
閑谷学校 飲室門と石塀

論語 述而第七
【原文】
子謂顏淵曰用之則行舍之則藏唯我與爾有是夫
zǐwèiyányuānyuēyòngzhīzéxíngshèzhīzécángwéi wŏyŭĕryŏushìfū
子路曰子行三軍則誰與子曰暴虎馮河死而無悔者
zǐlùyuē zǐxíngsānjūnzéshéiyŭzǐyuēbàohŭfénghésǐérwúhuǐzhĕ
吾不與也必也臨事而懼好謀而成者也。
wúbùyŭyĕbìyĕlínshìér jùhǎomóuér chéngzhĕyĕ
【読み下し文】
子、顔淵に謂いて曰く、之を用うれば則ち行い、之を舎つれば
則ち蔵る。唯我と爾とのみ是れ有るかな。子路曰く、子、三軍を
行らば、則ち誰と与にせん。子曰く、暴虎馮河し、死して悔い無
き者は、吾与にせざるなり。必ずや事に臨みて懼れ、謀を好みて
成さん者なり。
【語句意味】
顔淵 ・・・孔子の第一の弟子、顔回。
用 ・・・登用する。
行 ・・・行う。
舎・・・捨てる
蔵 ・・・隠れる
爾 ・・・なんじ
夫 ・・・文の終わりに用い「かな」とよむ。
子路・・・ 孔子の門人。
三軍 ・・・封建時代の軍隊の総称
暴虎 ・・・ あばれる虎を素手で打つこと。
馮河 ・・・ 黄河を歩いて渡る。無謀で、命知らずな行動にたとえる。
懼・・・おそれつつしむ。慎重の意。
好謀 ・・・ 計画を練る。
【東郭解譯】
孔子と顔淵との会話で、孔子が自分が用いられた場合は、(その道を信念を持って)行う、
用いられない場合は、それはそれで泰然として暮らす。こういうけじめが出来るのは、
私と汝(顔淵)くらいのものじゃ!一緒にいた弟子の子路が孔子先生が三軍を率いて
戦うとなれば、誰を連れて行きたいと思いますか?すると、孔子は暴虎馮河し、死んでも
悔いないような人とは与しないと云いました。暴虎馮河と云う諺は、猛獣の虎と素手で
戦ったり、黄河を徒歩で渡ろうとしたりする血気にはやって命知らずな無謀なことをする
意味です。孔子先生は、続けて事に臨みて懼れてと云っていますが、戦を怖がるという
のではなく、命も失うことになりかねない戦そのものを大事に扱って対応する心構えで
す。そして、勝利(成功)に繋がる充分な戦略を構築して絶対負けない自信を持って
いるような人と一緒に行動したいと云ったのです。後の劉備玄徳の参謀諸葛亮孔明の
逸話など思い出します。
ところで、暴虎馮河は日本人が割と好きな気質だというか起こしやすいので注意しな
ければなりません。太平洋戦争で末期、民衆婦人などに竹槍で応戦訓練をしたり、
福島第一原発の放射能漏れに対して、ヘリコプターで空から冷却水を撒こうとしたり
することもありました。これなどは、勿論、指示する人の考えが暴虎馮河であり、
命令された人は、これほど迷惑なことはないと思います。
《2016.3.15 周南市 東郭》