1月9日午後2時5分頃、三菱マテリアル四日市工場で爆発事故が発生しました。
この爆発により、従業員5人が死亡し1人が重傷、11人が軽傷を負ったということです。
爆発したのは、多結晶シリコンを製造する第一プラント内で、熱交換器の解体作業中に
蓋を取り外した直後に爆発したそうです。
作業は、20人余りで行っていたようですが、そのうちの17名が死亡或いは負傷というのは
爆発の凄まじさを物語っています。
一瞬のうちに、このような多くの犠牲者が出たというのは、本当に痛ましい限りです。
猿渡暢也工場長は、記者団の質問に対し陳謝し、率直に答えていますが不思議なことに、
“なぜこのような事故が起こったかわからない” と繰り返しています。
もし、そうだとしたら作業員は、何も知らされていないで死んだことになります。
これでは、あまりにも可哀そうです。
東電福島第一原発の爆発事故がありましたが、殆どは“想定外”という一語で片付けられました。
工場長も知らない、従業員も知らないで爆発が起きるとすれば、製造やメンテをするのに
なんの価値もないという話です。
本日10日9時半から、警察による検証現場がおこなわれましたが、爆発に至った原因が
明らかになるように祈っています。
多結晶シリコンは、半導体基板の原料です。いうまでもなく、現在の花形 携帯電話類、
パソコンなどあらゆるコンピューターに使われており、需要も大変多いものであります。
この多結晶シリコンは、シリコンと塩素を反応させてトリクロロシランから造り出します。
これを、蒸留を繰り返して不純物を取り除く作業をし、更に水素で加水分解させて固形の
多結晶シリコンを造るそうです。
爆発の起こった工程は、この蒸留工程をリサイクルさせるのに取り付けられた熱交換器です。
熱交換器は、長さ4m、直径90cm、重さ4.8tで水冷式で一般的なものゝようですが、
中に293本/34mmのチューブが入っています。
このチューブに反応しきれないHSiCl3を通過させて冷却します。ところがこの工程で、
チューブ内壁は冷やされてどうしてもポリマーが付着するのです。
人間でいえば、血管にコレステロールが付着するようなものです。
これが、熱交換機の効率を落とし、又、詰まってしまうので今回の分解洗浄など定期的に
行う作業は、不可欠なものとなります。
ところが、この付着したポリマーHSiCl3は、非常な危険な物質で気化して酸素と混じると
爆発に危険性があるという代物です。ですから、この熱交の分解洗浄作業は、しっかり
手順を踏まえマニュアルを作って安全を確認しながら確実におこなう必要があります。
猿渡工場長は最初の記者会見の時には、恐らく、この点の確認が未だ取れていなくて
“わからない” などと答えたと思うのですが、熱交内チューブの洗浄マニュアルについての
制定、改定、実際の作業との整合性、その確認などに落ち度がなかったか検証する必要が
あります。
こんな事を書くのも2012年2月、四日市工場の排水設備で、機器の洗浄作業中に水素が発生、排水溝のふたが飛ぶ爆発事故があったという話があるからです。
そのとき、作業改善をしたはずなのに、なぜ 再び起きるのでしょうか?
猿渡工場長も判らないのであれば、私などにはとても判りません。
普通の工場であれば、このような機器には予備機を設置したりして、運転に支障なく
メンテナンスを行えるようにしています。
そして、三菱マテリアルの多結晶シリコン生産能力は年2800tonであり、国内ではトクヤマ、大阪チタニウムテクノロジーズなどと有数なメーカーであります。
競争の激しいこの業界では、機器のメンテの期間も節約しても生産しなければならない状況
にあります。
まさか手抜きはないでしょうが、そういう切迫した状態にあったのかも知れません。
でも、それが従業員ら計17名の死傷者を出したことに繋がるとしたら、まさに本末転倒です。
勿論、工場は運転出来ませんから生産は皆無になります。
どうか、工場首脳の方々に於かれましては、内部にそんな空気があったかもしれないと
反省して戴いて、事故だけは繰り返して欲しくありません。
そうでなければ、亡くなられた人が浮かばれないと思います。
最後に、改めて亡くなられた方々には、心よりお悔やみ申し上げます。
《 2014.1.10 周南市 東郭》
