高杉晋作の獄中手記 #029 | 周南市 東郭の世界

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獄中手記
 
 
元治元年五月八日 讀書
 
 
因中作
 
 
夜來小雨來朝霽      夜來の小雨、朝霽(は)れて来たり
屋後屋前鳴雀喧   屋後屋前、雀喧(かまびす)しく鳴く
遙思家翁携竹杖   遙かに思う、家翁 竹杖を携え
應呼阿妹歩田園      阿妹(あまい)応呼し田園を歩くを
 
聞近日家翁以鋤後圃爲樂因轉結及之
 
 
【語句解説】
 
夜來(やらい)=昨夜よりの~
 
霽(はれ)る=靄・霧などが消えてなくなる
 
家翁(かおう)=自分の父親
 
阿妹(あまい)=親しい妹(晋作には三人の妹が居た)
 
 
【東郭解譯】
 
野山獄の晋作さんが獄窓より屋外を眺めて、昨夜からの小雨が
 
霽れて、家屋の前や後ろで雀がかまびすしく鳴いている。
 
はるかに思うと、お父さんは竹の杖を携え、妹はその前の
 
田んぼの(畦)道を互いの名前を呼び合い、はしゃぎながら
 
歩いている。晋作さんは、そんな一瞬の情景が浮かんできました。
 
 
 
 
 
衆謗群譏集一身      衆謗群譏(しゅうぼうぐんき)一身に集まり
誠心只欲訴明神   誠心ただ明神に訴えんと欲す
謗吾人智不如我   謗(そし)り吾人智我に如かず
譏聖田夫稱問津     譏りは聖田夫称えて津に問うべし
天下已承契丹恥      天下は已に契丹の恥じと承る
豈無名敬塘起    豈(あに)敬塘 の起すを無名なりや
感憤思古又傷今   感憤古(いにしえ)を思い又今を傷む
抛書危坐對書机     書を抛り坐を危うして書机に対す
 
 
【語句解説】
 
衆謗群譏(しゅうぼうぐんき)=謗も譏も謗りの意味
 
聖田夫=聖人と田夫(いなかもの)、世の人々
 
契丹(きったん)=ここでは、外国人の意味
 
敬塘=地名?
 
 
【東郭解譯】
 
晋作さんは、机に座って書を読んでいましたが、何故か 憤慨に堪え
 
きれなくなって書を抛り、坐を危うくしたと詠んでいます。
 
衆謗群譏は、まわりからそしられ或いは攘夷派からも狙われる始末
 
私の至誠は天に通ずなのに、このような目に逢うのは、人間の智慧
 
を越えた仕業なのであろうか?世の人々は、もっと世界情勢を見て
 
判断して欲しい。日米修好通商条約の不平等条約は恥と知らなけれ
 
ばならない。どうして敬塘を起こしたことを知らないのだろうか?
 
古の故事を思い、今の世の流れを見ると心が傷むばかりである。
 
強引な解釈で、故事や古名の確認が取れませんでした。誤謬が
 
あれば、教えて下さい。
 
               《2015.9.10 周南市 東郭》
 
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               円政寺