資料館の2階には壁面一杯、たくさんの絵馬が掛けられています。

 

 静岡県静岡市清水区三保にある、駿河国三之宮 御穂神社(みほじんじゃ)です。


 創建は不詳。『駿河雑志』では、日本武尊が勅により官幣を奉じ社領を寄進したとも、出雲国の御穂埼(現・島根県松江市美保関町)から遷座した神であるとも伝えているが定かではありません。

 

 三保の松原には「羽衣の松」があり、羽衣の松から御穂神社社頭までは松並木が続き、この並木道は羽衣の松を依代として降臨した神が御穂神社に至るための道とされ「神の道」と称されています。

 

 絵馬は、天女が描かれた織絵馬です。

羽衣の松
神の道

 (羽衣伝説です)

 三保の村に伯梁という漁師が住んでおりました。ある日のこと、伯梁が浜に出かけ、浦の景色を眺めておりました。

 ふと見れば、一本の松の枝に見たこともない美しい衣がかかっています。しかし、あたりに人影はありません。誰かの忘れ物だろうと、伯梁が衣を持ち帰ろうとしたそのとき、どこからともなく天女があらわれてこう言いました。

 『それは天人の羽衣。どうそお返しください』ところが、それを聞いて伯梁はますます大喜び。『これは国の宝にしよう』とますます返す気配を見せません。

 すると天女は『それがないと私は天に帰ることができないのです』とそう言ってしおしおと泣き始めます。さすがに伯梁も天女を哀れに思い、こう言いました。

 『では、天上の舞いを見せてくださるのならば、この衣はお返ししましょう』。

 天女は喜んで三保の浦の春景色の中、霓裳羽衣の曲を奏し、返してもらった羽衣を身にまとって、月世界の舞いを披露しました。

 そして、ひとしきりの舞いのあと、天女は空高く、やがて天にのぼっていったといいます。

 なお、このときの羽衣の切れ端といわれるものが、近くの御穂神社(みほじんじゃ)に保存されています。