　あんたらも男やったら、啖呵を切ったことがあるやろ。

　啖呵を切るにも仁義がいる。

　仁義がなければ、それは無理強いと同じや。

　我がままと言っても可。

　熱くならず、かと言って、冷めてもならず。

　あくまでも冷静に仁義を切るのが男の啖呵や。

　
　昨日、プクッチは見事な啖呵を切ったと思うで。

　相手は、とある精神障がい者支援センター。

　そこの利用者が助けてくれと言うてきたんや。

　男として、それは放っておけんやろ？

　啖呵切る時ってバックの力が必要だよねプッシュ。→

　細かい説明は省くけど。

　そこの利用者が、もう今の施設のやり方には着いて行けん、と言うて電話してきたんや。

　ほんだったら、うちの施設に通えばええやんか？と言うたんや。

　それでうちの施設を紹介して、担当の職員と話をさせたんやけど。

　他の施設と関わりのある人を勝手に支援は出来んやろ？

　そんなことしたら、うちの施設の沽券に関わるわ。

　当然、うちの施設の職員は、今いる施設を辞めてからなら支援出来ると言うたらしいわ。

　ある意味、当然や。
　
　支援するところが二つもあったら、本人も混乱するやろ？
　
　そこでプクッチはその人に、辞めるなら辞める、うちの施設に来るなら来るでハッキリせいやと言うたんや。

　その人にとって、一番の問題は住む場所なんや。

　住むところさえあれば、今すぐにでも今の施設を辞めると言うたんや。

　じゃあ、住むところ探しに行こかというて二人で賃貸アパートの物件を探しに行ったんや。

　

　しかし、連帯保証人の居ない人に住むところ貸すようなところは中々ないわ。

　連帯保証人とただの保証人とでは意味合いが違う。

　まあ、それはええとして、別にプクッチが保証人になったると言うたんやけど、不動産屋は身内じゃなないと駄目と言うところが多いんや。

　足を棒にしてやな、５軒６軒と回るんやけど、色よい返事をしてくれる不動産屋はない。

　そもそも、不動産屋というのは水曜休みのところが多いんや。

　行っても責任者が居ないと言われてたらい回しや。

　このクソ暑い中、不動産屋を回るのって辛いで。

　それでも、不屈の精神で不動産屋を回ったんや。

　もう日が暮れかけてきてやな、二人とも諦めかけてたんや。

　充分付き合ってもらったからその人はもうええと言うたんやけど、中途半端で物事を投げ出すわけにはイカンやろ。

　陽が登ってる限り、不動産屋を回ろうと言うてその人をプクッチは励ましたんや。

　そして、ここが最後の一軒という小さい不動産屋に入ったんや。

　そしたらやで？

　そこのオーナーが、自分が保証人になったるからこの上に住めばええと言うたんや。

　一瞬、耳を疑ったで。

　散々、門前払いを食らう形で彷徨してたのに、保証人も住むところも任せてくれやというオッサンが出てきたんや。

　

　そんな都合のええ話は何か裏にあるんじゃないかと疑うわな。

　でも、いろいろ聞いたんやけど不審なところはない。

　多少、家賃は高目に設定してあったけど、他は別に問題となることはない。

　おかしいなと思いつつも、その不動産屋で見積もりを出してもろたんや。

　保証人が要らんというから、その人は有頂天になってもうてな、一杯奢るから飲みに行こうと言うんや。

　何か心に引っかかってるんやけど、その人が喜んでるのに水を差すわけにはイカンやろ。

　次のＰ会まで禁酒すると言うたけど。

　
　飲んでもうた。

　いや、スマン。

　意志の弱い男やと思うてくれればええわ。

　１０００円飲み放題の店に行ってもうた。

　　　　　　　　　　　　　　　

