本紙に以前載った「聖教歌壇」を読み、特に感銘を受けた歌がある。忘れ難く、今でも手帳に書き写してある。「無難より難ある人生幸福と語る老女に母の重なる」 


 「創価学会永遠の五指針」の一つは「難を乗り越える信心」。難を“無くす”のではない。“乗り越える”ことで信心の確信は強くなり、苦難と戦う渦中の友に同苦する人間に成長できる。「難こそ誉れ」が仏法者の精神である


 長年、青果店を営んできた多宝会の壮年が、このほど娘夫婦に店を譲った。最後の仕事を終えた日の夜、壮年は妻に「苦労ばかりですまなかった」と頭を垂れた。すると妻はこう答えた。「何を言うんですか。この人生で、あなたと苦労できたことは、私の誇りです」。壮年は姿勢を崩さぬまま涙をこぼした


 かつて、近所にスーパーマーケットができ、店が窮地に追い込まれた。個別配達で盛り返したが、コロナ禍の影響で注文が激減した時期もあった。無理がたたって病に倒れたことも。それでも店を続けられたのは、妻の支えがあってこそだった


 壮年が「何か恩返しがしたい」と言うと、妻は笑顔で「一緒に折伏に出掛けたい」と。夫妻は広布のために“苦労できる誇り”を胸に輝かせ、日々、対話に歩いている。 


【7/8 聖教新聞·名字の言】