随筆家・白洲正子さんが、文才にも優れた装丁家の青山二郎氏に文章を添削してもらった時のこと。“こんな説明は不要”“形容詞が多すぎる”と容赦なく削られ、揚げ句は「これがあんたの一番いいたいことだろう」と言いつつ、その部分まで消された

 そんな厳しい鍛錬を重ねて、白洲さんの文章は研ぎ澄まされていった。「文章はね、伝えたいことだけを書けばいいの、装飾はいらない」と白洲さん。“言葉の力”を信じる人ならではの発言だろう(志村ふくみ『ちよう、はたり』ちくま文庫)

 今、生き抜く力を呼び覚ます“本当の言葉”が求められている。それは安易な常套句や借り物の文章ではなく、書き手の命の底から湧き上がる思いを自分の言葉で、読者のために紡いでこそ生まれる

 本紙配達員の「無冠の友」である婦人部員に、友人読者から先日、こんな声が届いたという。「毎日の聖教新聞を心待ちにしている。世界が不安な中で、今や私の“ライフライン(=生命線、命綱)”になっている」と

 無冠の友の日々の尊い奮闘に、感謝は尽きない。本紙創刊70年目に入った今、「試練に屈しない勇気」「未来を諦めない希望」など、生き抜く力を宿した“本当の言葉”“本物の言葉”を届ける紙面作りを、と一層の決意を込める。 

【4/30 聖教新聞・名字の言】