表演一部始終 | 周南市 東郭の世界

周南市 東郭の世界

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12月23日午後山東大学国際教育学園で表演が開かれた。
 
歌舞・話劇・小品など18種目がホールで演じられた。
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それぞれのクラスが練習してきた作品を発表する。
 
ひとクラス15人位であるから、18組の出演で270名+先生方で300名くらいである。
 
一種目15分程度を予定されているが、ひとが多くて出這入りもままならない。
 
勢い遅れも出てくれが、そんなことはおかまいなし。
 
私たちの演目は「東郭先生と狼」という寓話である。
 
中国高級小学語課本に載せられている寓話のひとつで中国の人達は小学生で
 
これを学ぶ。
 
内容は、兵卒に追われている狼が動物を喰う事を偽って「私は善良な狼です。」と言う。東郭先生はそれを
 
聞いてまわりの注意を聞かず、自分の教科書袋へ入れてかくまってやる。
 
兵卒に「狼は?」と尋ねられて東郭先生はここにはいない、別なところを探せといって去らせる。
 
狼を助けた東郭先生に狼は「本来私は肉を食べる、お前たちはご馳走だ」と言って食べようとすると
 
農民が出てきて「おまえは何をしている!」というと狼は「私は善良な狼で今もこの袋に入って助けられた」
 
農民は「ではもう一度はいってみろ」といって狼を入らせて叩き殺してしまう。劇では最後におおかみが
 
どうして私はこうなんだろうと嘆く。主役の東郭先生も「私は今後二度と狼は助けんゾ」といって終幕。
 
狼が悪いことをする寓話は世界にたくさんある、中国では狐も悪役だそうだ。
 
善良な東郭先生と悪役の狼の宿命を教えているのか?狼少年の話がわかりやすい。
 
中国では小学生にどのようにおしえているのか興味がある。
 
 12月初めだったか、口语の先生からの話で、クリスマス時期に表演が開催されるので私たちのクラスで
 
演題や配役を決めないといけないんでとクラスで言われてDVDで4種類の劇の候補がだされた。
 
その中から、クラス人数や班構成から「東郭先生と狼」に決まった、この劇は過去も演じられているようで
 
問題は、配役とセリフである。
 
数日して、先生は台本をもってきた。
 
 主役の東郭先生役にはわたしの名前が書いてあった。おと狼夫婦や私の子供、うま、うし、兵卒、
 
桃の木、村の子供役、農民など全員に配役があてられていた。
 
私は、老人だから配役も適当と先生はおもったのか、激励された。
 
先生も心配はあったのだろう。セリフ読みのとき発音がわるいので、中国人女学生を本科から呼んで
 
週に3回矯正させられた。
 
はじめ教科書読みであったセルフも人の言葉で言えるようになった。その協力者の言うセリフを
 
録音させて貰って練習した。
 
他のメンバーは声の大小の違いはあるが、発音に関してはみんな上手で問題ないようである。
 
表演の練習は週に一回、やった。劇であるから会話のタイミングや場所取り、バックミュージックも
 
若い人が持ち寄った、開始時のクリスマスの曲や兵卒の出てくるときの銃の音、花畑で遊ぶ子供の
 
はしゃぐ時の可愛い幼児曲など場面にあわせて先生と打ち合わせが続いた。
 
当日の衣装は、東郭先生とその子供だけしかないので、各自でお面など手製でつくった。
 
わたしの東郭先生は、杖と大きな袋が必要で先生が用意できるかと言うので、安請け合いで
 
「出来る」と言ったが狼がほんとに入る袋をどう用意したらいいか、布も張り糸もない。
 
同級生も自分の小道具を用意するので忙しい。いろいろ思っていたが学園のそとの按摩へ
 
行くとき、個人経営の店がへしあっているスーパーへ寄ってみた。
 
あるところで、布団に掛けるカバーやシーツを取り扱っているところがあり、客が女主人といろいろ
 
はなしている、私はシーツを袋にしたらと思ってシーツをくれと言った。
 
女主人はいろいろな柄物シーツを出してきてどれがいいかという。私は、持ちかえって縫えばいいと
 
思い、女主人にこういう事情で大きな袋が欲しいと言うと女主人は作ってあげようという。
 
見れば、店の真ん中にミシンが置いてある。話の趣旨を理解した女主人は、一緒にあれこれ柄を
 
選んでくれていたが、私が「白いのがいい」と言うと白いのは高くなるからやめときなさいという。
 
女主人は、10分も待たせず狼が入るくらいの本袋を作ってくれた。しかも閉じる為の紐まで付いている。
 
