【登記攻略メモ3-1】利害関係人の2つの意味 転抵当権者の承諾の要否 《前編》

今回は,不動産登記法における利害関係人の2つの意味というテーマで具体的事例もまじえて見ていきたいと思います。


まず一つは,①「登記上の利害関係人」という意味。

もう一つは,②「実体法上の利害関係人」という意味です。

②については,正しい表現ではないのかもしれませんが,この点についても後述します。


①については,不動産登記法66条,68条に規定されている,登記上の利害関係を有する第三者のことです。つまり,変更・更正の登記,登記の抹消において,登記の形式上から一般的に,これらの登記をすることによって損害を受けるおそれがあるものです。ここでいう一般的とは,実質的,具体的に損害が発生するか否かに関わらずということです。


②については,民法等の実体法において,利害関係人とされているものであり,登記原因の効力発生要件とされているものです。例えば,順位変更(民法374条)や,極度額の変更(民法398条の5)に規定されている利害関係を有する者のことです。


これは,不動産登記法上では,第三者の許可,同意又は承諾を(証する情報)として,不動産登記令715号ハに規定されているものの範ちゅうに入るものです。


なお,この第三者の許可,同意又は承諾については,先にも述べたとおり,実体法上(登記原因)の効力要件とされているものであり,今回は,この許可,同意又は承諾のうち,「利害関係人」という言葉に着目してみました。登記上の利害関係人と比較するためです。

民法上の文言として,『利害関係人』と直接,示されているものはありません。一番近いものとしては,上記で挙げた,順位変更や,極度額の変更があります。ここでは,『利害関係を有する者』と示されています。

このほか,利害関係を有する者と規定していないものでも,実体法上,利害関係があるとして,その者の承諾等を効力要件としているものがあります。

それは,根抵当権の譲渡における設定者の承諾や,根抵当権の分割譲渡における,その根抵当権を目的とする権利を有する第三者の承諾等です。これらも,②の第三者の許可,同意又は承諾の範ちゅうです。


つまり,②の利害関係人とは,登記法上では,登記原因についてその者の承諾等が必要とされる第三者ということになります。


今回はここまでです。

今回は,登記上,利害関係人という点において,2つの意味がある点,及び②の利害関係人は,登記原因についてその者の承諾等が必要とされる第三者のことである点を理解して頂けたとものとして,次回は,転抵当権者が利害関係人に該当するか否かが問題となる2つの事例をもとに,この転抵当権者が①と②のどちらに規定された利害関係人に該当することになるのかを見ていきたいと思います。

※実体法上の承諾を要する第三者を,登記上,利害関係人と表現すること自体間違っているのかもしれませんが,この二つを混同してしまう方が,あるのではないかと思い,勝手に考察を進めている点はご了承ください。