毛幹部の構造

 

毛乳頭周辺で分裂増殖した細胞はだんだん上に押し上げられていくうちに、ある部分は毛根鞘(毛穴と毛髪の間にあるクッションのような組織)に、ある部分はキューティクル に、ある部分はコルテックス(毛皮質)に、ある部分はメデュラ(毛髄質)に、というように分化していきながら角化し、ケラチン(keratin)という蛋白質になって、毛幹ができます。

皮膚でいえば角質層や剥がれてしまった老化角片に当たるわけで、毛髪の目に見える部分、 つまり毛幹は、すべて死滅細胞の集まりです。

毛幹部はのり巻き状の構造をしており(上図参照)、外側から、キューティクル(毛表皮)・コルテックス(毛皮質)・メデュラ(毛髄質)という3層に分かれます。

キューティクルは毛髪全体の約15%を占め、ウロコ状に毛髪表面を覆っています。

このキューティクルは撥水性で、無色透明、つまりメラニンを含みません。

キューティクルのウロコの隙間には、細胞膜複合体(CMC= Cell Membrane Complex)が存在し、キューティクル同士を接着するノリのような役割を担っていて、外部の刺激から毛髪を守ったり、毛髪内部の成分が流出するのを防いでいます。

また、水分を保持し、水や薬剤の通り道になっています。

このCMCは、コルテックス中にも存在していて、葉巻状のケラチン繊維 (フィブリル束) 同士を接着しています(コルテックスCMC)。

毛髪の大部分を占めるコルテックスは、ケラチン繊維(フィブリル)の集まりですが、このフィブリルとフィブリルの隙間は、親水性で保湿性の高い物質で埋められています。

この部分をマトリックス(間充物質)と呼びます。

マトリックスはC-ケラチンという不定形のケラチンを主成分としていますが、アミノ酸やP.P.T (アミノ酸が数個~数十個つながったもの)・核酸・ミネラルなど皮質細胞内に存在していた微量の物質も混在しています。

コルテックスはこのようにフィブリルとマトリックスから成り立っていますが、その量はほぼ半々で、特にマトリックスは毛髪の水分を維持する保湿成分が多いので、ヘアコンディションを考えるととても重要な部分といえます。

毛髪美容を考える上で、キューティクルと マトリックスはとても重要で、下の表にあるように性質もかなり違います。

キューティクルとマトリックスの性質対比


艶や手触りはいうまでもなくキューティクルの状態に左右されます(艶や手触りの善し悪しは、 もともとの毛髪の形状=断面の形状が正円に近いか否かーという要素もあります)し、後述するパーマネントウエーブやヘアダイなどの、 毛髪に浸透してなんらかの化学的作用を毛髪に与える薬剤は主にマトリッマスに吸収され 反応します。

ちょっと大袈裟にいえば、パーマはマトリックスにかかるものだし、ヘアダイはマトリックスに染まるわけです。

ヘアコンディションの悪化の具体的症状として、多くの方が毛髪のぱさつきを気になさるようですが、この原因もマトリックスの保湿力が低下するためです。

毛髪の太さとキューティクルの疎・密

 

一般的に日本人の場合、太い毛髪(硬毛)はキューティクルが密に重なっており、細い毛髪(軟毛)ほどキューティクルの重なりが疎のようです。
 

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動画はこちら↓↓

https://youtu.be/nM0VWYBEfV4

https://youtu.be/VfHXb3vViFY

参考資料
J.B.Cアカデミー発行
「毛髪科学マスター/Science of Hair」 P. 14 ・ P. 15