私は「錆びたステンレス鋼を成分分析に出せば錆びやすいSUSであるか判ります。これはクロムとニッケルの含有量が少ないSUS201または202でしょう。価格はSUS304の半分です。」と答えました。
ステンレスの内で良く知られている種類に「SUS304」がありますが、SUSの種類は多いのです。今回はSUS201、SUS202、SUS304について説明します。
1.ステンレス鋼とは?
ステンレス鋼というのは、鉄にクロムを加えた合金鋼で、さらにニッケル・モリブデン・銅などを特殊な元素を加え、耐食性・耐熱性・加工性その他の性質を向上させたものです。
大きく分けて下記の3種類になります。
① クロムを13%加えた13クロム鋼 例:SUS403, SUS404
② クロムを18%加えた18クロム鋼 例:SUS201, SUS202 ③ ③ クロム18%とニッケルを8%加えた18-8クロム・ニッケル鋼 例:SUS304
クロム系ステンレス鋼は、鉄と同じ様に磁石につき、クロム・ニッケル系ステンレス鋼は磁石につかないとされています。
一般的には、クロムを約11%以上含有させた鋼をステンレスと言います。
ステンレスとは「さびにくい鋼」ということで、「さびない鋼」ではありません。
クロム(Cr)やモリブデン(Mo)やニッケル(Ni)の多いものほど錆にくいのです。
2.価格
SUSは鉄にクロム(Cr)、モリブデン(Mo)、ニッケル(Ni)などを加えたものですが、 これは価格が高いので、高いものを多く加えた耐食性の高いものほど価格も高くなります。
一般的なSUS304の価格はSUS201や202の2倍程度の価格です。
3.ステンレス鋼の種類
1)性質と用途
JIS規格種類記号 |
性質と用途など |
SUS 201 |
ニッケルの割合を落としたもの。高強度なので鉄道車両等に使用されている。黒く変色して錆びることがある。 価格は安く303,304の約半分程度。 |
SUS 202 |
ニッケルの割合を落としたもの。黒く変色して錆びることがある。 調理器具等に使用されているので注意が必要。 価格は安く303,304の約半分程度。 |
SUS 304 |
ステンレス鋼・耐熱鋼の代表として家庭用品や工業用品に幅広く使用されている。 |
2)代表的な化学成分
ステンレス材料例 |
||
記号 |
種類 |
代表的な化学成分 |
SUS201 |
オーステナイト系 |
Ni (3.5~5.5%)、Cr (16~18%)、Mn (5.5~7%)、N(0.25%以下) |
SUS202 |
オーステナイト系 |
Ni (4~6%)、Cr (17~19%)、Mn (7.5~10%)、N(0.25%以下) |
SUS304 |
オーステナイト系 |
Ni (8~10.5%)、Cr (18~20%) |
4.腐食の種類
ステンレスは耐食性に優れた鋼ですが、その使用する条件や環境によって錆びることがあります。
黒く変色したり、虫食い状態になって腐食穴のあるSUS鋼板を見たことがあると思います。
1)粒界腐食
特に溶接を行ったときは溶融部のすぐそばにこの温度範囲の部分を生じ、粒界腐食が起こりやすくなります。
2)応力腐食
引張り応力を受けている材料が特殊な腐食環境にある時に起こる腐食です。
同じ応力でも圧縮応力は腐食を起こす原因とはならないので、例えば曲げられた管の外側の、引張り応力を受けている部分にだけ割れや腐食が発生します。
3)点食(孔食)
ステンレスの場合もっとも一般的にみられるのが、この点食です。
点食防止策としては、表面を清潔にしてCl ̄が存在しないようにする、液のpHを高める、液を流動させる、あるいはSUS316などのMoを含有した鋼種を用いるなどの方法があります。
4)大気環境中の腐食
とくに13Cr鋼ではときどき発錆がみられます。
これらの原因の一つとしては、‘ガス’の影響があります。都市、とくに工業地帯では亜硫酸ガスが発錆の原因となり、塩化水素ガスや硫酸のガスが含まれている時はさらに影響は大きくなります。
しかし、これらのガスも湿気の少ないところでは害は少ないので、材料の表面に付着して湿気をよぶ原因になる塵埃や汚れの存在は、重要な因子になります。従って表面は常に清潔に保つ必要があります。
5)食塩(NaCl)による腐食
ステンレスの実際の使用上には、汗や水の中に自然に溶けている塩分や食品、また海岸地方では海水の飛沫により塩分が付着する可能性が高く、錆が生じ易いのです。
塩分に対する耐食性はCrやMo含有量の高いものほど良いと言えます。
5.SUSの種類の検査方法
1)成分分析
一番信頼できるのは試験分析センターで成分分析をした結果です。
2)ミルシート
ミルシートとは、製鉄所で圧延して製造したときの「品質保証書」のことで、必ずこれがあります。しかし、その「品質保証書」が購入する鋼材のものと言えるかどうかは判りません。
3)塗布試薬