　でやな。

　プクッチは何人かの人にメールで聞いたんや。

　精神障がい者やと言うてるのに保証人になると言うオッサンがおる、おかしくないか、これ？と一斉メールを送ったんや。

　でも返ってくる答えはほぼ一緒。

　そういう不動産屋もいるんとちゃうの？

　住むところを借りる場合、障がい者年金をもらってる人よりも生活保護を受けてる人のほうが契約がスムーズに行くんや。

　理由は、死んだ時に生活保護の場合、市が責任を持ってくれる。

　しかし、障がい者年金の場合、誰かがそのお金を負担せんとアカンのや。

　その差が障がい者年金をもらってる人は不利になるんや。

　振込みは「厚生年金」とされてるから、通帳を見ただけではそれがどんな年金かわからん。

　でも不動産屋からすると、どう見ても年金もらう歳じゃない人が年金受け取ってるってどういうことや？と追求してくるんや。

　そこで「精神障がい者年金です」と言うたら、ほとんどの不動産屋は眉を顰めるわ。

　
　ここにも「差別」があると言うてもええっ！

　ポン中も薬中も全部、精神障害者やからな。

　例え、どんなに人畜無害の人でも扱いはポン中、薬中の連中と一緒や。

　いつ、どんな事件を起こすかわからん、というのが不動産屋、代理保証人屋、オーナーの一貫した精神障がい者に対する思い込みや。

　正直、参るで、これは。

　でも、そのオッサンは、うちには他にも精神障がい者の人が住んでるから、という理由だけで保証人が要らんと言うたんや。

　どうやろね、歳は余裕で６０歳を超えてると思うで。

　そんなオッサンがこんな漢気を見せてくれるとは思わんからな。

　ついつい、ビールの杯を重ねてもうたで。

　８杯は飲んだな。

　１０００円飲み放題やし。

　でも、飲んでる途中に、その人が通ってる施設の職員から電話が入ったんや。

　その人は無視するつもりでおったけど、そこの施設を辞めるなら辞めるでしっかり言えや、と電話に出させたんや。

　そしたらやな、愚図愚図言うてるからな、ハッキリせん男やなと思うてたら、相手が今居る人と電話代われと言うたんや。

　
　そこでプクッチは電話代わってやな。

　まずは自己紹介や。

　当事者ビジネス会代表のプクッチや、と言うたんや。

　そしたらやな、その相手は自分は名乗らず、●●さんはそうした派手なことをやる会に憧れてるだけで本人のためにならん、と言うたんや。

　更には、医者もそう言うてる、と畳みかけてきたんや。

　名乗りも挙げずに自分の言いたいことだけ言うってどうやの？

　そこでプクッチは聞いたんや。

　あんた、誰なの？と。

　勿論、丁寧な言葉で聞いたで。

　一方的にまくしたてるからな、女性やし。

　するとその人は、施設の職員です、と言うただけで名乗らんのや。

　何や、こいつっ！と思いつつも、そこは冷静にならんとアカン。

　本人は今の環境に満足してないようですが、心のケアはされてるんですか？と聞いたんや。

　すると相手はヒステリックに、医者が言うてるんやから素人がどうこう抜かすな、という類のことを言うたんや。

　そこでプクッチは言うたで。

　こちらの区にも大きな生活支援センター、障害者支線センターがある。

　そちらの言うように医者が規則正しい生活を送ることが必要と言うのなら、当会が全力を挙げて●●さんをフォローすると言うたんや。

　ど素人が何を抜かすんや？という態度だったのが、その一言で言葉に詰まったんや。

　言うてることはこっちは正論、向こうは感情論やからね。

　そこで今度はプクッチが畳み掛ける番や。

　派手なことをやる会ってあんた、うちの会が何をやるか知ってるの？知らんでモノを言うのは失礼とちゃうんか？と反撃や。

　もう、こうなったらプクッチのペースや。

　本人の心のケアも、家族へのケアもなっとらんのじゃないのか？と言うたらやで？

　相手はやな。

　それまで、素人が何を言うてるんや？という態度だったんやけど、あなたと話してても意味がないと言い出したんや。

　当たり前じゃ。
　
　格が違いすぎるんじゃ。

　上から目線だったのが、それじゃ負けると思うて、本人に代われコールや。

　まあ、勝負はそこで着いたも一緒やから、確かにここで自分たちが話しても意味がない、大事なのは本人の意志や、と言うて、プクッチはその人に電話を代わったんや。

　そこで、その人は、明日辞表を出す、と言うて一件落着や。

　
　これぞっ！

　スマートな男の啖呵の切り方とちゃうの？

　相手の言い分を十分に聞きつつ、その言葉のほつれに食いつく。

　相手が尻尾を出したら、総攻撃や。

　グーッの根も出んほどに正論で押し通す。

　相手は最初の無礼もあって、まともに話も出来んくなるわ。

　まあ、ジョッギ片手に啖呵切るほうも切るほうやけど。

　　　　　　　　　　　　　　　

　いや、気持ち良かったで。

　水戸黄門が印籠を出す時の気分ってこんなんかな？と思うたで。

　その組織の中におると、自分の組織のデカさって意識せんけど、公の場に出るとその存在のデカさに気が付くことが出来る。

　相手の反応を見れば、それは一目瞭然や。

　まあ、そんなことが昨日はあって、一日潰して飲みに行ってもうた。

　気分がええから、それはそれで良しとしとこか。

　今日から筋トレ、頑張るわ。
　
　ほなな。

　
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