昼飯の100円バーガーも食い終わった。
さて今日も仕事の時間だ。
俺の仕事は午後2時から始まる。
午後の2時から仕事なんて、怪しい商売じゃないのかって?
いやいや、勘違い甚だしい!
さて今日も仕事の時間だ。
俺の仕事は午後2時から始まる。
午後の2時から仕事なんて、怪しい商売じゃないのかって?
いやいや、勘違い甚だしい!
「失礼しまぁすぅ」
おっと独り言で説明をしていたら早速来たぞ。
少し変なアホっぽいイントネーションで挨拶してきたこの子は、ポポという名の中学3年生。
1年前に、海外から日本に移住したという日系3世の女の子。見た目は普通の日本人の女の子と変わらない。
元気な声とは裏腹に少し緊張気味だ。
それもそうだろう。今日が初めてなんだから。
少し変なアホっぽいイントネーションで挨拶してきたこの子は、ポポという名の中学3年生。
1年前に、海外から日本に移住したという日系3世の女の子。見た目は普通の日本人の女の子と変わらない。
元気な声とは裏腹に少し緊張気味だ。
それもそうだろう。今日が初めてなんだから。
「こんにちは。まだ時間があるからキャンディーでも食べるかい?」
お菓子で少女を手なずけるとか、やはりいかがわしい商売だろうって? 勘弁してくれ。
ポポは少し迷ったが棒付きキャンディーを選び、アホっぽくしゃぶりながら静かに準備をする。
ポポは少し迷ったが棒付きキャンディーを選び、アホっぽくしゃぶりながら静かに準備をする。
「――さて、始めようか」
俺はポポの隣にそっと腰を下ろす。
「はぁい、お願いしますぅ」
少し照れながらポポは答えた。
「じゃ、まずこの問題が出来るかな?」
ポポに数学の錯角の問題を出す。
そう、俺の仕事は学習塾の塾長。妙な想像をしていたやつは、今のうちに謝罪しておけ。
俺は塾長とはいえど講師も兼ねているが、俺は教えるのが好きだからだ。けして人件費を浮かすためでなのではない!
俺は一人ひとりの生徒たちに丁寧な指導をもっとうに――
そう、俺の仕事は学習塾の塾長。妙な想像をしていたやつは、今のうちに謝罪しておけ。
俺は塾長とはいえど講師も兼ねているが、俺は教えるのが好きだからだ。けして人件費を浮かすためでなのではない!
俺は一人ひとりの生徒たちに丁寧な指導をもっとうに――
「ここにぃ書いてある並行ってなんですかぁ?」
ん…今かっこいいこと思いかけてたんだが仕方ない。
この子は平行の意味を知らないのか。海外では習わなかったのかな?
まずは、図形の基本を教える必要がありそうだ。
この子は平行の意味を知らないのか。海外では習わなかったのかな?
まずは、図形の基本を教える必要がありそうだ。
「平行というのはね、2本の直線が」
並行の説明を始めると、ポポは説明を遮るように
「直線ってぇなんですかぁ?」
…そこからですか。てか話し方がいちいちアホっぽいな。
「そっか。直線というのはねまっすぐな線のことだよ」
と言いながら定規で直線を引き。
「こんな線のことを直線というんだよ。わかったかな?」
「はぁい」
「こういう線が2本あって」
もう1本の平行になる直線を書き
ポポは少し神妙な顔をし
「はぁい…」
自信なさげに答えた。
俺の長年の経験では、生徒がこのような返答をするときはまだよくわかっていないときだ。
そこで、
俺の長年の経験では、生徒がこのような返答をするときはまだよくわかっていないときだ。
そこで、
「よし! それじゃ練習問題だよポポさんも平行な直線を引いてみようか」
ポポに平行が理解できているか実際に平行な直線を引かせる事にした。
ポポが紙に直線を書く。
しかし、ポポの書いた2本の直線は全く平行でない。並行でないというより交わっていないだけでほぼ垂直の様な線だ。わざとやっているんだろうか?
ポポが紙に直線を書く。
しかし、ポポの書いた2本の直線は全く平行でない。並行でないというより交わっていないだけでほぼ垂直の様な線だ。わざとやっているんだろうか?
