【登記攻略メモ001】利害関係人と仮処分に抵触する登記



乙区1番で抵当権設定の登記がされた後,所有権移転の仮登記がされ,その後,1番抵当権者が差押えの登記をした場合において,当該仮登記の本登記をするときは,仮登記前にされた抵当権者である差押債権者は利害関係人となるか。



答えは,『利害関係人となる。』です。





では,これはどうでしょうか。



乙区1番で抵当権設定の登記がされた後,所有権移転登記請求権を保全債権とする仮処分の登記がされ,その後,1番抵当権者が差押えの登記をした場合において,当該保全請求権についての勝訴判決を得たことから,判決による所有権移転登記をする場合において,仮処分による失効を原因として,当該差押えの登記を仮処分債権者は単独で抹消することができるか。



答えは,『できない。』です。






上記の仮登記の利害関係人の事例と,仮処分による失効の事例は似ているものとして,知識が混同してしまう方もいるのではないでしょうか。



両者の結論は,当然のことですので,疑問にすら思ったことや,混同したことがないという人もいると思いますが,不動産登記法にまだ慣れていない方は,迷ってしまうことが多いのではと思います。



仮登記の事例については,登記記録上,仮登記に優先する抵当権者であったとしても,仮登記の本登記において,仮登記の後の差し押さえの登記は,職権で抹消されます。



仮処分による失効の事例においては,登記記録上の話ではなく,そもそも,仮処分の登記に抵触する登記が,単独抹消の要件であるので,実体上,仮処分の前に抵当権を有していた者の差し押さえによるのであれば,この差し押さえ登記が,仮処分の登記の後にされていたとしても,仮処分に抵触する登記とはなりません。よって,単独で抹消できるものではないということになります。





《記述攻略メモ》

□ 乙区1番で抵当権設定の登記がされた後,所有権移転の仮登記がされ,その後,1番抵当権者が差押えの登記をした場合において,当該仮登記の本登記をするときは,仮登記前にされた抵当権者である差押債権者は利害関係人とならない。



□ 乙区1番で抵当権設定の登記がされた後,所有権移転登記請求権を保全債権とする仮処分の登記がされ,その後,1番抵当権者が差押えの登記をした場合において,当該保全請求権についての勝訴判決を得たことから,判決による所有権移転登記をする場合において,仮処分による失効を原因として,当該差押えの登記を仮処分債権者は単独で抹消することができない。