獄中手記
元治元年五月七日 讀書六十葉
因中作
自作繋囚心更雄 繋囚と作(な)ってより心更に雄なり
榮枯不敢與人同 栄枯敢えて人と同じからず
誰言樂裡還生苦 誰か言う楽裡に還(また)苦を生ずと
知是眞娯在苦中 是れ真の娯しみは苦中に在るを知る
轉結改作、初知極樂無量界、却在辛途苦海中、如何
【東郭解譯】
獄に繋がれてから私の心は、さらに男らしく力強くなった。
栄枯盛衰というものは、人によって同じではないのだ。
誰かが言ったが、樂のなかにも、また苦しみが生じてくる。
(この道理の)真の楽しみは苦しみのなかにあるのだ。
晋作さんは、獄のなかで”楽あれば苦あり、苦あれば楽あり”で
なく、”初知極樂無量界、却在辛途苦海中” 無量界の極楽は却って
苦海の中の辛苦に在ることを初めて知ったと詠んでいます。
仏教で言う「苦楽表裏」を初めて体験したということでしょうか。