「うーん。丁寧に線が交わらないように直線を書いてみようか。」
ポポは何がだめなのかよくわからない顔をしながら
「これはぁ平行じゃないのぉ?」
と、聞いてきた。
「そうだね、これは平行ではないね」
「でもぉ直線は交わってないよぉ?」
うん。たしかに直線は交わってはいない。説明が悪かったな。
「そうだね、たしかにこの直線は交わってないね。でもこの直線をもっと長く伸ばしたらぁ」
ポポの引いた直線に定規を当て直線を延長し、2つの線が交わる事を示した。
「ね? 交わるだろ? こんな風に直線を長くひいても交わらない2本の直線を平行というんだよ」
ポポはコクコクと頷いたが、まだ少し納得いかない顔をしている。
まだよくわからないのだろう。
まだよくわからないのだろう。
「どこか分からないところあるかい?」
するとポポは少しためらいながら、
「先生のぉ、書いた直線あるじゃないですかぁ。この直線」
ポポは俺のかいた直線を用紙の端から端まで伸ばし
直線の右端と左端の間をコンパスで比較してみせた。 「ほらぁ、右端と左端で2直線間距離が違うじゃん? もっともぉっと長く直線を引けば2つの直線は交わるということじゃないのぉ?」
直線の右端と左端の間をコンパスで比較してみせた。
…なんでこの子は平行という言葉を知らないのに2直線間距離とかこ難しい言葉を使ってくるんだ?
それに、この平行の図形が正確でないなんて微妙なことに、よく気が付いたな。感心すべきか?
い、いや、そんなことより平行だったな。
それに、この平行の図形が正確でないなんて微妙なことに、よく気が付いたな。感心すべきか?
い、いや、そんなことより平行だったな。
「いやいや、これはあくまでも平行をイメージするための図でね厳密ではないんだよ。少なくともここにかいた2直線では交わってないだろう?」
「なんだか納得いかないなぁ。私の引いた直線だって長くひいたら交わるからダメだって言ってたのにぃ」
…なんだか面倒くさい子のようだ。
「わかった。ならこうしよう。右端と左端の2直線間距離の差が1mm以内としよう。これなら先生の書いた2直線は平行だろう?」
右端と左端の2直線間距離を定規で測り差が1mm無いことを見せるとポポは理解したのか、
「わかりましたぁ」、
と言いながら満天の笑みを浮かべた。
生徒が問題を理解したときに見せるこの笑顔こそ先生冥利に尽きるというものだ。
生徒が問題を理解したときに見せるこの笑顔こそ先生冥利に尽きるというものだ。
「で、この平行な2本の直線を直線a直線bとするよ。直線abに斜線lを引くと直線abと斜線lで角度が出来るね?」
「はぁい」
「この時直線aと斜線lで出来た角度と直線bと斜線lでできた角度で斜線の反対側の角これを錯角と言うんだよ」
「はぁい」
「直線abが並行の場合この錯角は同じ角度になるんだ」
「…はぃ」
また自信のない返事だ。何が分からないのかを聞こう。
「どこかわからないかな?」
「平行な線とぉ、斜線で出来る角度のこことここがぁ、一緒の角度なんですよねー?」
と、錯角の位置を示した。
わかってるじゃないか。なんだか今回は説明がスムーズに感じ少しうれしくなり。
「そうだよ。ポポさん飲み込みが早いね」
俺は褒めて伸ばす主義なのだ。
しかし、ポポの顔はまだ曇ったままだ。
しかし、ポポの顔はまだ曇ったままだ。
「直線abが並行でなかった場合はぁ、錯角は等しくないんですかぁ?」
「うんうん。その通りだ。よく気が付いたね」
と平行な直線ab間に、微妙に傾いた斜線を引いた。
…想像以上に面倒くさい。
「平行な直線abに平行でない直線。斜線なら必ず錯角は出来るんだよ。ただここの図では長さが足りなくて示せないだけなんだ」
「この図ではぁ、表わせないんですかぁ。」
「そうだね、例えば10mくらい長い紙があれば今ポポさんがかいた斜線でも錯角があることが分かるんだけどね」
そういうと、ポポはうつむいて図を見つめている。。
まだわからないところがあるのだろうか?
「でもそれぇ、おかしくないですかぁ?」
疑問を聞こうとする前に、ポポは口を開いた。
何がおかしいのだろう? 逆に俺が疑問を持ってしまった。
何がおかしいのだろう? 逆に俺が疑問を持ってしまった。
「なぜだい?」
するといきなりまくしたてるように。
「まず平行ですがこの図の平行は右端左端の2直線間距離の差が1mm以内と言いましたが、ここに書いた直線abの長さは約10cm2点間距離は約5cm右左両端の差が1mmの場合5mで直線abは交差してしまい直線abは平行でなくなりますよね。」
「え…」
「え…」
「平行でない直線abの錯角は等しくならないんですよね」
「…」
あぁ、なんて面倒くさいんだ!! しかも、妙なところで無駄に計算能力まで高い!!
