読書感想文165 五木寛之 蒼ざめた馬を見よ | 恥辱とカタルシス

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作家志望、渋谷東子と申します。
よろしくお願いします。

はいー無事生還です!

 

こんにちは、渋谷です。

 

 

 

 

キャンプから帰ってきましたよー。暑かった!めちゃ疲れた!

 

なんせ海だったのでねー。潮風ってあたってるだけで疲れますよね。釣りしたり。泳いだり。

 

波がすごい中での海でしたので気を遣いました。釣りもさー、夫と子供が気が済めばいいやぐらいで、絶対魚なんか釣れるわけないってタカをくくってたのよね。だって釣れても困るじゃん。さばいて料理するのは私なんだから。サビキだし、まあ大丈夫だろと思っていたのですが!

 

堤防には気のいい地元のおっちゃんが陣取っておりまして、親切にあれこれ教えてくれるのよ。エサの小エビもくれるしさ。おかげで釣れる釣れる。10匹近く釣れたんじゃないかな。キャンプ用のちっこい包丁とまな板で泣く泣く魚をさばきましたよー。全部いっぺんにムニエルにした。

 

グレはやっぱり美味しくなかったんですが(こっちではグレっていうんだけどあの魚は全国的には何って言うんだろう。わからん)、地元のおっちゃんすら名前を知らない赤い「名もなき魚」が結構うまかった。あとは焚火してマシュマロ焼いて。中秋の名月眺めて。栗焼酎飲んで。

 

スノーピークのキャンプ場はやっぱり設備が良くていいですね。風呂場にデカいゴキがいたけどね。まあそれも思い出ってことで。さて本を読んだ話。

 

古典を読もう近代編、五木寛之さんの直木賞受賞作、「蒼ざめた馬を見よ」を読んでみたよ!

 

やっぱり一時代を築いた人っていうのはすごいねえ。今読んでも手に汗握る、本当に面白い作品でした!

 

 

 

 

この「蒼ざめた馬を見よ」は短編集で

 

蒼ざめた馬を見よ

赤い広場の女

バルカンの星の下に

弔いのバラード

天使の墓場

 

が収録されています。

 

この短編集を語る時に、まずは時代背景の確認が大事かなーと思います。表題作の「蒼ざめた馬を見よ」は昭和41年が初出。半世紀以上昔ですねー。戦後20年。戦争を知らない子供たちがいる一方、青年だったり世の中を動かす中年の人たちは戦争を色濃く覚えている世代です。で、五木さんという人も生まれてすぐに朝鮮に渡り、戦後引き揚げてきた戦争経験者。学生時代にはロシア文学を学ばれています。

 

それで「蒼ざめた馬を見よ」です。「蒼ざめた馬」っていうのはなんのことかと言いますと、これは恐らく戦争のことを指すのかなと思います。蒼ざめた馬に跨った人たちは冥府に連れて行かれてしまいます。怖い怖い蒼い馬。この死の影を、しっかりと見よ、というのがこの短編に一貫して貫かれたテーマなのだろうと私は感じました。

 

なんせ、戦争から20年が経って、世の中は高度経済成長で浮かれちゃっているのですから。そんな時に、新聞記者の鷹野という青年にある案件が持ち掛けられます。持ち掛けてきたのは社の論説主幹と外信部長。あるロシア文学の翻訳者の死。その翻訳者が残した手紙には、「ミハイロフスキイというソ連の作家が極秘で国外での出版を望んでいる原稿がある」こと、「それはソ連政府に都合の悪い作品であるから当局に狙われる可能性がある」こと、「その作品は人間の真実を描き出した傑作であるから、必ず世に明らかにせねばならない」ことがしたためられていたのです。

 

そんなわけで会社を辞めて、ジャーナリストのプライドをかけてレニングラードに飛ぶ鷹野くん。行った先にはオリガという美女とか、政治的な策略とかが鷹野くんを待ち受けています。さあ、どうなる鷹野くん……!

 

 

 

 

というお話なのですが。

 

うまいのよー。まるでスパイ映画のような活躍ののち、鷹野くんは目的を遂げ日本に帰国することになります。「蒼ざめた馬を見よ」と題されたこのミハイロフスキイの長編は世界中で大ヒットします。ああ、良かった良かった。読者は一安心。でも、胸を撫で下ろしたところで爆弾が投下されるのです。どかーん。

 

鷹野くんはいっちばん最初っから騙されていたのですね。誰に騙されていたのか、どういう策略が働いていたのかはここには書きません。

 

しかしまあよくこうまで綺麗に何もかもがひっくり返るなあという衝撃。うまい……この五木さんという人はうまい。まったく違和感も置いてけぼり感もなく、こんなに何もかもをひっくり返した作品は私史上初めてかも知れません。ゆっちゃなんですが、最近の小綺麗なミステリーなんか、これに比べりゃ屁みたいなもんやで……。

 

 

 

他の短編も全部すごかった。特に最後の「天使の墓場」は超衝撃作。これ、映画にすれば良かったのに。五木さんの作品は多数映画化されているようですが、この「天使の墓場」は映像化されてないらしい。

 

絶対面白い作品になったはずなのになー。時代的にもう現代の話として再現するのは不可能ですから(今の技術があればトリックとして成立しない)、昭和のうちにやっとけばよかったのにね。すごい、すごい面白かった。ミステリーとしても、サスペンスとしても、人間ドラマとしても面白かった。これが短編なんて、ほんと信じられん。

 

この短編集を通して思いましたが、すべての作品がとても短編とは思えない情報量を持ってるんですよね。話の展開に無駄がなくてスピーディー。でも必要な状況や登場人物の心情なんかはしっかり伝わってくる。これが才能か。すごいですねー。五木寛之さん、すごい人ですねー。

 

 

 

 

というわけで他のも読む。とりあえず次は「蜜蜂と遠雷」借りてきてみたんだけどねー。映画が公開されるみたいだし。面白いのかなーと思って借りてきてはみたけど、この五木さんの後に読むのか……。ハードル上がりますな。

 

しかもあれめっちゃ長いし……。つまんねえなと思ってもなかなか読み終わりそうにないんでねえ。どうしよう。ちょっと腰が引けちゃいますな。

 

まあぼちぼちいきたいと思います。ではでは。

 

またっ!