読書感想文136 窪美澄 クラウドクラスターを愛する方法 | 恥辱とカタルシス

恥辱とカタルシス

作家志望、渋谷東子と申します。
よろしくお願いします。

あー書き終わった!

 

こんにちは、渋谷です。

 

 

 

今書いてるのが書き終わったよー!原稿用紙で454枚!どうなることかと思いましたが、何とかなるもんですね。

 

子供が夏休みに入ったのでもう全然書けんのかと思いきや、小学生は勝手に行動してくれるんですねー。宿題とかは見てやらんといかんけど。勝手に公園行くしYouTube見てるし。幼稚園児はべったりだったけど、やっぱり成長してるんですね。おかげさまで、フルスピードで書き上げることができました。

 

ここから推敲に入って、ラストをどうするかもう一回考え直したいと思います。結構、尻切れトンボで終わらせたんです。わざと。最終的にどうなるかは、読者に想像してもらいましょう、というアレですね。

 

でも全体を見直して、いるなら書き足すし。無駄なとこはバッサリ落としていきたいですしねー。7月いっぱいはこれにかかりっきりにはなりそう。でも、間に合わないってことはなくなりました。ああ、一安心。

 

延々聴いていたBUCK-TICKのNew Worldもそろそろ聴き収めか。私の初夏から梅雨はこの曲一色でした。あっちゃん、モデルになってくれるは歌ってくれるは散々ありがとう!

 

というわけで、合間に読んだ本の話。窪美澄さんの「クラウドクラスターを愛する方法」です。

 

この作品は窪さんの3冊目の単行本です。短編が2編収録されていて、

 

クラウドクラスターを愛する方法

キャッチアンドリリース

 

が収録作となっております。

 

 

 

クラウドクラスターっていうのは、積乱雲の大きな塊なんだって。そのクラウドクラスターを愛する方法って言うのは、要は「人生の苦難を愛する方法」と読み替えることができます。

 

主人公は売れないイラストレーターの紗登子ちゃん。アラサーです。たった今同棲中の彼氏と喧嘩したとこ。彼氏は自分の部屋だっていうのに出ていってしまいました。

 

生い立ちは複雑で、威圧的な父方の伯母に押さえつけられて成長しました。お母さんはそんな伯母さんと折り合いが悪く、家を出ちゃって13歳も年下の男の人と再婚しちゃう。紗登子ちゃんは売れないイラストレーターなので、生活は常にかつかつです。でも、家賃は彼氏の向井くんが払ってくれるんですよ。向井くんは一流企業勤務。でも家事を全然しない向井くんに反発を覚える紗登子ちゃんは、「このままなし崩しに結婚とか嫌だし―」「私だって今から売れっ子になってここから出ていくことだってあり得るしー」とか言って、なんだかイライラを募らせています。

 

うん……アレやね。男女雇用機会均等法からの男女同権からの家事バランスからの家庭内マウンティングやね。よく聞く話よね最近。「稼ぐ方が偉いのか」「夫だって家事を手伝うべきじゃないか」「ごみ捨てってのはごみを運ぶだけを指すんじゃない!ごみ箱から集めて袋を取り換えるまでやってはじめてゴミ捨てって言えるんじゃー!」とかね。

 

まあ、いろんな意見があるんでしょうが、私なんか最初っから夫に養ってもらってなんぼだと思っております。結婚当初は張り切って仕事してましたが、いやんなっちゃった。家にいることや家事が嫌いな性格ではないので、家庭はパラダイスです。「夫が浮気したらどーすんだこの専業主婦め」という意見も世の中にはあるようですが、夫は浮気なんかしません。想像できないことは現実には起こりません。だから夫の会社も潰れないのです。

 

なので、紗登子ちゃんもずーずーしく養ってもらえばよかったのにね。それじゃ自分が自分でなくなっちゃう感覚があるのでしょう。生きづらいですね。甘え下手なのかな。家族という点で恵まれず、自分の価値を信じきれない紗登子ちゃんが、自分の居場所を見つけるまでのお話です。自分勝手だと思っていたお母さんの、姉妹であるかしましい伯母さんたちに自分が着ている殻の存在を教えられます。

 

それに気づいた紗登子ちゃんが、この先どうなっていくのかは全く書かれていません。自分で考えてね、というアレです。テーマに共感できない人には「……?」な結末かも知れませんね。ちょっと窪さんの作品ぽくないラストかも。

 

 

 

「キャッチアンドリリース」は、11歳の少年少女の空虚な心の変遷を書いたお話。こちらの登場人物も両親が離婚をしています。窪さんの作品、「うまくいってない父母」がよく出てきますね。それによって心が歪んでしまった子供が描かれることが多いですが、彼らは「まだ」歪んでない子供たち。葛藤はたんまり抱えています。これからまっすぐに育ってほしいものですが、不穏な空気が充満してるのでどうでしょうねえ。少し屈折した大人になっていくんでしょうか。

 

窪さんの作品のどこに私が惹かれるか、と言いますと、こういうところなんですよ。「心に不穏な空気を充満させ、自分でそれを自覚してない、社会的には一生懸命頑張ってるつもりの弱者」がバーン!て大事件を起こす。その弱者ができるまでの過程を見せられたような短編でした。

 

良く思うのよ。時々、人生の日陰なんか見たこともありません!みたいな人に会うじゃないですか。分かりやすく言えば、松岡修造とか。小泉進次郎とか。

 

もちろんそういう人だって見えないところで大変な苦労をなさっているのかも知れませんが、表からは見えない。家柄が良くて両親がそろっててお金持ちで容姿が良くて本人の能力も高い。そういう人を見ると、ものすごく雲の上の人だなって思うんですね。妬んだりなんかはしません。その人はきっと前世でいいことをしたのです。そう思うことにしています。

 

でも、不可抗力でひねくれさせられ、その上で一生懸命生きて行こうとする人たちの方が、自分に近いんですよね。そういう登場人物って、共感できるんです。不幸自慢をする人や、あきらめて投げ出しちゃってる人とかは微妙だけれど。そこから這い出ようともがいている人が、えらいことに巻き込まれたりしたらもう目を離せない。そういう感じが窪さんの作品にはあるのかなと思います。多分、私と感覚が近いんだろな。

 

 

 

というわけで窪美澄さんでしたが、この作品は私の中では「面白かった!」とは大きな声では言えないかな。微妙、とも言いませんが、多分読み返すことはないです。

 

まあ、そんなこともありますわね。次は衝撃を求め、山田詠美さん。うう、楽しみです。

 

それでは、また!