読書感想文137 山田詠美 ひざまずいて足をお舐め | 恥辱とカタルシス

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作家志望、渋谷東子と申します。
よろしくお願いします。

はいはいー推敲推敲ー。

 

こんばんは、渋谷です。

 

 

さあ小説現代の締め切りがもうすぐですよ。推敲をしています。が、なんか知らんけど子がイライラモードよ。暑すぎて日中外に出せないもので、家にいる間はママにぴったり。とても子供に読ませれるような内容じゃないので、私はノートパソコンを手に子供から覗かれない角度に逃げ回る。結果、お互いイライラ。

 

普段はとってもいい関係なんですけどねー。なんか言葉の端々が刺々しくなっていきます。今日は、日曜に買った新しい素敵なお洋服を着せてふたりで図書館に行ったんですが、行ってる間は仲良しなのよ。でも寝る準備とか、ルーティンをする段になるとお互いイライラ。夫は遠巻きに息を飲んで行方を見守っています。

 

多分、私が怖いんだろうなあ。だって夫がすごく私に気を遣うもん。申し訳ないね。これ送っちゃったらだいぶ気分も落ち着くからね。と、いうわけで、明日中には推敲を終えて送るつもり。締め切りは一応、31日の夜なんですけどね。ウェブ応募なので、早めに片を付けないと「あれ?送れない。なんでなんで?ああ、そんなこと言ってるうちに締め切りの時間が!」なんてことになったら嫌だもん。

 

今回の話は、私の中にある「無頼さ」を全面に押し出したお話になっています。無頼さ、それはナルシシズムとも言い換えることができるかも知れません。私、掘り下げるとあまり人を信用していない人間なのかなと自分で思う瞬間があるんです。それはどんな人にもある感情なのかも知れませんが。自分の中にものすごく色濃くあるんですね。「結局、自分のケツは自分にしか拭けんやろ」という感覚ですかね。「死ぬときは一人や」とも言えるかも知れませんね。

 

そんな主人公に、自分以外のものに頼るしかない状況を押し付けてみた。何となく綺麗な恋愛とか、身内への憐憫とか、ちょびっとのミステリーとかも散りばめてみましたが。

 

まあ、今の私にできる精一杯を作り上げます。明日中に。子よ、明日一日我慢してくれ。そしたら灼熱の公園にでも付き合う。水筒もって。母に明日一日の時間をくれ!

 

と、いうわけで、そんなことをしながら読んでいた山田詠美さん。「ひざまずいて足をお舐め」。1988年の作品です。……これは。予想通りの衝撃作でしたわ ……。

 

 

 

この後も推敲に時間を使いたいので、ちょっと簡単に。

 

この作品の主人公は忍さんというSM嬢。これはもうずっぷりの女王様をなさってる方です。そして、もうひとりの主人公がちかちゃんという女の子。ふたりはストリップ小屋で出会います。仲良くなり、やがて一緒にSMクラブで働き始めるふたり。ちかちゃんと忍さんにはかなりな年齢の開きがあり、ちかちゃんは出会った当初女子大生、忍さんは20代後半ぐらいの設定でしょうか。

 

このふたりが、飲みながらうだうだと話している内容がほとんどを占めている作品です。お互いの考え、経験、憤りなどを披露しあうというのがこのお話のスタイル。しかも会話文には「」がなく、ずっと改行なく文章が書き連ねられていきます。……あのね、読みづらい。酔っ払いの戯言を文章化してる状態だから。しかも句点が多すぎて文が切れすぎててほんとしんどい。でもこの戯言が、素晴らしく人間の本質を突いた会話なわけですよ。今の時代に置き換えても色あせない。だから本質を描いた作品って、時を超えて読者を感動させることができるんだなあ……。

 

 

 

忍さんとちかちゃんが働いているのはSMクラブなので、当然「女王様にいじめて頂きたい奴隷たち」がやって来るところなんですね。その人たちは、昼間は大会社で社長をしている偉い手さんだったりします。でも、一皮剥けば女王様に身も心も投げ出しちゃう奴隷になる。この「奴隷になる」っていうことにはただ身体の自由を奪われて蔑まれるってだけでなく、女王様に精神の全てもお任せすることなんですね。鎧が取っ払われちゃう。こういう場を求める人がいて、それを提供する風俗嬢がいる。そこに職業の貴賤はあるのか。SMしたがるような人間は変態だと切り捨てることは正しいのか。

 

なんかね、人間の根っこを掘り下げるようなお話なわけです。自分は綺麗な場所にいて、そこから他人を蔑みたい集団心理を揶揄してたりね。人を愛するということについても深く掘り下げている。まあ、これは私にはちょっと理解できなかったところなのよ。ちかちゃんも忍さんも、「男と愛し合うこと」「メイクラブすること」にすごく人生の重点を置いていて、大切なことだと思ってるんです。でもなあ、私はそこにあんまり人生の比重を置いてない。彼女たちは男とセックスすることで、その人と精神的に一体になれるとまで思ってる節がある。……うーん、恋愛体質。日常はそう言うのとは全然違う場所で過ぎていく。セックスなんかコミュニケーションの一種だよ。そう思う私は、ドライな人間なのかも知れませんが。

 

 

 

ちかちゃんは、話の中で小説の新人賞を受賞し、作家として今までの人生を文章に描き出していきます。これは、ほぼ山田さんの実体験です。だから忍さんのモデルになった人もいるんだろうなあ。

 

作中でもちかちゃん、忍さんをモデルに作品を書いて怒られてるから。ちかちゃんは大きな文学賞を受賞し、だれもが一目置く作家さんになりました。でもふたりは、10年以上の付き合いになったね、なんて言いながらやっぱり飲んでいる。とても濃密な関係で、よく似たふたりは自分たちが正しいと思う人生を語り合い、周りから見ると風変わりなその生き方を貫いていくのでしょう。

 

……というお話でね、とにかく内容が濃い。今の社会にも通じる、多様性を認める認めないとか、画一的な学校教育の弊害とか、差別問題とか、そういうことをすでに一刀両断している。これはすごい衝撃作だと思います。面白かった。でも、でも。

 

あとがきで山田さんが書いておられるのですが、「私は私の味方である人とだけ仲よくしたい。私を嫌う人とは関わり合いたくない」……そういうスタンスが如実に表れている作品なのかなと思います。要は、人を選ぶ。私は衝撃は受けたけど、みっちりこの世界に入りこむことはできないや。だってこの密度と濃度で人と関わり合いになることで人生を展開させていこうっていう、そういう感覚が私にはないから。ナルシストだから。死ぬときは一人で死にたいから。

 

でも、読んで良かった作品でした。というわけで、この後も多種多様にいろんな作品を読んでいきます。

 

まずは投稿を済ませなければ!というわけで頑張る。

 

おやすみなさいー!