王様は、五行の表をながめながら言いました。
「五行の方向に、臓の気を渡せない事が伝わっていくうちに、
病が深くなっていくという事か?」
岐伯はこたえて言いました。
「いいえ、王様。
五行は、バランスですので、
病が深くなるわけではありません。
では次に、王様に、
病が伝わって深くなっていくお話をいたしましょう。
王様は、『風は百病の長』という言葉を、
お聞きになったことはありますか?」
みなさんは、どうですか?
風は万病のもと、というのは聞いた事がありますね。
でも、それとはちょっと違うようです。
岐伯は続けて言いました。
「長とは、長い、です。
この言葉の意味は、
いろいろな病は、始まりから、風が関わっている、という事です。
今、ある人の体の皮膚に、
風と寒の邪が、たまたまひっかかって、くっつきました。
すると人は、首すじの毛が固くなって立ち上がり、
毛穴が閉じて、熱が出てきます。
このような時には、汗をかくと良くなるのですが、
体がしびれて思うように動けず、
腫れて痛いならば、
温めるシップ、針、お灸で治療をします。
それでも治らずにいると、
邪が肺に入りこんでしまい、出ていかなくなります。
この病を、肺痺、といい、
咳が、こみあげて出ます。」