といひまのブログ

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「水と土が響きあいし時、太陽神は我らをいざなうだろう…」

ヘンジは目をつぶり、その言葉を懐かしそうに口にした。親父さんから聞いたのであろうその言い伝えを記憶の引き出しからゆっくりと丁寧に取り出すように。

「水と土が響きあいし時、太陽神は我らをいざなうだろう…?」

僕たちは自然と口を揃えてヘンジの言うその言い伝えを繰り返していた。

「わしには結局その言葉の意味する事は分からんかったがの…」

「でもじいさん、これだけじゃ一体何をどこからどう探せばいいの?、さっぱり分からないよね」僕がヘンジにそう言うと、首相とダッチはう〜んと唸りながら腕を組んだ。

「やっぱりもう少しヒント?、手がかり的なものがないとなぁ〜」首相は言った。

「そうだよね〜、やっぱ宝探しはいつも始めに古い地図的なものから始まる…」ダッチは組んでいた右手をあごに置き天井を見つめながら言った。

「う〜む…、そうじゃ!、ちょっと待っておれ」ヘンジはそう言うとリビングから出て隣の部屋に行った。

 ヘンジが隣の部屋に行って少しして、ゴタタン、ゴトトンと激しい物音が聞こえ始めた。

隠れていた泥棒と鉢合わせて取っ組み合いでも始まったのかというような激しい物音だ。その音はそのまましばらくのあいだ続いた。

 ヘンジが隣の部屋に行って大きな物音を立てているあいだ、僕たちは新品のノートの1ページ目に大きく見出しを書いたものの、次のページから何を書いていいのか全く浮かばず、残りのページをただペラペラとめくっているかのようにただ黙ってじっと座っていた。

 しばらくしてヘンジが戻ってくると、その手には一冊のノートがあった。

そのノートは時間においてけぼりをくらい、長いあいだ土の中に眠っていたかのように、ひどく濁った色に変色した古めかしいノートだった。

「これじゃ、これじゃ、これがその昔わしが飛恒船探しの冒険をした時に使ったノートじゃよ」ヘンジはそう言いながら表紙に積もった埃をぶぅーーっと大きく息を吹きかけて払った。そして残った埃を手でパンパンパンと更に払った。

「うわっ!、じいさん、きたねーな!」首相は言葉汚く言った。

ダッチは埃を吸ってしまったのかゴホゴホと咳をしながら、左手で口を覆い、右手で必死に宙に舞っている埃を振り払った。

「ふぁっふぁっふぁっふぁっふぁっ、すまんの〜」

ヘンジは笑いながらイスに座り、テーブルの中央にドンッとノートを置いた。

 ノートの表紙には[オレの冒険記録]と大きく書かれていた。その文字はノートの古めかしさとは相反して、薄らいではいながらも力強く、大きな意思を感じられるものだった。

僕は“オレの”という箇所が可笑しくて気になったけどそこにはあえて突っ込まずにおいた。

「さぁ〜て」と、ヘンジが僕たちの顔を順に見ながらゆっくりと表紙をめくると、1ページ目には水のエーテルキーのイラストがページ全体を使って描かれていた。僕と同じくらいの歳に描いたにしては割とうまく、いやかなり上手く細部まで緻密に描かれていた。

「どうじゃ〜、上手いもんじゃろ〜。これは正真正銘このわしが描いたんじゃ。わしは美術の成績だけは良くての〜」ヘンジは自慢げに言った

「上手い、上手い、はい、次、次、次のページ!」首相は失礼なほど素っ気なく言った。

「ちょっと首相さ〜、そんなにあせるなよ〜。僕は好きだな〜、この絵」ダッチはそう言いながら、目をキラキラとさせながらじっくりと観察し始めた。その横で僕はダッチらしいや〜と思いながら、くすっと小さく笑ってしまった。

 ヘンジがページの下端を手で摘み次ぎのページをめくると、この町の海岸線の地図が2ページにわたり大きく描かれていた。地図上にはAからGにチェックされたポイントに星印が付けられていた。チェックされたポイントにはこの町の人が“竜の首”と呼んでいる場所もあった。そこは海に向かって竜が首を延ばしているように見える地形で、断崖絶壁になっている場所だ。この町の子供たちは小さい頃からそこには近づくなと親に散々言われてきているので、僕たちも一度も行ったことがない場所だ。

僕たちはそんな場所がチェックされたポイントにあることを深く考えることもなく、同時に「おおぉ!」と歓声を上げていた。

「じいさん、これ!これ!、ちゃんとあるじゃん宝の地図的なやつ!」首相は言った。

「これはの、わしが言い伝えやら伝説やらを色々調べてまとめた結果、この7つのポイントに行き着いたものじゃ。そのポイントについてそれぞれ調べた事を次のページから順に書いておる」ヘンジはそう言うと[オレの冒険記録]を手に取りパラパラと僕たちに向けてめくった。そこにはポイントごとに調べた事が事細かく書かれていた。そのことはヘンジがその時どれだけ本気で飛恒船探しをしていたのかという証にもとれた。

「いろいろと調べてわしが出した答えではこのポイントをたどれば飛恒船に辿り着くはずなんじゃが…。ほれ、こいつもきっと何かの役には立つじゃろ、持っていきなさい」とヘンジは自分の描いたイラストをことさら気に入ってくれたダッチにノートを手渡した。

「えっ!、ありがと〜!」ダッチはノートを受け取ると海岸線の地図のページを開いて、早速観察をし始めた。

 ダッチは本当に何かにつけて観察する。空、雲、雨、川、石、虫、そして絵も。目にとまったもの全てと言ってもおかしくないくらいに。そして困ったことに一旦観察が始まると周りの事なんて一切気にかからなくなってしまう。こちらが話しかけても上の空だ。首相はダッチのそんな所が気に入らないようだけど、僕はダッチのそんな所が割と好きだった。