地区の集いで、95歳の壮年部員が見事なバイオリン演奏を披露してくれた。美しい音色はもちろん、壮年が語る体験にも感動した


 かつて壮年は、プロ奏者として脚光を浴びた。人気が下火になり、仕事を失った時、親身に寄り添ってくれたのは地域の学会員だったという。「当たり前だよ。永遠に君のファンなんだから」と。その真心に、どれほど救われたか


 壮年は学会に入会し、別の仕事で生計を立てながら、各地の広布の集いでバイオリンを奏でた。「ご恩返しのつもりでしたが、同志の笑顔や声援に触れ、元気をもらったのは私の方でした。100歳まで演奏を頑張りますよ」


 スウェーデンの社会学者が85歳以上に行った心理調査によれば、年を重ねるにつれ、世俗的な価値観を離れて「感謝」や「利他」の心を抱きやすく、その傾向は別の研究で苦難を乗り越えた人ほど強まることが分かった。こうした心理的特徴を「老年的超越」と呼ぶ(小林武彦著『なぜヒトだけが老いるのか』講談社現代新書)


 見回せば、学会には試練の幾山河を越え、「老年的超越」で幸福境涯を開いた信心の先輩たちがたくさんいる。そうした方々と励まし合いながら年を重ね、自らを高めていけることは人生の宝だ。 


【6/21  聖教新聞·名字の言】