日本アルプスの場合、そのほとんどが山頂付近に山小屋があり、
登山道、標識が整備されていて、
地図と磁石を持たなくても簡単に山に登れてしまう。
また、初心者で自信がない人の場合、
ツアーに参加するという手もある。

1500m以下の低山の場合、そうはいかない。
山小屋はまずないし、道も、登山道だか林道だかケモノ道だか分からない場合も多い。
昭文社やヤマケイなどの便利な登山地図もないことが多く、
国土地理院の2万5千分の1の地図を広げながら、
コンパス片手に現在地がどこなのか行きつ戻りつすることだってある。

3000m級の山に登れば、誰だって感動できる。
しかし低山の場合、そうはいかない。
感動するには知識、知性が必要だ。
(山の歴史、花の名前、木の名前、鳥の名前・・・)

したがって、少なくとも日本の場合、
低山登山者=初心者で、高山登山者=ベテランとはならない。
むしろ逆だ。
素人が日本アルプスに殺到し、
一握りの玄人が低山を徘徊する。

山岳文学の中で、低山専門の作家(例えば、横山厚夫さん)に知性とユーモアにあふれた人が多いのはそのためだろう。
小林泰彦さんもその一人だと思う。