成人式の日の昼ころのこと。
私は宝塚市の「ニューイヤーコンサート」に行こうと宝塚駅で大阪行きの電車に乗り込んだ。
発車まで5分ほどあったかな?
綺麗なお嬢さんが振袖姿でポツンと座っておられたので、「おめでとうございます」と声かけをすると、お嬢さんはにこやかに微笑まれて「有難うございます」と。
実は、吾が孫も成人式で、早朝からきれいに着付けをして宝塚ホテルの式場へと出ていった。
朝四時に起きて美容院へ行き、髪を結ってもらい、化粧をしてもらい、着付けをしてもらったという。
私は、すぐ近くに住んでいるので出発前に見に行ったというわけであるが、思わず「Sちゃん、きれい!」と何度も言った。常日頃あまりおしゃれをしない孫だが今日は本当にきれいと思った。
このお嬢さんもとても美人で上品である。
私は訊いた。
「もう式典、終わったんですか?せっかくきれいな振袖を着たのに、もう帰って脱ぐのですか?」と。
彼女は
「そうなんです、私、中学から私立に行ったので、友達がいないんです。寒くもあるし、どこにも行かず帰ろうかなと思っていました」と少し寂しそうに、でも澄んだ声で言われた。
孫が今朝
「着付けと髪のセットで3万円要ったんだよ」といった言葉が思い出された。
「すぐに脱ぐなんてもったいないから、式典のあと、武庫之荘のおばあちゃんちへ行って見せなさいよ」と私は孫に言った。たぶん今頃は、孫は行ってるはずだ。
このお嬢さんに
「私、清荒神のベガホールへ、これからコンサートに行くのよ、何ならご一緒しましょう」と誘った。
宝塚市の市民コンサートで、無料であることも誘いやすい要素であった。
「いいんですか?じゃあ、お願いします」とすぐに決まった。
宝塚から一つ目の駅、清荒神に着き、目の前のベガホール入口に到着すると、開場時間までまだ大分あるのに客が並んでいる。「私が並ぶのでお昼ご飯食べてらっしゃい」と言うと素直に従ってその辺の喫茶店に入ったようだ。
開場時間に戻ってきたお嬢さんと一緒に会場に入り、開演までふかふかの温かい椅子に座り、またいろいろとお話をした。
「この着物は母が成人式で着たものです。」とか
「今日は第一組から第三組に分かれていて、同じ一組に友人が入っていませんでした」とか
「自分はこの沿線の長尾小学校卒業、今大学生です」などなどいっぱい話をした。
振袖は無地のレモン色、裾の方に花柄の模様があり、素敵、
色白でぽっちゃり顔の「Mちゃん」。本当に可愛いかった。
一部が終わって休憩時間の時、
私のことを「T子さん」と呼んでくれるようになり、話が弾んでいた。
その時、彼女のスマホがぶるぶると震えた。
ラインが入ってきたのだ。
「友人からのお誘いがあり、夕方に集まりますのでこれから帰ります」
とのこと。 嬉しそうだった。
そう!よかったね。良い成人式になりましたね。
二部になってひとりしずかにコンサート鑑賞をしたが、さっきまで隣の席にいた「Mちゃん」の温もりがまだ私に伝わってほっこりとした気分だった。
夜、わが孫にこの話をすると「おばあちゃん、すごいコミュニケーション力だね」と言う。
エッ!これをコミュニケーション力っていうの?
ただの「おちょこちょいなおばあちゃん」
だと自分では思ってるけどなあ!