資料館の2階には壁面一杯、たくさんの絵馬が掛けられています。
東京都台東区上野公園にある、不忍池(しのばずのいけ)辯天堂(べんてんどう)です。


江戸初期の寛永年間に、天台宗東叡山寛永寺の開山、慈眼大師天海僧正(1536~1643)によって建立されました。
天海大僧正は、「見立て」という思想によって上野の山を設計していきました。これは、寛永寺というお寺を新しく創るにあたり、さまざまなお堂を京都周辺にある神社仏閣に見立てたことを意味します。 例えば「寛永寺」というお寺の名称は、「寛永」年間に創建されたことからついたのですが、これは「延暦」年間に創建された天台宗総本山の「延暦寺」というお寺を見立てたものです。
こうして天然の池であった不忍池を琵琶湖に見立て、また元々あった聖天(しょうてん)が祀られた小さな島を竹生島に見立て、さらに水谷伊勢守(みずのやいせのかみ)勝隆(かつたか)公と相談して島を大きく造成することで竹生島の「宝厳寺(ほうごんじ)」に見立てたお堂を建立したのです。
琵琶湖と竹生島に見立てられたお堂であったため、当初はお堂に参詣するにも船を使用していたのですが、参詣者が増えるにともない江戸時代に橋がかけられました。
『東都名所』上野山王山・清水観音堂花見・不忍之池全図 中島弁財天社/広重
『江戸名所図会』中島辨財天社
辯天堂にお祀りされているご本尊は「辯才天」です。音楽と芸能の守り神として広く信仰され、また「辯財天」とも書くことから、金運上昇といったご利益があります。琵琶を持ったお姿で知られていますが、辯天堂の辯天さまは八本の腕があり、手に手に煩悩を破壊する道具を意味する武器をお持ちになっている「八臂辯才天(はっぴべんざいてん)」です。
ご開帳は年に1日、9月に行われる「巳成金(みなるかね)大祭」の日です。
絵馬は、八臂辯才天が描かれた心願成就絵馬です。




