日曜日。

朝起きたら、家に誰もいなかった。

そりゃそうだ、起きたのは11時40分。これは朝とは言わない。

昨夜は2時まで、しっかりすぎる飲み会。そして昨日の仕事で、若干の筋肉痛。腕が上がらない。

こういう休日は、体に優しいバイクに乗らねば。

ということで、今日の相棒は、スーパーカブ50。

 

さて、前回のカブツーで気になった、ぐにゃぐにゃしたハンドリング。

これを改善しようと、フロントフェンダーを純正に戻した。

今日はそれの乗り味を確認するという意味もある。

 

走り出す。

うん、普通の乗り味。

フロントの剛性感が出た。車外品の時とは明らかに違う。やっぱりフェンダーのせいだった。

何なら、重心がやや前に移動したようにも思う。気のせいだと思うけど。

それぐらい安定感が出たということで。ヨシ。

 

近所の三島池へ。

イチョウもモミジもしっかり色づいている。

 

R365を北上。

エンジンは快調。50km/h巡行も可能。

それでも追い抜く方はどうぞ。これ以上は出さないよ、と。

姉川古戦場を過ぎて、小谷城へ。

滋賀県全般、歴史モノが多い地域。私も結構歴史好き。特に戦国と縄文。

 

高時川の桜並木。

ここはほぼ落葉している。雰囲気よく愛車が撮れたら、それでヨシ。

 

雨森集落の天川命神社。

大きなイチョウ。こうやって、多少葉を落としてくれた方が風情アップ。

 

古いスーパーカブの、遠心クラッチと並ぶ特徴、ボトムリンクサス。

フォークの支点とサスの支点とアクセルシャフトの3点が違う場所にあるという、現代主流のテレスコピックとは違う構造。スイングアームに近いと言ってもいいか。

社外品の安いフロントフェンダーは、デザインは軽快で良かったけど、精度が足りなかった。特にフォーク支点の。

純正フェンダーはプラスチック製なので、それ自体の強度が高い訳ではないが、それでもこれだけの違いが出る。

純正部品というのは、絶妙のバランスで成り立っていると、つくづく実感。

狭い集落内を走る時、サスペンションの安定は恩恵が大きい。

気を付けないといけないのは、ブレーキかけて停止する瞬間、フロントが持ち上がる動きが出ること。これは先にリアブレーキをかけて車体を路面に押し付けることで解決する。

普通のバイク以上に、カブは基本の操作を怠らないように。

 

木之本へ。

つるやパンの「サラダパン」は売り切れだった。

隣の富田酒造で1枚。

真横から撮ると、フロントフェンダーの下部をカットしたのが分かりやすい。

デザイン的に少しでも軽快感を出そうと、グラインダーですっぱり切ってやったのだ。

誰も気付かないだろうけど、自己は満足している。

 

余呉湖。今日の目的地である。

まだ14時半だが、秋らしい陽の傾き。

 

もう1枚。

余呉湖は琵琶湖とも違う、得も言われぬ落ち着いた雰囲気がある。

古い民家や田んぼの雰囲気が良く、ゆっくりと湖畔を走れば、心が穏やかになっていく。

 

北側の集落を過ぎ、半時計回りに走る。

細い道、細かいカーブもサスペンションは安定している。

カブ本来の走りが出せると、本当に楽しい。

心地良い散歩をしているという実感が湧く。

カブはいいなぁ。

と、そんな事を思っていた矢先。

 

ぎゅるん、とリアタイヤが滑った。

あんなに安定していたハンドリングが全く機能しない。

何だこれは、とバイクを停める。

 

…パンクだ。

絶好調だったカブなのに。

いい旅バイクになってきたと思っていたのに。

 

タイヤを確認する。

特に何か刺さっているようには見えない。

が、ぺちゃんこ。

パンクはパンクだ。

 

こういう時は、まず深呼吸。

トラブルにも慣れたもんだな、と思ったら、今月、小豆島でVTR250がパンクしたばかり。1ヶ月で2回ってあり得るのか。

まぁいい。(←良くないけど)

