...え?轢き逃げにあって、今、御主人のお車で追走中なわけですか?
「係長!緊急!逃走事案をマル害が追跡してるよ」
立川で通報を受け付けた受付係員は、ミュート状態にして、上司に連絡した。
このやり取りはすぐに千代田区の指令係に告げられ、係長はすぐに部下の指令係員に指示する。
「警視庁から各局。調布管内、交通轢き逃げによる手配を実施したい。
詳細聴取中なるも、現在までマル害がマル被の車両を追跡中。現在までナンバー不明とはなるが、白色のトヨタのスパシオと言う自動車利用の模様。尚、端緒住所が判明した時点で、調布のリモコンから地帯閉鎖を指示願いたい。
尚、ただいま、区内方向に赤無視で逃走中の模様。現在まで以上、警視庁」
運転手さん!追跡を中止してください!
パトカーが先回りし、拡声器で停止を求めると、被害者の車は停車し、別のパトカーが被疑者の車を追跡に回った。
「至急至急、高井戸1から警視庁」
「至急至急、高井戸1。どうぞ」
「追跡を引き継ぎました。高井戸1がマル追中」
一般人の車が事故を起こさないでパトカーに追跡を引き継げたことに麹町の指令本部の面々は胸を撫で下ろした。
「警視庁了解。マル害はどのようになりますか?」
「我が社の61号が制止しまして、説得中です。どうぞ」
「警視庁から高井戸61。恐れ入ります。マル害はどのようになりますか?どうぞ」
「只今、お話聞いております。どうやら、甲州街道に路駐してる車に追突され、その際、乗り込もうとしていたマル害を轢いた模様。現在までこのようになります。どうぞ」
「警視庁了解しました。所轄系にて連絡を願います」
「調布から警視庁。うちの交通キャップが上がって、ただいま我が社の箱の者が軽快車にて交通規制を開始中です。どうぞ」
「調布の方、恐れ入ります。管制には通本のキャップから連絡しておきます。以上、警視庁」
...多摩二文字、数字504、富士山のふ、数字0478。
高井戸の警ら係が追跡中に無線で中野区の照会センターに問い合わせると、返答があり、
「ゼロ8で八王子管内から24年にB号で上がってます。こっちは終わってますが、10年前にもゼロ8、更にゼロ2。で、A号は全部で6件です」
世田谷区方面から新宿分駐に戻ろうとしていた自ら隊も耳を疑った。
無線の内容は凶悪犯が轢き逃げを起こしたことを知らせていたからだ。恐らく、轢き逃げに至ったのは覚せい剤の酩酊がバレるのを嫌ったために違いない。
千住にいた白黒ツートン部隊の遊撃隊まで応援に駆けつける事態に。
警視庁では急遽、高井戸署にも自署警戒態勢を取らせ、調布署との連携を要求した。
調布分駐からも自ら隊が報告車両として駆け付け、マル被から聞き取りを行なっていく。
ドアガラスにヒビを入れられ、ようやく停止した逃走現場では、被疑者は完全に出来上がっていた。マルB情報もあるので、組の覚せい剤に手を出した口ではないかと囁かれた。
「てめー!どこに捨てて来たんだよ。バカヤロウ」
長さんがキレて掴みかからんばかりの剣幕で被疑者に迫るのを別の部長が止めに入っていた。
そこに気の利く武蔵野署のミニパトがパケを見つけて、保存をかけていたので専務たちは助かった!と喜んだ。
「おい!この野郎。残念だったな」
この事件は結果的に、捜査に当たった組対部五課によって全国指名手配と家宅捜索にも結び付き、地域警察、専務警察を巻き込んだ大プロジェクトの様相を呈した。
名古屋の組から渋谷に流れていた違法薬物も激減し、渋谷の生安課も大喜びで、結果は万々歳だった。