【登記攻略メモ004】 破産と根抵当権の元本確定の効力の消滅



今回は,破産と根抵当権の元本確定の効力についてみていきたいと思います。

※一部,根抵当権登記の実務という本に基づいた見解とさせていただきます。



まず,元本確定事由の一つとして,債務者又は設定者の破産手続開始の決定(民法398条の201項第4号)があります。設定者等にはさんがあれば,根抵当権の元本は確定するということです。



しかし,破産手続開始の決定の効力が消滅したときは,元本は確定しなかったことになります(同条2項本文)。ただし,これにより確定したとして,根抵当権又はこれを目的とする権利を取得した者があるときは,破産手続開始決定の効力が消滅しても,元本は確定します(同条2項ただし書)。



では,この『破産手続開始の決定の効力の消滅』とは,どのようなものか。


この点については,次の2点に分けて考える必要があります。



① 破産手続き開始決定の取消し

② 破産廃止




≪① 破産手続き開始決定の取消し≫

この取消しは,破産手続開始の申し立てに対する不服申立により,その開始決定が取り消されることであり,この取消しがあると,破産の効果が遡及的に消滅します。そして,この取消し決定が確定すると,破産手続は終了します。これにより,破産申立をした債務者又は設定者は,破産手続開始決定を受けなかったことになります。


よって,この取消しについては,民法398条の202項の『破産手続開始の決定の効力の消滅』に含まれるとされ,取消しの場合は,元本は確定しないということになります。





≪② 破産廃止≫

破産廃止には,同時廃止,異時廃止,同意廃止とがあります。いずれにおいても,破産廃止が確定することにより,破産手続が将来に向かって中止されるだけであり,①のように遡及的に消滅するということにはなりません。


よって,破産廃止については,民法398条の202項の『破産手続開始の決定の効力の消滅』に含まれないとされ,破産廃止の場合は,元本は確定した状態ということになります。


なお,同意廃止の場合は,民法398条の202項の『破産手続開始の決定の効力の消滅』に含まれるとされ,この場合は,元本は確定しないと解されているようです。






《登記攻略メモ》

□ 根抵当権の設定者又は債務者の破産手続開始の決定があれば,元本は確定する。


□ しかし,破産手続開始決定の効力が消滅したときは,原則として,元本は確定しなかったことになる(2項本文)。


□ 破産手続開始決定の効力が消滅したとしても,元本が確定したとして,債権の譲渡等により根抵当権を取得した者等があるときは,元本は確定する。(上記の例外 2項ただし書)


□ 破産開始決定の取消しがあれば,元本は確定しない。ただし,2項ただし書。


□ 破産廃止のときは,元本は確定したまま。ただし,同意廃止。