走れないならカブはここに置いて、明日回収に来よう。

のんきに写真など撮ってみるが、気持ちは絶望である。

 

さいわい、駅は近い。電車で帰ろう。

だが、近いと言っても、パンク現場は湖を半周走ったところ。

3kmほど歩くハメになった。

いいよいいよ、歩くのは嫌いじゃない。

今日は3連休の中日。

誰に迎えに来てもらおうか。相方は泊まりで女子会。アニさんは家族旅行。

まぁ地元の駅まで帰れば何とでもなるか。

 

バイクで走りに行って電車で帰るのはこれで3回目。

それ以外でも、ロードサービスやらレッカーやら、いろいろお世話になっている。

何だかなー。

私の旅はトラブル多め。

人生を示唆しているような気がしないでもない。

ウチのバイト氏、肉体労働を「筋トレと思ってやってる」と。

うーん、名ゼリフ。

私だって負けてはいられない。

 

今日の仕事は1人、畑の中の小屋の解体。

クルマが入れないので、壊した木材など、全て手で運搬することになる。

おかげで1日中歩きっぱなし。

 

1人黙々と、夕方までしっかり働いて、25000歩も歩いた。

くしくも先日の釈迦ヶ岳登山と同じ。

物を持って運ぶ分、体への負荷はあれ以上だろう。

 

さいわい、今、体に痛いところが無い。

「筋トレと思ってやる」

体を使う仕事は、悪くないと思っている。

 

今週1週間、毎日1万歩を超えた。

よく、1日1万歩で健康になるという。

でも健康すぎて、ちょっと(いやかなり)しんどい。

 

しかし今夜は、季節ごとに開催される同級生飲み会に誘われている。

歩いて、飲んで、しゃべって、ストレス無し。

健康のためと思って、飲む。(←あれ?)


大日岳は長居するような山頂ではなかった。

写真撮って、手を合わせたら、下山。

行きより帰りが怖い。登りでは気付かなかったが、崖の下が抜けていて、落ちたらかなりヤバいことになる。

 

でもまぁ、安全第一で難所は越えた。

もう大丈夫で心晴れ晴れ。釈迦も見ている。後ろから大日も。

 

深仙ノ宿まで戻ってきた。

山頂で一緒だった30代カップルが来ている。「速いですね」と。

さっき私が撮ってあげた、高価そうな一眼レフを首から下げていたので、「鎖のところは厳しいよ」とアドバイスを。カメラを大事に。

5人組もここにいた。今から昼食タイムのようだ。大人の遠足みたいで楽しそう。

 

ここからは別ルートの巻き道で元の登山道を目指す。

道が不明瞭だとガイドブックに書いてあったが、おなじみのピンクテープが巻いてある。

まぁ大丈夫でしょ。

 

心配することなく、分かりやすい道だった。

岩、土、笹に苔と、特徴は無いが、深い山中にいることを実感しながら淡々と歩く。

30分ほど行くと、主稜線が見えた。

 

元々の登山道に合流する。

登りでは気付かないぐらいだったが、しっかり分岐の道があった。

山頂だけを目指していると、無意識に視野が狭くなっているらしい。

「雲があああ」とか思ってた時だから余計に。

 

千丈平の池の氷は解けた。気温も上がった。

 

ここからは爽やかな帰り道。

すっかり晴れた。

行きの時、帰りの古田の森への登りはきついかも、と思っていたが、大日岳の最後を経験した後ではなんてことない。

 

古田の森で、最後の休憩。

ストレスを軽減するチョコなんてのを買ってきていた。山に来てしまえば、ストレスなんてゼロなのに。これは持って帰って家の者たちに。

 

釈迦と大日がすっきり見える。やっぱり朝とは視点が違う。

急がないと青空が、なんて思っていたけど、今となってはよく晴れている。

今登ってくる人もいる。存分に山頂を楽しんで欲しいと思う。

私にとって、あのタイミングの山頂は、よりドラマチックだったと思える。

 

いい道だ。

こういう道、ウチの高2が好きそうだな。そんなこと言ったら、大日岳の鎖場は中1が好きそうだ。

ここは誰が来ても文句無しに良い山。

 

