迫り来る電力不足

2024年5月6日

Natural News

先進国の人々は、豊富な電力を当たり前のように使っている。電気はどこから来ているのかと聞かれれば、ほとんどの人はコンセントを指すだろう。しかし、アメリカの多くの州では、人工知能革命による需要増とグリーンエネルギー導入の義務化によって、過去数十年間には見られなかった深刻かつ長期的な電力不足に直面している。
(記事:スティーブ・ゴーラム WashingtonExaminer.comより転載)

この20年間、アメリカの電力政策は、人為的な温室効果ガスの排出が原因とされる地球温暖化を「緩和」しようとする努力に支配されてきた。2021年、ジョー・バイデン大統領は、2035年までに100%カーボンフリーの電力部門を実現するよう呼びかけた。23の州が、2050年までにネットゼロ発電を達成するための法令を制定したり、大統領令を出したりしている。

ネットゼロ義務化により、送電網運営者は過去20年間、石炭火力発電所を天然ガス発電所、風力タービン、太陽光発電設備に置き換えてきた。2007年以降、200以上の石炭火力発電所が閉鎖され、石炭による発電量は60%近く減少した。2000年から2023年にかけて、風力発電と太陽光発電の出力はほぼゼロから、合わせて14.1%まで上昇した。同期間中、天然ガスは発電量の16.2%から43.1%に増加した。

しかし、多くの州の送電網運営者は今、前例のない電力需要の急増に直面している。

グリーンエネルギーへの強制的な移行は、3つの新たな電力需要源を生み出している。まず、2035年までにガソリン車の販売を禁止するゼロ・エミッション車の義務化が22の州で行われている。環境保護庁は今年3月、2030年までに販売される新車の約40%を電気自動車にするという規制を決定した。電気自動車が普及すれば、送電網は大量の電力を供給する必要がある。

第二に、ニューヨーク市など7つの州の市や郡が、新築住宅でのガス器具の使用を禁止している。2022年、ISOニューイングランドは、ニューイングランドでガス器具から電気器具に移行する場合、EVへの移行よりも多くの新規電力が必要になると結論づけた。

第三に、米国連邦政府はグリーン水素燃料産業の設立を提案している。70億ドルが「地域水素ハブ」に充てられ、水素製造を活性化させようとしている。グリーン水素は水の電気分解によって製造され、大量の電力を使用する。電気分解で1キログラムの水素を製造するには、50~55キロワット時の電力が必要で、これは米国の一般家庭が1日に使用する電力の約2倍に相当する。

しかし、新たな人工知能革命に必要な電力は、EV、電化製品、グリーン水素の合計よりも大きくなるだろう。アマゾン、アルファベット、メタ、マイクロソフト、その他多くの企業が、数エーカーにおよぶ大規模なデータセンターを新設している。新しい施設に加え、全米2700のデータセンターのサーバーは、新しい高性能プロセッシング・カードでアップグレードされ、消費電力を6倍から10倍に押し上げている。現在、データセンターは米国の電力消費量の約4%を使用しているが、AI革命により、今後10年以内に電力消費量の20%以上になると予想されている。

AI革命による電力需要の急増に加え、EV、家電製品、そして提案されている水素燃料産業は、米国の送電網運営者を準備不足に陥れた。私たちは今、電力需要が供給可能量を大きく上回る10年を迎えようとしている。

来るべき電力不足は、2つの大きな経済的影響をもたらすだろう。第一に、電力会社は石炭、ガス、原子力発電所の早期停止をやめるだろう。電気自動車、電化製品、水素電解槽のニーズはおろか、AIデータセンターの新たな需要を満たす電力を供給するのに十分な数の新しい風力発電機や太陽光発電機を建設することも不可能になる。

第二の経済的影響は、電力需要と供給の格差拡大による電力料金の急上昇である。価格上昇は、グリーンエネルギー運動が支持するヒートポンプの需要を減少させるだろう。ヒートポンプは、寒冷地では天然ガスやプロパン炉よりも高価なままである。EVは充電コストが高くなり、公共のEV充電設備は採算がとれなくなる。ガソリン車は今後数十年間、コスト面で優位性を保つだろう。環境に優しい水素燃料産業を確立するための努力は、依然としてコストが高く、わずかな市場しか生み出さないだろう。

最も影響が大きいのは、ネット・ゼロの電力網への移行努力である。来るべき電力不足は、こうした努力を台無しにするだろう。AI革命と風力・太陽光発電システムへの移行の両方に対応することは不可能になる。グリーンエネルギーへの移行は、十分な電力を生み出すことを優先して犠牲にされるだろう。