東は四国の愛媛県を臨む、大分県の豊後水道、佐伯湾に大入島(おおにゅうじま)がある。その日向泊浦の石浜に「神ノ井」とよばれる泉がある。満潮時は海中に沈み、干潮時のみに姿を現すそうだ。


kaminowi01

神ノ井【日向泊神社】

[所在地] 大分県佐伯市大字日向泊浦〔地図

[御祭神] 現在、調査中です。神倭伊波禮毘古命?


神倭伊波禮毘古命(カムヤマトイハレビコノミコト)は、東征の途、米水津を御進発されて数日、御船に積まれた水も微少になってきた。そこで、水を求めて御船を大入島に寄航された。


しかし、島の村人は山裾にわずかに滴り落ちる水、岩石の窪みに溜まる雨水を集めて飲み水としていた。島全体に水を汲めるような谷や川も見つからなかった。確かに、現代の地図で見ても大入島には河川や池はないようだ。


命は日向泊浦の浜辺に下り立ち、御弓の先で干潮の浜辺を突かれて、水の湧出を祈願し、静かに御弓を抜き取られると、不思議なことに海水ではない清らかな真水が湧出した。命は、その水を汲み御船に積まれた。


kaminowi02


島の村人たちも水の湧出をよろこび、その水を汲んだと伝えられる。以来、御船が寄航した浦を「日向泊浦」、井戸を「神ノ井」と名付け、村人たちはこの水を飲み水などとして利用するようになった。


大きさは東西に三尺四寸(約102cm)・南北三尺二寸(約96cm)、深さは三尺(約90cm)だそうだ。

翌朝、御船の出航の時、村人は感謝と御船の無事を祈願する思いを込めて大きな焚き火で見送ったという。毎年一月の「とんど祭り」のはじまりと伝えられる。


神ノ井の傍に、御船を繋ぎとめたとする2基の大岩がある。海岸側の綱取石(つなとりいし)と、御神体として神ノ井傍の社殿に祀られている玉石(たまいし)である。


神ノ井に向かって左手、鳥居を潜り階段を上がると邇邇芸命【神倭伊波禮毘古命の祖父】を祀る天神社が鎮座する。そこからは、佐伯湾や四国を臨める。


大入島には、佐伯港(大分県佐伯市大字葛港18番地〔地図 〕)から出航する観光フェリーとマリンバスを利用することで渡ることができる。なお、神ノ井は昭和63年6月に「豊の国名水」に認定されているが、現在、生水では飲用不可となっているようだ。