「笑顔の花」 | ルネサンス豊田高等学校のブログ

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ルネサンス豊田高校は愛知県にある通信制の高校です。
【ルネサンス豊田高等学校】
愛知県豊田市藤沢町丸竹182
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もう夏は終わり

すっかり秋の訪れを感じるようになりました。

今日は学校へお客様がいらっしゃいました。

林先生という方です。

校長先生の著書「こんな学校があってよかった」をご覧になり

文章もいただきましたので

こちらに掲載させていただきます。

 

 

 ──『こんな学校があってよかった』(犬塚清和,,仮説社)
     を読んで



                                      愛知・春日井市  林 泰樹
 ●花咲かじいさん
 この本を開いて,いきなり引きつけられました。それは,表紙カバーの折り返しに印刷された,ルネサンス豊田高校開校式での犬塚さんの言葉です。

 ぼくはつい最近69歳になりました。玄関の桜の古木の感じです。でも,この桜は春になればきれいな花をいっぱい咲かせます。そのイメージで,「花咲かじいさん」になるのがぼくの目標です。生徒たちに「笑顔の花」を咲かせたい。みんなで一緒に,豊田に来てくれる生徒たちを笑顔で迎え,送りたい。そんな学校を作っていきたいと思います。
              (表紙カバーの折り返しより)

 花咲かじいさんのことをこんなにカッコイイと思ったことはありません。
 今年ぼくは60歳。定年を迎えて孫もいますので,名実ともに「ジイチャン」です。学校では理科専科として働いていますから担任するクラスもなく,今まで以上に気楽な立場で子どもたちに接しています。それは,〈無責任に甘やかす〉という「ジイチャン」的立場に近い感じです。
 そんなお気楽な立場も,もちろん仮説実験授業あってのことです。今朝も,車から降りると3階の教室から5年生の子が「おはよう~!」と笑顔で手を振ってくれました。ヘチマの棚を見に行こうと運動場を横切ると,「あ,理科の先生!」と笑顔を見せてくれます。ぼくも「花咲かじいさん」を目指すスタートラインに立てているのかなと思います。

 ●笑顔の花を植える
 この本には,犬塚さんの文章だけでなく,同じルネサンス高校で働く若い人たちの文章も収められています。どれもすてきですが,ぼくは伊藤葵さんの書いた文章が好きです。
   ルネサンス高校に来たばかりの私と校長先生との初めての共同作業は,花壇の花植えでした。軽トラックでたくさんの花を運んできてくださった校長先生が一言「花を植えるぞ」。

 豊田市藤沢の広大な自然はいつも四季の移り変わりを魅せてくれます。ただ,花壇の花は多くの自然の生命力とは異なり,その繊細で頼りなげな存在が生徒たちの姿とリンクして見えるのです。それを学校が守り,育てることは私にはとても意味があることのように思えます。校長先生は,それを常に行動で,態度で示してくださる素晴らしい教育理念を持った方です。単にそのときはそれが花というわかりやすい形で表されただけであって,校長先生のお話や姿にはいつも学びがあります。これからもその背中からさまざまなことを学ばせていただきたいと思っています。     (66ペ)

 「繊細で頼りなげ」という花のイメージをルネ校の生徒と重ねて「守り,育てる」ことの意味を考えるという感性がすてきです。守り,育てられた生徒さんたちはやがて美しい笑顔の花を咲かせ,その笑顔の花によってルネ校自体が守り育てられるという関係なのでしょう。
 犬塚さんのまいた香しき灰は,若い先生たちの中でも花開いているのですね。

 ●人を包み込む笑顔
 伊藤さんの文章からすぐに思い起こしたのは,犬塚さんがルネ校のホームページに書いている,ぼくの大好きな文章です。
   学ぶことの楽しさを失っては,自分の未来を切り開く意欲は生まれません。今,ちょっと元気をなくしていても大丈夫。悩みはやる気のある証拠です。あなたの新しい一歩を踏み出しましょう。豊田で会えるのを楽しみにしています。(20ペ)

 ここには,繊細で頼りなげな存在である生徒を包み込むような笑顔が見えます。「もう学校なんていやだ!」と思ったことがある生徒でも,「この学校,ちょっとのぞいてみようかな」という気になりそうです。
 これは人ごとではなく,ぼく自身が元気をなくしたときに読んで,ほっとするような気持ちにさせてもらった文章なのです。そのときは,涙のにじむような暖かさを感じました。
 こんなふうに人を包み込む笑顔をぼくも持てるでしょうか。

 ●楽しく生きるためのコツ
 この本を読むと,たぶん多くの人が「犬塚さんのような先生になれたらいいな」と思うのではないでしょうか。
 「自分にはそんなことできるわけがない」とも思えるのですが,犬塚さんはそんな人へも,この本の至る所でアドバイスをしています。そのひとつがこれです。

 好きなこと,好きな本,好きな場所,好きな…。「好きなこと」に敏感になることが,楽しく生きるためのコツです。
                         (30ペ)

 この本の中には,犬塚さんの「すきなこと」がたくさん出てきます。花,詩や歌の一節,本や映画の一場面…。
 中でもぼくが好きなのは,犬塚さんが一人,ガリ本図書館の庭で火をおこしてトウモロコシを焼いて食べる話です。ほんとうになんでもないようなことだけれど,ゆったりと好きな時間を過ごしている犬塚さんの姿が,何ともいえない優しさを帯びた情景として思い描けるのです。
 「それぞれの人が,その場所で,自分のできる楽しみを作り出していく,それが〈生きる力〉だ」と犬塚さん。
 「好きなこと」に敏感に反応し,大切にすることで,自分の中に〈笑顔のもとになるエネルギー〉をためることができるのかもしれません。十分にたまった〈笑顔のもと〉は,自然にその人のまわりにあふれ出していくことでしょう。そして,周りの人の笑顔はさらに自分の生き方を豊かにしてくれます。
 そうやって生きていけば,ぼくもやがて花咲かじいさんになれるかもしれません。楽しみです。
                             (2017.8.31)