晴れ、ほぼ無風。

気温は上がりすぎず、下り歩きにちょうどいい。

酸素が濃いような、体内が浄化されるような、そんな錯覚をする。

とにかく気持ちいい。

 

稜線歩きが終わる。

これで釈迦と大日が見えなくなる。

最後の別れ。ありがとうと言いたい。

 

森の道。

朝とは違う、緊張感のほどけた道。落ち葉が足に優しい。

 

登山口に帰ってきた。

本当にいい山だった。

全く趣の違う釈迦ヶ岳と大日岳をセットで歩くことで、より魅力が増した。

二百名山や三百名山はどれも間違いなくいい山だけど、昨日の倶留尊山より、釈迦ヶ岳は自分に合っていると思える。

そういう山に出会えるのは、とても嬉しいことだ。

 

後ろに見えてるあれは、古田の森の手前のピークだったか。

やっぱり実際行かないと分からないことは多く、それはとても大事なことだ。

写真などの情報だけでは分からない。特にネットなんかは半分、架空の世界ぐらいに思っている。

今の私の気持ちを伝えてくれる本やネット記事など、ありはしない。

自分で感じて、自分で書いて残す。それが楽しい。

 

さぁ帰ろう。

国道からここまで20kmだった。時速30kmなら45分。長い。

日常生活と隔絶された場所まで来てしまった。もちろん電波なんて飛んでいない。

帰りの温泉は無しで。

今夜もいつもの仲間にBBQに誘われている。家の者2人も連れて行く予定。なので急いで帰らないと。

「紅葉だウェ~イ」とか写真撮ってる場合じゃない。

登山も酒宴も、いつだって全力投球だ。

さあ、晴れた。

晴れたからには行かねば。

晴れたら行こうと思っていた大日岳に向かう。

 

登りにも見かけていた分岐。深仙ノ宿方面へ。

この道は大峯奥駈道と言う。吉野と熊野を結ぶ、修験道の修行の道である。

大峰山脈の縦走ルートにあたる。

私も八経ヶ岳や山上ヶ岳など、ピンポイントで登ったことはあるが、全部通したら壮大な冒険になるだろう。

 

とはいえ普通の登山道である。所々、修行っぽい箇所があるのだろうけど。

あっという間に下りてきてしまった。

山を下る時、何か貯金を使ってしまったような罪悪感があるのはなぜだろう。と、そんな事言ってる人は、明らかに修行が足りない。

 

都津門(とつもん)。

岩の真ん中に丸い穴が抜けていて、向こうの山が見える。写真じゃ分からないな。

ここが「第39靡(なびき)」となっている。さっきの釈迦ヶ岳山頂は40靡で、熊野方面へカウントダウンしていく。ちなみに吉野のスタートは75靡らしい。

靡の意味は知らないが、チェックポイントということでいいだろう。

それにしても、靡ってよく変換できたな。(←余談)

 

大日岳が見えた。

急峻で特徴的。見るだけならカッコいいピークなのだが。

 

深仙ノ宿(じんせんのしゅく)。難読。第38靡。

お堂と、避難小屋がある。

 

避難小屋の中をのぞいてみる。

修行者はここに泊まるのだろう。

 

ここから登り。

さっき見た感じだと、ピークを3つ越えるようだ。

2つ目とかもかなり急だが、巻き道があって助かる。

 

そして物々しい看板。

「岩場・鎖場、大変危険。修行以外の方はお勧めしません。修行は自己責任で」だって。

本当に危険と判断したら引き返すかも。何せ自己責任だから。

 

そしてとうとう現れた、ラスボス。

正面の岩場に鎖が掛けられている。うーむ。

 

と思いきや、

「一般登山者は迂回路を利用してください」だって。

おお、助かった。こっちは思いっきり一般登山者だ。

 

しかし迂回路ってこれか。かなり険しいぞ。

そりゃそうか、結局山頂に行くんだもんな。

 

当然のように鎖もある。3点確保で登って行く。ポールはザックに仕舞ってある。

だから険しいってば。

 

