[4234]横綱クレンペラーに果敢に挑む小兵バレンボイムがいとしく懐かしい | TRAZOM@さるさる横丁

[4234]横綱クレンペラーに果敢に挑む小兵バレンボイムがいとしく懐かしい

【今日の一枚】
ベートーヴェン: ピアノ協奏曲第5番「皇帝」
〔バレンボイム(p)クレンペラー=フィルハーモニア管弦楽団〕
[CD]Warner Classics◎2564607601(輸) ※3枚組



8:00起床。
1TBの外付けHDDポータブルを買った。WALKMANに入れてる音楽のバックアップが目的。1TBだとCD何枚分が収納できるのだろうか。
でもTVの録画とおんなじで、入れっぱなしになりかねない。そして一体何回聴けるのやら、トホホ。
CDを買い漁って壁一面に並べた時があった。壮観な景色。家人からボソッと「死ぬまでに何回聴く気でおるん?」と軽蔑のまなざし。それでもめげずに頑張ったが、阪神大震災で大崩れしてしまい、あえなく断念。

なんだか同じあやまちをおかしそう。

○それなりのシューベルト
シューベルトのピアノ・ソナタをバレンボイムで毎日聴いている。若い作品番号のソナタも過不足なく表現していて、スタンダード(この言葉は好きじゃない)この上ない。後期の遺作もそれなりに弾いていて、ずっと聴いてても飽きがこない。
「それなりに」と書いた。普通いい意味で使われないが、どのソナタも的を射る解釈と表現力。あの曲が良くて、あれはイマイチ、というのがない。天賦の才というほかない。
バレンボイムを基準に、あとは内田光子やリヒテルなど、自分好みの演奏を楽しめばいいのだ。

○果敢な小兵が懐かしい
当時25、6の若武者がクレンペラーと共演したベートーヴェンのピアノ協奏曲。
横綱を前に、いろいろ技を繰り出す小兵だが、相手はテコでも動かない。熱戦の末、最後は寄り切られてしまう。・・・そんな感じのベートーヴェン。
だが観客は大いに楽しみ、負けた力士に拍手を送るのではないか。一方、横綱は貫禄あるというか、悠然と構えて微動だにしない。
円熟のシューベルトもいいが、こんな面白い協奏曲もまたいい。と同時に、こんな共演は金輪際、CDにはならないだろうなという一抹の淋しさがこみ上げてくる。

○堂々とわたりあう怪演
どうしてクレンペラーは20代の若いピアニストを選んだのか。そんな疑問も湧いてくるが、聴けば聴くほど味があるベートーヴェンなのに気づく。バレンボイム物怖じせず、堂々とわたりあっている。
同じように、カラヤンだって若いソリストを共演者によく選んでいた。デビューしたてのクレーメルやベルマン、ムターだってそうだった。まるで手のひらで操るかのごとく、オケのペースにはめてゆく。カラヤンの独壇場そのもの。
一方、クレンペラーはガチンコ勝負をしているようで、バレンボイムを暖かくつつみ込んでいる。大人(たいじん)の風格なのだ。

○全集3枚組で1,000円
今日紹介したCDは輸入盤で、約1,000円で入手した。これが正規の日本盤(WPCS-28076)だと、1,760円もする。UHQCDと謳ってある高音質だそうだが、はて両者を聴き比べてみても価格に相応する差はない。
UHQCDって、どんな加工を施したんだろう。そして、こうやって昔のCDを焼き直して再発売を繰り返す。あざとい業界。
UHQCDで十全に再生できる装置を持っている層は限られる。貧しいわれら庶民は足らずの音質を頭で補正してやったらいい、そう思いませんか。