私は、大いに感謝して「有難う」といった、中国のここでは修理することは当たり前のことらしく
 
靴でもズボンでも錠前でも時計でも自転車でもなんでも直してくれる。
 
 次は、大きな杖を作らなくてはならない。宿舎付近は今、改修中で道路も工事中なので
 
いろいろ物色していると、プラタナスの剪定した端切れがあったので持って帰ってエントランスホールで
 
改修仕事しているひとに鋸を貸してくれをいって適当な長さに切って立派な杖を作った。
 
前の日、最後の練習をクラス仲間が集まって行い、音楽担当の先生も調整に余念がない。
 
このクラス仲間は、本当にありがたい私の発音の悪いところを指摘してくれる。
 
私は、書袋の中にいれるミカンを4斤とお菓子を買いこんで、狼に「助けてやるからこの中に入れ!」
 
と言うとき、袋からこれらを出して観客に配るアイデアが生まれたので先生らに相談した。
 
みんな賛成で先生は伝票をまわせといったが、私は「大丈夫です」と、断った。
 
次の小道具は、「万頭」だ。学生食堂に行って大きな万頭を仕入れた。
 
狼を袋から出して助けてやった時、狼が「腹が減った」という、「私はここに万頭を持っているからお前にやろう」
 
というセリフのとき使う為だ。
 
このときはじめて私と子供役の中国式衣装を試着した。
 
 いよいよ演劇が、始まる時間になった。私たちのクラスは3番目の出場となっている。
 
練習でかりていた3階の教室から一階のホールへ降りると、一杯の人である。それぞれ自分たちの演目の
 
衣装やメークをしている。会場へは入り口が一つしかないので、演劇が終わって出る人と入る人又次の
 
演目の人達でごった返し、先生も次第に興奮してきてヒステリックに声高に人の整理をしている。
 
口语の先生が入り口前に東郭先生を筆頭に並べさせる。
 
いよいよ出番になって前の組の出てくるのをかき分けて中に入ると会場は満杯である。
 
ナレーター役の同級生が「東郭先生と狼」の解説や場面をいい私と子供役とうま役は舞台にあがった。
 
私が「これから授業にいくのでおまえは家で待っていなさい!」という最初の場面である。
 
この場面は、無事に終わった。
 
次は、狼親子の場面でわたし達3人は舞台裾でみている。
 
次に、再び3人で舞台を歩きだす。・・・突然 狼が出てきて私たちを驚かすが、狼は私は善良な狼だから
 
といいながら、今兵卒に追われている、かくまってくれと言うので私が担いでいた本を入れた袋をだす場面であ
 
る。
 
あらかじめ、用意した小ミカンや菓子を一気にだして、観客にふるまった。子供役もうま役も前の観客に
 
ほおったり、渡してきたり大忙し。前の観客もミカンや菓子の取り合いになり、大声でこちらへ投げろと
 
言う人もいた。
 
会場が落ち着いたとき、わたしが狼にむかって「さあ、この中に入っていろ!」と言う場面である。
 
兵卒が狼をおってきて「狼は見なかったか?」と尋ねる。わたしは別のところを探せと言ったあと
 
狼を袋から出してやる。以後“気をつけろ”“万頭をやろう”まではセリフも順調であった。
 
ロシアの女狼は、「はっはは・・」と笑い「おまえたちが肉だ、狼は本来肉を食べるものなんだ!」
 
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 と言って私たちに襲いかかってきた。圧倒的な迫力である!私たちは逃げまどう。ロシアの女狼は、
 
演技達者で声は大きいしその形相のすさまじいこと!!
 
途端に私はセリフを忘れてしまった。女狼の顔を見ていると、どうしてもセリフが出てこない!!
 
焦りに焦って仕方がないので会場に向かって日本語で「忘れた!」と大声で叫んだ。
 
会場の観客は、一瞬「ポカーン」としていた。私も気付いて今度は中国語でセリフを「わすれた!!」
 
と再びおおきく叫んだ。その途端、観客は大いに湧き拍手と笑いの渦に包まれた。
 
会場は大笑いである。自分たちも身に覚えがあるのだろうか。会場がなごやかになった感じがした。
 
ロシアの女狼は、私に私のセリフを小声で教えてくれた。
 
会場が湧いて、私は落ち着きを取り戻し、再びセリフが出るようになった。
 
最後に東郭先生が「あ~、私は今後一切狼は助けんぞ~」と言って嘆く場面である。
 
これは自分でも間合いや中国語の発音もうまくやれた。
 
最後のセリフを言い終わった後、会場から大きな拍手が寄せられた。
 
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みなさん大変お世話りなりました。良いクリスマスをお迎えください。