しつこい男(窓際族)が支払った賠償金は600万円
でした。

裁判所の損害賠償命令形は、刑事裁判の有罪判決確
定後でないと、利用できません。

2023年7月10日に大阪高裁で、大阪天満女性パブ
オーナー殺人事件の控訴審判決公判がありました。

大阪高裁は、一審(大阪地裁)の懲役20年の判決を

支持して、宮本浩志被告の控訴を棄却しました。

宮本被告が上告しなかったので、懲役20年の有罪刑
が確定しました。
その後、裁判所は2980万円の損害賠償命令を出しま
した。
しかし、実際に支払われた金額は600万円でした。

2018年の日弁連調査によれば、賠償金が支払われた
案件は殺人事件で13.3%、強盗殺人事件で1.2%に
すぎないようです。
自己居住用住宅しか所有していない者が、執行猶予が
付かない事件を起こして起訴され、有罪判決を受けた
場合、勤務先は懲戒免職になり、退職金も出ないので
賠償金の支払い能力がありません。

「犯罪被害補償を求める会」は、国による「賠償金
立替制度」の創設を求めています。

この殺人事件の場合、宮本被告の有罪が確定するまで
に時間がかかり、西宮市のマンションを売却したカネ
や預貯金の大半は、宮本被告の妻子に渡ったと思われ
ます。

国には賠償責任はないし、被告の家族にも賠償責任は
ありません。また、被告は有罪が確定するまで、自由
に自己の資産を処分できます。

国による賠償金立替制度も、実現は簡単に実現しない
ようです。

大阪天満女性パブオーナー殺人事件
◼️ 事件の概要
2021年6月11日夜にカラオケパブで、常連客の宮本
浩志がオーナーの稲田真優子さんを殺害した。


2021年7月9日、大阪地検が宮本浩志容疑者を大阪

地裁に殺人罪で起訴しました。これで宮本容疑者は、

宮本被告になりました。

大阪地検は被告の罪状認否を明らかにしていません。

全面自供と発表してないので、被告は否認している

と思います。

マスコミなどの捜査関係者への取材から、被告の服や

靴に付着していた血痕が、被害者(稲田真優子さん)

のDNAと一致したとされています。


報道によれば、宮本被告は、西宮市内の公立小、中、

高を経て、徳島大学に入学しました。

公立高校でも非常に優秀なら、京都大、大阪大、神戸

大に進学できたと思います。これら3大学にも電気工

学科はあります。

これら3大学は無理なので偏差値45の徳島大工学部

に進学したと思います。大阪大や神戸大なら西宮市か

ら自宅通学できます。


宮本被告は、1965年6月2日生まれです。

1992年3月に卒業して、同年4月に住友電工に入社

しました。

1984年に高校を卒業した計算になるので、徳島大学

に入学するのに浪人して、入学して留年もしたと思

われます。


同期入社が大勢いるので、出世競争は厳しかったと

思われます。同期入社組には京都大、大阪大、神戸

大の卒業生もいました。同じ電気工学を学んでも宮

本被告が抜群に優れていたとは思えません。

また、人間関係の構築が下手であれば、出世競争で

は不利です。管理職に不向きだからです。


2017年(被告は52才)頃から被害者が従業員(ホ

ステス)として働いていた店に出入りします。

宮本被告が何年に住友電工本体から子会社(住友電

工情報システム)に出向したのか、不明です。

しかし、被害者が働いていた店に出入りするように

なった頃には、出向していたと推測します。

子会社でも課長ではなく、待遇が課長級の窓際族

(閑職)でした。

それ故に残業もなく、退社後、被害者のパブに行っ

て、終電間際まで居座ることができました。


◼️裁判の経緯

2021年7月9日、大阪地検が宮本浩志容疑者を大阪

地裁に殺人罪で起訴しました。これで宮本容疑者は、

宮本被告になりました。

初公判は、9月16日10時から大阪地裁で開廷されま

した。裁判員裁判です。

宮本被告は警察や地検の取り調べで「店に行ったが、

やってない」と否認していました。

初公判に向けて、裁判所と検察側、弁護側が争点や

証拠を絞り込む公判前整理手続きが、2021年8月

以降に14回も行われています。


宮本被告は、取り調べ段階で否認していたので、初

公判の罪状認否では当然否認すると思っていました

が、無言(黙秘)でした。

裁判長に訊かれたことに対して、被告は全て黙秘でした。不規則発言で「死刑にして下さい。いかなる質問

にも答えません」という主旨のことを言いました。


以下、私の感想です。

弁護側は犯人性を争うと表明しました。これは罪状を

否定して「被告は犯人でない」として、検察側と争う

ことを意味します。被告の「死刑にして下さい」は、

犯人でないなら不要の発言です。

裁判官や裁判員に「死刑にして下さい」とお願いしな

がら、質問には答えない(真相解明に協力しない)こ

とは、被告が身勝手な人であることを示していると思

います。


宮本被告が、裁判側、検察側、被害者参加制度で参加

する遺族の質問に全て黙秘なら、事件の真相はうやむ

やのままで、解明されません。そうなると、裁判は、

「有罪か無罪か、有罪なら懲役何年か」を決めるだけ

になってしまいます。

過去の殺人事件では、一人を殺害した場合、ほとんど

が死刑や無期懲役になってません。

真相が解明されず、有期懲役刑の判決では、裁判も虚

しいと思いました。

公判は、9月16日から10月20日の判決まで、8回開

かれました。

2022年10月20日、裁判員裁判で行われた大阪地裁の
判決は、懲役20年でした。

2023年7月10日に大阪高裁で、控訴審の判決公判が
あり、高裁は、一審(大阪地裁)の懲役20年の判決
を支持して、宮本被告の控訴を棄却しました。