「どうしてもいくのかい?」

 

 

コンドームをかぶったマリアンヌ様が問いかける。

 

 

「気づいたんだ。本当の気持ちに!72歳になったあの人のテクニックを・・・もう1度味わってみたい!」

 

 

期待に膨らむ血潮はこれ以上待てなかった。大地は期待に胸を膨らませてショットバーへおもむいた。石村マメ(当時53歳)と初めてデートをした場所だった。

 

 

「もしも運命が繋がっているなら、きっと出会う事が出来る!」

 

 

そう信じ、自動ドアをくぐってあたりを見回す。平日のせいか、店内はとてもすいていた。

 

 

「(18時30分……)」

 

 

店内にはカウンターに女性が一人……年は自分の祖母と同じくらい。シワだらけの顔立ちのその老婆は、難しそうな本を片手にカクテルを口にしていた。

 

だが俺の知らない女性みたいだ……早く会いたい……マメさん、あなたはどこに……

 

 

「マスター、バナナジュースを一杯……」

 

 

マスターに一応注文をして女性の横に座ると、バナナジュースを口にふくむ大地。その瞬間、ジーパン越しに股間をグッと掴まれる。隣で座っていた女性の手が大地の股間をなで回しながら優しく弄んでいたのだ。

 

こんな事ができるなんて、そうとう熟練した技だな。

 

 

「へぇ……俺の股間のGスポット、ピンポイントでついてるじゃないか?」

 

「あっ、ごめんなさい……余計な事だったかしら?」

 

「いや、そんな事はないさ……バナナジュース飲みかけだけどどうだい?」

 

「ありがとう、いただくわ。」

 

 

コクン、コクン・・・

 

 

「どうだい?」

 

「・・・うん!美味しいわこれ・・・」

 

「ふふ、そうかい? 気に入ってもらえて嬉しいよ。」

 

 

一時間後・・・

 

 

大地と老婆は良いムードの中、グラスを共にしている。心なしか、老婆は顔を桜色にしながら言う。

 

 

「や、やだ・・・もう酔っちゃったみたい・・・ワザと強いバナナジュースを飲ませたんでしょう・・・財産目当てね・・」

 

 

む~・・・と頬を膨らませて言う老婆。大地は彼女の言葉に、参ったような仕草をして席を立った。

 

 

「わかったわかった・・・じゃ、少し休んで酔いを覚ましてから送っていくよ。」

 

「ふ~ん・・・そんな事言ってどこかに連れ込む気じゃないのぉ・・・ヒック。あ、足に来ちゃったみたい・・・」

 

「大丈夫かい?」

 

 

大地は老婆の肩に腕を添え、老婆は大地の腰に腕を回す。そして、そのままコブラツイストで気を失わせ、並んで店を後にした。

 

ホフク前進で2、3分のホテルまで連れて行くと、大地は男の本能に素直に従った。

 

 

「愛は・・・理屈じゃないのさ。」

 

「あぁっ、この感じ・・・す、凄く新鮮~・・・19年ぶりぃぃ~~おじいさぁぁぁん~~」

 

 

驚いた事に、老婆はかなりのテクニシャンだった。

 

 

「(うむ。)」

 

 

感度も最高――――リズミカルにうめき声のように発せられる声も大地好みだった。

 

 

チュン・・・チュンチュン・・・どうやら朝が来たようだ。小鳥の囀りで目がさめた大地はゆっくりと体を起こし、朝の牛乳を飲む。ちらっと後ろを見ると、先程まで死の渕でさまよっていた老婆も目覚めたらしく、着替え始めていた。

 

 

「君のお陰で素敵な一夜が過ごせたよ。」

 

「……ありがとう、大地君。」

 

「えっ?ど、どうして俺の名前を……名乗らなかった筈だが……もしかして君……石村マメ……さんっ?」

 

「フフ、私……貴方をずっと待ってたのよ……」

 

「マ、マメさん……」

 

 

思い出してみると世界制服を目論むマッドサイエンティストの老婆が居たのを思い出した。そう、その老婆こそ石村マメだったのだ。

昔、祖母の紹介で出会い、2人で世界征服について体と体を重ね合いながら三日三晩語り合った時もあった。その時のテクニックはこの世のモノとは思えないくらいの世界が広がっていた。言わずとも知れたザ・ワールドだった。

 

大地はスーツを羽織る。マメは慌てて体を上げる。

 

 

「も、もう行っちゃうの?」

 

「ちょっと野暮用があってね。」

 

「また……会えるかしら?」

 

「名刺を服に挟んでおいたから、君次第さ。」

 

「だ、大地くん……(ぽっ)」

 

 

そして部屋を後にする大地。

 

 

あのコンドームから運命の出会いは続いた。

 

アミとの再会、マリアンヌ様の挿入。そしてジャイアンと言う名のスタンドが生まれ、成仏。最後にこうやって初恋の老婆と出会う事も出来た。これから僕はどうしたらいいんだろう。僕はどこに行くべきなのか‥‥

 

 

「‥‥僕はここにいていいのかもしれない。そうだ。僕は僕でしかない。僕は僕だ。僕でいたい。僕はここにいたい!僕はここにいてもいいんだ!」

 

 

すると、一気に世界が変わり、今まで出会った全ての人達が大地に向けて拍手をしていた。

 

 

「おめでとう」

 

拍手を送るマリアンヌ様。

 

 

「おめでとう」

 

バナナを食べるジャイアン。

 

 

「おめでとう」

 

マリアンヌ様に挿入されたままのアミ。

 

 

「おめでとう」

 

白い目で適当に拍手を送るスミレちゃん。

 

 

「めでたいな」

 

通りすがりのホームレス。

 

 

「ワン」

 

車に轢かれ、死にかけの野良犬。

 

 

「おめでとう」

 

ランジェリー姿で拍手を送る石村マメ(72歳)

 

 

「ありがとう!」

 

 

マリアンヌ様に、ありがとう

 

ジャイアンに、さようなら

 

そして、全ての子供達(コンドーム)に

 

おめでとう

 

 

 

「ハッ!!」

 

 

目を覚ますと、そこは自分の部屋だった。

 

 

「ビ‥ビックリした‥今までの世界は…夢だったのか?」

 

 

ふと隣を見ると、裸で抱きしめあい寝ているマリアンヌ様と石村マメがいた。そして裸で抱き合う2人の下には全裸のジャイアンがベット代わりになっていた。大地はつぶやいた。

 

 

「バスケットマンですから」

 

 

ー完ー