「それじゃこうしよう平行な2直線abは実際に書いた2直線ab間の右端左端の差が1mm以内
これなら10mでも1000mでもそんなに長くても2直線abは交わらないでしょ?」
これなら10mでも1000mでもそんなに長くても2直線abは交わらないでしょ?」
「なんだか先生の説明が朝令暮改(ちょうれいぼかい)(ころころ変わること)で頼りないけど平行ってなんだか難解なんですねぇ」
お前のせいで面倒くさい説明になってんだよ。それに朝令暮改とかお前1年前に日本へ来たにしては国語力凄いじゃねーか!
「つまりぃ、どんなに直線が長くてもってぇ、例えば2直線abが無限に長くてもぉ?」
そう、平行っていうのは本当は無限に直線を引いても交わらない事を言う。
はぁ、初めからそういえばよかった。ポポがアホっぽいせいで無限に長い直線が理解できないかと思ってたわ。
無限に長い直線が理解できるなら、そのアホっぽさをどうにかしてくれ。紛らわしいわ!!
――っと済まない見かけで判断した俺のほうが悪かった。ポポはアホっぽいだけで天然が入っているわけじゃないんだな。
はぁ、初めからそういえばよかった。ポポがアホっぽいせいで無限に長い直線が理解できないかと思ってたわ。
無限に長い直線が理解できるなら、そのアホっぽさをどうにかしてくれ。紛らわしいわ!!
――っと済まない見かけで判断した俺のほうが悪かった。ポポはアホっぽいだけで天然が入っているわけじゃないんだな。
「そう! 平行は無限に引いた2つの直線が交わらない事を言うんだよ。ポポさんは自分で平行って何か分かれたんだね! 数学者並みにすごいよ」
「えへへ~」
……くどいようだが俺は褒めて伸ばす主義なのだ。
「でぇ、無限に伸ばした直線の両端の差は1mm以内でいいんですかぁ?」
わざとなのか? 真性なのか? もうどうでもいいわ。
俺は非常に面倒くさい平行の定義を教える必要があるようだ。しかし俺だってなんてこんな考えかたされると平行は意味わからん。こういうときは俺の長年の経験で培ったうまい逃げがある。
「ポポさん。先生謝らなければいけない。平行っていうのは正確に理解することは大変難しいことなんだよ。」
「そうなのぉ?」
「あぁ、君にはちょっと難しいかな? ポポさんが大学生レベルならね。だから今は両端が1mmのときと考えておこうか」
「えー、ポポ気になります!」
いつの間にかアイスクリームを食べ始めてた
なんでアイスクリーム食べてんだよ! てかどこから出したんだ!
「先生教えられるけど、ユークリッド幾何学の話をしなければならないからなぁ、
「そうなのぉ?」
「あれは相当難しいから、大学生でもわかるのは少ないんじゃないかな。まぁ先生は、当然教えられるけどね」
ニヤリと笑い頭の良さをアピールする。
俺がユークリッド幾何学なんて分かるはずがない。当然だ。どうせ相手はアホな中学生、こ難しい単語を出して置けばいいんだ。
だいたい素数ってナニ? って感じだ。俺は素数もやらない中学生の勉強くらいしか教えられんが、中学生から見たらすごく見えるだろう。この塾の仕事は、優越感にひたれるところがいい。
だから俺は教えるのが好きなんだ。
おっと本音が出てしまった。
俺がユークリッド幾何学なんて分かるはずがない。当然だ。どうせ相手はアホな中学生、こ難しい単語を出して置けばいいんだ。
だいたい素数ってナニ? って感じだ。俺は素数もやらない中学生の勉強くらいしか教えられんが、中学生から見たらすごく見えるだろう。この塾の仕事は、優越感にひたれるところがいい。
だから俺は教えるのが好きなんだ。
おっと本音が出てしまった。
「ユークリッド幾何学が理解できれば平行を根本から理解出きるね。間違いない。」
なんで、たかが平行にこんなに苦労しなければならないのだ。しかも妙に平行の本質に迫ってくるこのポポという少女、もしやインド人? とにかく面倒くさいくて手がそうだ。
だが俺はそんなことはしない。
塾長である俺は寛大な男なのだ。
だが俺はそんなことはしない。
塾長である俺は寛大な男なのだ。
「先生はゆーくりっどでせつめいできるんですか?」
「当然だよ」
「先生。確かにユークリッド幾何学での平行公理で言えば、点Pを通り、なおかつ直線lに平行な直線は一つです。しかしながら、双曲線的非ユークリッド幾何学でゆうと、無数に存在します。すなわち、虚軸と実軸を使って複素平面を作成し、直線を半円で表すと……」
「ええい!やかましい!」
俺はポポをぶん殴った。