≪不登法【総論】添付情報:登記原因証明情報②≫

登記原因証明情報が不登法の記述式で問われる形式としては,《Ⅰ》登記原因証明情報の提供を要しない場合,《Ⅱ》登記原因証明情報が法令等で特定されている場合(報告形式の登記原因証明情報ではダメな場合)の二つを押さえておく点については,前回,書いた通りです。

では,《Ⅰ》についてみていきます。

《Ⅰ.登記原因証明情報の提供を要しない登記》

① 敷地権付き区分建物以外の所有権保存の登記

② 処分禁止の登記に後れる登記の抹消・更正の登記

③ 混同を原因とする登記の抹消(不要とする見解は登記研究690P.211 必要とする見解もある)

この①から③を提供を要しない理由ごとにみると,①は,保存であるから登記原因つまり法律王位等がないからであり,②は,登記原因となるものが法律行為等ではないあるいは登記原因が明らかという点にあり,③については,実務上便宜的(不要説は,登記記録上明らかな場合に要しないとしています。)に要しないとされている点です。

ここで注意してほしいのは,②です。

処分禁止の登記に後れる登記の抹消・更正の登記においては,登記原因証明情報が不要という点です。

当該登記の単独抹消(更正)においては,後れる登記名義人へ通知したことを証する書面として,内容証明郵便(※通知から1週間以内に申請するときは内容証明郵便と配達証明書)が必須の添付情報となっている点との関係性を見てみます。

不登令の別表7172の添付情報欄において,民事保全法591項に規定する通知をしたことを証する書面と規定されていますが,これは,登記原因証明情報の内容を示しているのではありません。

1回目のところで書いたように,『登記原因証明情報とは,登記をすることとなる原因となった事実又は法律行為があったことを証するもの』です。では,上記民保法の通知は何のための通でしょうか。それは,単独申請するために必要な通知であって,権利を消滅させるための通知ではないのです。つまり,上記民保法の通知によって,権利が消滅するのではなく,処分禁止の効果によって当然に消滅するのです。だからこそ,この登記の原因は「仮処分による失効」又は「仮処分による一部失効」となるのです。

このように上記民保法の通知は,仮処分債権者が単独で申請するための通知にすぎないということになりますので,登記原因を証明するものではないのです。そして,これは私見ですが,仮処分による失効を原因とする登記について,その登記原因は,登記記録上に仮処分の登記があり,仮処分に抵触する登記の抹消(これと同時に申請する判決の登記)が申請されたことで仮処分により失効したことが明らかですから,登記原因証明情報は不要となっていると思います。

なお,仮処分による失効を原因として,共同申請により登記の抹消をすることもできます。

また,仮処分による失効の登記における添付情報については,内容証明郵便でなければならない根拠は,平成2.11.83.5000号です。そして,通知から1週間以内に仮処分による失効の登記をする場合に配達証明書も必要な点の根拠についても同先例です。

1週間内の申請において配達証明書が必要なのは,民保法592項の適用があるからです。つまり,登記記録上の住所に宛てて通知すれば,1週間経過したときに到達したものとみなされるので,内容証明郵便を添付すれば,民事保全法592項の適用を受け,到達したことまで証明する必要はなくなるということです。

ちなみに,登記記録上の住所以外に通知した場合には,内容証明郵便・配達証明書のほかに,登記記録上の住所から通知した住所に変更したことを証する書面が必要とされています。この変更証書は,公的な書面(住民票の写し等)である必要があるでしょう。

≪仮処分の執行による登記の添付情報のポイント≫

□ 仮処分による失効の登記においては,登記原因証明情報は不要。『通知証明情報(内容証明郵便)』と書けばよいでしょう。

□ 通知が到達した日が記述の問題では書いてある場合がありますが,期間の計算日は,発した日からですから,この日から登記申請日が1週間以内であれば,『通知証明情報(内容証明郵便,配達証明書)』と書けばよいでしょう。

□ 発した日の記載がない場合は,『通知証明情報(内容証明郵便,配達証明書)』と書いておくのが無難でしょう。

今回は,ここまでにします。

次回は,《Ⅱ》についてみていきます。(①及び③についても見ていきたいのですが,先に進まないので,詳細は後々とします。)