前回は,平成24年司法書士試験の出題予想として,次の論点が出題される可能性があるのではないかと書きました。

『相続の登記』

『遺言に基づく登記』

『抵当権と抵当権者又は債務者の相続の関する登記』

このうち,「遺贈に関する登記」について,見ていきます。

まず,遺言が平成24年司法書士試験に出題されると考えた根拠を見てみます。

司法書士試験の出題論点を周期的な観点から見てみると,遺言に関する論点が出題された,司法書士試験の年度は,次のようになっています。

平成元年, 平成11年, 平成15年, 平成になってから,この3年度にわたって出題されています。

また,平成20年度から平成22年までは,実務色の強い出題であったところ,平成23年には,相続財産管理人という,実務においては,決してメジャーではない論点が出題されました。この相続人不存在については,平成2年の司法書士試験で出題されています。このような点から,平成24年の司法書士試験においては,過去に出題された論点が平成23年度に続いて出題される可能性が高いのではないかと考えることができます。つまり,平成2年度に出題された論点が,平成23年に出題されたことから,平成初期の頃の論点が出題されるのではないかということです。

このように解して,平成初期の論点から,遺言に基づく登記が浮かび上がってくるのですが。では,なぜ,平成初期に出題された論点のうち,遺言に基づく登記が,平成24年司法書士試験において出題される可能性が高いと考えたのか。

それは,平成23年になって,遺言に関して,最高裁の判例(最判平23.2.22が出たからです。そして,この最高裁判例については,登記研究等の実務機関誌において,何度か取り上げられたからです。この最高裁は,「相続させる」旨の遺言について,遺言者より先に推定相続人である受遺者が死亡した場合の扱いについてです。この最高裁が出るまでは,左記のような遺言についての,下級審では,判断が分かれており,登記実務上も混乱をきたすようになっていたという背景がありました。その中で出された最高裁の判断ですので,とても重要な判例ということになります。

この最高裁については,後日,書いていきたいと思います。

上記最高裁の内容そのものの出題ではないと思いますが,

このように遺言について話題となった平成23年を踏まえると,平成24年司法書士試験の出題として,遺言に基づく登記が予想されます。

では,遺言に基づく登記が出題されるとして,どのような内容か,さらに掘り下げてみると,過去に出題されたものから見て,まだ出題さ触れていない点として,『遺言の文言と登記原因』という論点が浮かび上がってきます。

『遺言の文言と登記原因』とは,「Aに,甲土地を相続させる。」とした場合,Aへの移転の登記の原因は何になるかという問題です。Aが相続人であれば,登記原因は相続ですが,相続人以外のものであれば,登記原因は遺贈です。この違いは,単独申請となるのか,共同申請となるのかといった違いから,添付書類等に違いが出てきます。とても重要な論点です。

司法書士試験では,過去に出た論点の中で,まったく同じものは出題さません。その論点でまだ出題されていない部分や,形を変えて出題をしています。遺言については,遺言の文言から登記原因を直接問うような出題は,記述式において,まだされていません。このことから,この点が出題されるのではないかと予想しています。