大日岳山頂。標高1568m。

立派な大日如来の像があるが、ここは展望が開けないので、木の陰で暗い。

しかし、さっきの釈迦ヶ岳でも思ったが、誰がどうやってここまでこの像を運んだんだろう。最後なんて、どうやっても崖なのに。

 

狭いので三脚を立てるスペースなど無い。自撮りは無しで。

奥に見えるのが釈迦ヶ岳。

感想が「ずいぶん登ったな」じゃなく、「結構下ったな」になるのは悔しいが、最後の登りはそれを補って余りある難易度。充分修行になる。

迂回路でこれなら、修行用正面突破コースはどんだけ~だ。

私は一般登山者なのでやらないけど。一般登山は安全第一で。

澄み切った青空。

笹の原に伸びる1本の道。

山の魅力を凝縮したような道。

ワクワクが止まらない。そして、ロマンティックが止まらない。(←言いたいだけ)

釈迦ヶ岳の稜線沿い、右手に尖った岩山がある。

あれは大日岳。

あちらへは危ない道らしい。晴れたら行こうかな。今日の天気だと行くことになるな。参ったな、危ないのにな。

 

3つ目のピークへ。

振り返ると登山口が見える。連なる山に沿って歩いてきたことがよく分かる。

それにしても山深い。文明を全く感じさせない。

 

昨日の曽爾高原と違い、人が誰もいない。

クルマ10台ほどの登山者は先に行っているだろうけど、そもそもこの山のスケールで、たかだか10組ほどの人はいないに等しい。

人がいない方が魅力的なのはなぜだろう。

絶景をひとり占めしている感覚があるからか。

そして、自分らしいと感じられるのもあるか。

みんなと同じ、というのが嫌いなんだろうな、きっと。

 

「古田の森」という場所。名とは違い、山だった。

 

しかし、これ以上ないほどの青空。サイコウノサンコウ(山行)

 

倒木を一刀両断、の写真ではない。

一瞬、陰になったのにびっくりしたのだ。

見れば、雲が出ている。

どうした急に。あれほど晴れていたのに。どこから湧いてきやがった。

 

千丈平に到着。

小さな池が凍っている。手元の気温計は3℃のまま。

 

千丈平は私の好きな苔ゾーン。

釈迦ヶ岳のピークが近い。

が、それより雲が気になる。釈迦の像は青空の元で見たい。

 

最後の登りに取り付く。

写真では分からないが、岩も木も凍っている。足の置き場に気を付けながら。

そして、曇っている。

あぁ、何をモタモタしていたんだ、朝の私は。昨日の曽爾高原で学んだばかりだろう。

時間が経てば、雲は増える。そして、山の天気は変わりやすい。

 

あと0.3km、5分。

ラストスパート。

20代くらいの若い5人組を追い抜く。負けられないんだ、山の天気に。

 

もうちょっと。

雲が、あああ。

 

釈迦ヶ岳山頂。標高1800m。

少し青空。チャーンス。

急いで三脚を立てて、セルフタイマーで記念撮影。

早くしないと、さっきの5人組が来る。

いい齢のおっさんが釈迦ポーズ取って、それを見られるのはちょっと恥ずい。(←大人になったもんだ)

 

そして山頂は雲に覆われた。

勝った。と言ってもいい。

先客は30代くらいのカップル。そして5人組が到着して、山頂は私を含めて3組。

「あんなに晴れてたのに」と言いながら、みんなで晴れを待つ。

普通に1枚撮ってもらった。

 

山頂は360°の展望。

北側の展望。雲の下に八経ヶ岳があるはず。右奥は大台ケ原。

 

軽く昼食。

パンがパンパンだ。(←言いたいだけ)

 

そうやってしばらく待っていると、晴れてきた。嬉しい。

こちらは南東の展望。太平洋が光っている。

 

何枚か撮っていた釈迦像を撮り直す。

やっぱり青空が似合う。

雲というのは、絶対に同じ瞬間が無い。

だから、真っ青の空より、雲があった方が、特別な一瞬という感じがする。

 

背中からも。

晴れ待ちのおかげで、山頂を満喫である。