、手紙の様に現存する証拠だけでは分からない戦争の実態があるということを改めて認識させられる。
百田 尚樹
~覚えておきたいと思った台詞~
■宮部の台詞
「敵を堕とすより、堕とされない方がずっと大事だ。」
「たとえ敵機を討ち漏らしても、生き残ることが出来れば、また敵機を撃墜する機会はある。しかし-」
「一度でも堕とされれば、それでもうおしまいだ」
■宮部の列機だった井崎の語り(現代)
「十九歳の若者に命の本当の尊さなどわかるはずがありません。~たいした金額も持たないでギャンブルに行き、どうせ負けるだろうと思って平気で全額を賭けていたようなものです。しかしどうしたわけか勝ち続けると、いつのまにか恐怖を覚え、負けたくないと思い始める気持のようなものでしょうか。」
■宮部の台詞
「米国の工業力はすごい。戦闘機なんかすぐに作る。我々が殺さないといけないのは搭乗員だ。」
「~あの男を生かして帰せば、後に何人かの日本人を殺すことになる。」
■艦隊司令部月野少佐 将棋と囲碁の違いを問われて
「将棋は敵の大将の首を討ち取れば終わりだ。たとえ兵力が劣っていても、どんなに負けていても、敵の総大将の首を刎ねれば、それで終わりというものだ。」
「言ってみれば、僅か二千の軍勢の織田信長が、二万五千の今川義元を破ることができるようなものだ。」
「囲碁はもともと中国で生まれた遊びだ~。そしていつしか、広大な中国大陸を取り合うような遊びに発展した。」
「かつて日露戦争では、連合艦隊がバルチック艦隊を打ち破って戦争に勝利した。連合艦隊はそれ以来、敵の王将つまり主力艦隊を打ち破れば戦争に勝つと思い込んできたのだ。」
■神風特別攻撃隊各隊の由来となた本居宣長の歌
「敷島の大和心を人とはば朝日ににほふ山桜花」
■景浦介山 元海軍上等飛行兵長 元ヤクザの語り(現代)
「戦後、俺は何度も賭場を開いたが、素人ほど熱くなる。有り金のかなりをすってしまうと、頭に血が上って、僅かばかりの小金を残していても仕方がないと、全部を賭けてしまうのだ。軍令部の連中にとったら、艦も飛行機も兵隊も、ばくちの金と同じだったのよ。勝っているときは、ちびちび小出しして、結局、大勝ちできるチャンスを逃した。それで、今度はじり貧になって、負けだすと頭にきて一気に勝負。まさに典型的な素人ばくちのやり方だ。」